ぱぷりか『どっか行け!クソたいぎい我が人生』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ぱぷりか 第6回公演

『どっか行け!クソたいぎい我が人生』

 

 

2022年11月24日(木)~12月6日(火)

こまばアゴラ劇場

 

作・演出:福名理穂

舞台美術:泉真

音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)
音響操作:たなかさき(Sugar Sound)

照明:山内祐太 舞台監督:岩谷ちなつ

演出助手:坂本奈央(終のすみか)

記録映像:高畑陸(ニュービデオシステム)

記録写真:堀山俊紀
イラスト:三好愛 宣伝美術:中北隆介

当日運営:大橋さつき(猫のホテル)
制作:込江芳、半澤裕彦


出演:
占部房子(赤木かすみ)

岡本唯[ぱぷりか/時々自動](かすみの娘・赤木初衣)
富川一人[はえぎわ](かすみの弟・宮本将太朗)
林ちゑ[青年団](将太朗の妻・宮本紗々子)
阿久津京介[DULL-COLORED POP](かすみの職場の後輩・柴田大志)
 

STORY

広島にある小さな町。赤木かすみは大学生の娘・初衣(うい)と二人暮らしだが、夫に捨てられて以降、スピリチュアルなものに傾倒していた。かすみの44歳の誕生日に町で殺人事件が起きる。容疑者として逮捕された女性はかすみの同級生で、その女性の弟はかすみの弟・将太朗の友人だった。後日、かすみは職場の後輩・柴田にブレスレットをあげるため、家に連れてくる。かすみや将太朗の妻・紗々子にもブレスレットをプレゼントして上機嫌なかすみだったが、将太朗が運転していた車が帰りに事故に巻き込まれ、紗々子が入院することになる。かすみは初衣から誕生日にもらったピアスをつけていた日に不幸なことが起こると思い込み、ピアスをゴミ箱に捨ててしまう。家を飛び出した初衣は、写真家志望の柴田の誘いを受けて東京に遊びに出かける。


『柔らかく搖れる』で岸田國士戯曲賞を受賞した福名理穂さんの受賞後初の長篇作品。


舞台は赤木家のリビング。下手側に建物の外壁が見え、ベランダには室外機。下手手前は風呂場に通じ、その隣に玄関へと通じるスライドドア。奥の壁にもスライドドアがあり、奥の部屋へと続く。リビングの下手側にはテーブルと椅子、上手側にソファや棚。

上手手前のスペースは、かすみの職場の休憩室やかすみ及び将太朗が運転する車内として使用。


本作も全篇広島弁。

そのユニークなタイトルが目を引くが、この「我が人生」の「我が」とはかすみであり、初衣でもあるのであろう。

かすみは夫に捨てられて以降、いかにして不幸を避けるかに血道を上げてきたように見える。占部房子さんが演じていることもあって、もっとエキセントリックな人物なのかと思っていたけど(朝ドラ『ほんまもん』の影響。笑)、完全に周囲から浮いてしまうわけでもなく、背の高い男性に棚の上の物を取ってもらってはしゃいだりするような一面も持ち合わせてはいる。それでも、彼女にとっては様々なことに心を砕かなければならないこの世の中は「クソたいぎい」ものなのであろう。

娘の初衣にとってはそんな母親こそ「クソたいぎい」もので、ジュエリー関係の仕事に就きたいと思っている彼女は専門学校に行きたいが、母親に大学に行ったことが無駄になると反対され、なかなか踏ん切りがつかない。そんな中出会った柴田に刺激を受け、自分の夢に向けて一歩を踏み出そうと決意する初衣と、戸惑いつつも最終的にはそれを受け容れるかすみとの母娘のやりとりは温もりの感じられるものだった。


キャストはいずれもよかったが、ぱぷりかに加入した岡本唯さんは今後大いなる戦力となりそう。阿久津京介さんの飄飄とした雰囲気が柴田というキャラクターを立体的に見せていた。


上演時間1時間44分。