COCOON PRODUCTION 2022『ツダマンの世界』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

Bunkamura製作

COCOON PRODUCTION 2022

『ツダマンの世界』

the world of tsudaman
 

 
【東京公演】
2022年11月23日(水・祝)~12月18日(日)
Bunkamuraシアターコクーン
 
作・演出:松尾スズキ
音楽:松尾スズキ、城家菜々
美術:石原敬 照明:大島祐夫 音響:藤田赤目
衣裳:安野ともこ ヘアメイク:板垣実和
映像:上田大樹 所作指導:藤間貴雅
振付:振付稼業air:man 文芸部:河井克夫
演出助手:大堀光威、溝端理恵子
舞台監督:榎太郎
 
宣伝イラスト:松尾スズキ 宣伝美術:榎本太郎
宣伝写真:端裕人 宣伝衣裳:安野ともこ
宣伝ヘアメイク:山本絵里子、中野明海(吉田羊)
宣伝広報:る・ひまわり
 
出演:
阿部サダヲ(津田万治/霊能者/万治の父・津田先占斉)
吉田羊(万治の妻・津田数/万治の継母・オケイ ほか)
間宮祥太朗(弟子・長谷川葉蔵)
皆川猿時(幼馴染・大名狂児/軍曹/米軍将校)
江口のりこ(津田家女中・オシダホキ/オツヤ ほか)
村杉蝉之介(葉蔵の世話係・強張一三 ほか)
笠松はる(愛人・神林房枝 ほか)
見上愛(文学少女・兼持栄恵/少年時代の狂児・喬太郎/劇団員2/女郎・お滅 ほか)
町田水城(按摩・宵ノ市/吾妻少尉(鶴市)/大名の仲間 ほか)
井上尚(評論家・渡辺満貫/数の前夫・今関アキヨシ/劇団員1/米軍兵士1/座付作家・新堀儀太郎/大名の仲間 ほか)
青山祥子(万治の実母・オカメ/劇団員3/百姓女/巫女/芸者 ほか)
中井千聖(津田家女中・おたね/女給/巫女/芸者 ほか)
八木光太郎(侠客・直太/津田家下男・だいはち/劇団員3/車掌/米軍兵士2/番頭/大名の仲間 ほか)
橋本隆佑(侠客・極実/共産党ゲリラ/米軍兵士3/大名の仲間 ほか)
河井克夫(演出家・有坂奇獣/三味線弾き/大名の仲間 ほか)
 
STORY
小説家・津田万治家の女中・オシダホキや、縁ある人々からの視点で振り返る、津田万治=ツダマンの半生。それは昭和初期から戦後にかけての物語。生まれてすぐ母と離れ離れになり、義母に育てられた万治。十歳で父が他界すると、育ての母からいびられて何かと反省文を書かされたことが彼ののちの文章力につながっていく。万治の小説家人生はそこから始まった。地味に小説を書き続け、中年にさしかかった頃、ようやく新作が文壇最高峰の月田川賞の候補作に。それを機に、賞の選考委員でもある万治の幼なじみ、大名狂児が薦める戦争未亡人の数と結婚することとなる。だが万治には、劇団の女優にしてカフェで歌も歌う神林房枝という愛人がいた。また、数との結婚話が進む中、弟子になりたいとやってきたのが佐賀の豪商の三男坊、長谷川葉蔵で、彼のそばには常に世話係で番頭の強張一三の姿もある。やがて大名に続き、万治のもとにも徴用令状が。戦地へと向かうことで人間関係は微妙に変貌し始め、そこに葉蔵と関係を持とうとする謎の文学少女、兼持栄恵なども現れ、万治と数と葉蔵を取り巻く人間たちの愛憎関係は、さらに複雑に絡み合っていく……。【公式サイトより】

松尾スズキさん、2年ぶりの書き下ろし作品。
 
冒頭、ホキの依頼で霊能者により呼び出された神林、強張(つよばり)、大名(だいな)の3人の霊がそれぞれの立場、関係性から見たツダマンこと津田万治の話をしていくという趣向。
タイトルからしてツダマンが主人公の物語ではあるのだけど、あまり主人公らしくはない。存在感がないわけではないけど(そりゃ阿部サダヲさんだからね)、弟子の葉蔵の方がよっぽどアブナイ人物で、ちょっと狂気すら感じさせるところがあった。 
恐らく松尾さんはツダマンという人物よりも彼の生きた昭和という時代、それも神様がいきなり人間になってから数年後あたりまでの昭和を描きたかったのだと思う。特に戦時中、自分が従軍作家として、あるいは単なる一兵卒として戦争に参加しなくてはならなくなったらどう振る舞うか、ツダマンの姿にはどうしても松尾さん自身が重なって仕方がなかった。
 
キャストでは松尾スズキさんもメルマガで褒めていたけど、間宮祥太朗さんがとてもよかった。出演舞台を観るのは初めてだったけど、映像だけの人ではないことがよく分かった。
吉田羊さんは『ザ・ウェルキン』でも思ったけど、長ゼリでの見せ方がうまい。笠松はるさんの歌声も相変わらず素晴らしい。
三上愛さんや青山祥子さんの出演も楽しみだったけど、強い印象を残すまでには至らなかった。

上演時間3時間20分(一幕1時間23分、休憩20分、二幕1時間37分)。