『蜘蛛巣城』(黒澤明監督) | 新・法水堂

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『蜘蛛巣城』

 

 
1957年日本映画 110分
脚本・監督・製作:黒澤明
脚本:小国英雄、橋本忍、菊島隆三 
製作:本木荘二郎 
撮影:中井朝一 美術:村木与四郎
録音:矢野口文雄 照明:岸田九一郎
美術監修:江崎孝坪
音楽:佐藤勝 監督助手:野長瀬三摩地
特殊技術:東宝技術部 製作担当者:根津博
 
出演:
三船敏郎(鷲津武時)
山田五十鈴(妻・浅茅)
志村喬(軍師・小田倉則保)
久保明(義明の息子・三木義照)
太刀川洋一(国春の息子・都築国丸)
千秋実(三木義明)
佐々木孝丸(城主・都築国春)
清水元(鷲津の郎党(刺客))
高堂国典(部将)
上田吉二郎(鷲津の雑兵)
三好栄子(城の老女)
浪花千栄子(物の怪の老女)
富田仲次郎(部将)、藤木悠(鷲津の郎党)、堺左千夫(同)、大友伸(同)、土屋嘉男(同)、稲葉義男(部将)、笈川武夫(三木の郎党)、谷晃(鷲津の雑兵)、沢村いき雄(同)、佐田豊(鷲津の郎党)、恩田清二郎(三木の郎党)、高木新平(部将)、増田正雄(同)、浅野光男(鷲津の郎党)、井上昭文(都築の使武者)、小池朝雄(同・第二の使武者)、加藤武(都築警護の武士一)、高木均(都築警護の武士二)、樋口廸也(都築警護の武士三)、大村千吉(鷲津の雑兵)、桜井巨郎(都築の第三の使武者)、土屋詩朗(部将)、松下猛夫(同)、大友純(同)、坪野鎌之(都築の第四の使武者)、大橋史典(先ぶれの武者) 
特別出演:
木村功 (幻の武者一)
宮口精二(幻の武者二)
中村伸郎(幻の武者三)
 
STORY
戦国時代、難攻不落を誇る蜘蛛巣城の城内では城主都築国春を中に軍師小田倉則保ら諸将が北の館藤巻の謀叛に遭い籠城の覚悟を決めていた。その時、使者が駆込み、一の砦の鷲津武時と二の砦の三木義明が敵を破ったと報じた。主家の危急を救った武時と義明は主君に召され蜘蛛巣城に帰るべく城の前にある蜘蛛手の森に入った。ところが道に迷い雷鳴の中を森を抜け出そうと進むうち二人は一軒の小屋を見つけた。小屋の中から老婆が現れた。驚く二人に老婆は「武時は北の館の主に、やがて蜘蛛巣城の城主になり、義明は一の砦の大将に、また義明の子はやがて蜘蛛巣城の城主になる」と不思議な予言をした。その夜、武時は北の館の主に、義明は一の砦の大将に任ぜられた。武時の妻浅茅は冷い女。義明が森の予言を国春に洩らしたら一大事と、夫に国春を殺し城主になれと唆かす。悪魔のような囁きに武時は動揺するが、遂に国春を刺し蜘蛛巣城の城主となる。子のない武時は、予言に従いやがて義明の子義照を世継ぎにしようと考えた。ところが栄華の欲望にとりつかれた浅茅に反対され更に彼女が懐妊を告げて再び唆かすと武時は義明を討った。主君と親友を殺した武時は良心の呵責に半狂乱となり城中にも不安が漲った。大嵐の夜、浅茅は死産し重態に陥った。と、その時、一の砦から使者が来て、武時の手を逃れた国春の一子国丸を奉じて小田倉則保と義明の子義照が大将となって城に押寄せたと告げた。凶報相次ぐ蜘蛛巣城内の部将たちは戦意も喪失したが武時は、ふと森の老婆を思い出し武運を占わせようと蜘蛛手の森に駈け入った。老婆が現われ、「蜘蛛手の森が動き城へ押寄せぬ限り武時は敗れぬ」と再び予言した。狂喜した武時は城に帰った。が将兵は依然不安に戦き浅茅は遂に発狂した。時も時、城内に叫びが起った。蜘蛛手の森が城に押寄せたというのだ。軍兵たちは武時に裏切者の声を浴びせ、恐怖のうち矢を射られ城から転落した。蜘蛛巣城に朝日が輝いた。動く森と見えたのは全軍木の枝で擬装した則保の軍勢であった。【「KINENOTE」より】

今月、KAAT神奈川芸術劇場プロデュースによる舞台版が上演される黒澤明監督の代表作の一つ。

 

シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』を能の要素を取り入れて翻案した本作、改めて観ると実に隙のない作品だなと感じる。110分という上映時間も功を奏したのか、一切ダレ場がなかった。

 

三船敏郎さんはいつもの野性味を放ちながら非業の最期へと突き進む主人公を熱演していたが(くだんの矢を放たれるシーンは演技どころじゃなかったかも知れないが)、それよりもあらゆるものを超越したかのような山田五十鈴さんの存在感に圧倒されてしまった。有名な血に染まった手を洗うシーンの鬼気迫る表情たるや。