オフィスコットーネプロデュース『加担者』 | 新・法水堂

新・法水堂

年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

オフィスコットーネプロデュース
『加担者』

Der Mitmacher


 

2022年8月26日(金)~9月5日(月)

駅前劇場

 

作:フリードリヒ・デュレンマット 翻訳:増本浩子
演出:稲葉賀恵(文学座)
プロデューサー:綿貫凜

美術:伊藤雅子 照明:阪口美和

音響:青木タクヘイ(ステージオフィス)

衣裳:石川俊一 舞台監督:安田美知子

演出助手:田丸一宏 ドラマトゥルク:前原拓也

演出部:野澤爽子 小道具製作:酒井ちはる

音響操作:中川綾乃(ステージオフィス)

衣裳助手:長谷川洋子 制作デスク:津吹由美子

制作:遠藤唯(ViStar) 制作協力:J-Stage Navi

映像収録:神之門隆広 宣伝写真:宮本雅通

宣伝美術:郡司龍彦 Web製作:木村友彦

著作権代理:シアターライツ

パンフレットデザイン:木村舞子

 

出演:
小須田康人(ドク)
外山誠二(ボス)
山本亨(警察幹部コップ)
月船さらら(ボスの愛人アン)
三津谷亮(ドクの息子ビル)
大原康裕[文学座](ビルの叔父ジャック)
内田健介(部下ジム)
伊藤公一(部下サム)
喜田裕也(警官アル)
 

STORY
大学で生物学の研究をしていたドクは、高額報酬を提示され民間企業に移籍する。しばらくは豪勢な生活を謳歌していたが、経済危機により失業。とりあえずタクシー運転手で身をたてていたが、マフィアのボスに拾われ、元生物学者のドクのアイディアでマフィアが暗殺した死体を地下室で溶解するビジネスを始める。そんなある日、ドクはバーで偶然アンという女性と出会い愛し合うようになる。そこにかつての息子も訪れ、事態は思わぬ方向へ動いていく…。元生物学者ドク、彼を取り巻くすべての登場人物が複雑に絡み合い、時間軸が前後しながらスリリングに展開していく。【公式サイトより】


ここのところ、日本での上演が続くフリードリヒ・デュレンマットさん、1973年の作品。

本日はプレビュー公演。

 

舞台はとある倉庫の地下5階。奥の壁の向こうにドクが開発した溶解設備があるという設定で、下手側に冷凍庫を開けるスイッチ。壁の手前にソファベッドと一人用のソファ。

壁からは白い管が伸びていて、溶解された死体を下水へと運ぶ。上手はエレベーターホールへと続き、柱に取りつけられた5つのライトで現在の位置を示す。その他、青いケースがそこかしこに。

 

昨年本多劇場で上演された『物理学者たち』の続篇にあたるとのことだけど、ストーリーや登場人物に繋がりがあるわけではない。本作が「失敗作」という評価もあるそうだけど(ちなみに初演の演出はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督で、上演3日目に作者と諍いになって降板したそうな)、個人的には『物理学者たち』よりも面白く感じた。

開演時、明かりが点くと役者陣が横一列になって並んでいるという演出はこれから何かが始まるというわくわく感をもたらすが、何と言ってもマフィアが暗殺した死体を溶解するビジネスを始めるというブラックユーモア(ユーモアなのか?)溢れるアイディアが秀逸。ト書きにあるのか独自の演出なのか分からないが、死体が処理される時に「エリーゼのために」が流れるのも可笑しみを増す。

そんな地下の溶解所に住み着いてほとんど外部に出なくなるドクだが、そこに自分の愛人やら息子やらまでもが運び込まれて物語は加速していく。まさに「毒を食らわば皿まで」。引き返すことが出来ないのはもちろん、一人また一人と加担者が増えていく悪夢のような展開に最後まで惹きつけられた。

 

俳優陣はいずれもよかった。

ボス役の外山誠二さんはまさにマフィアといういでたちで、悪徳警官コップ役の山本亨さんともども「舞台で演じるということ」を熟知されているなぁと感心するばかり。特にお二人ともモノローグが絶品で、若手舞台俳優はこぞって観に行くといいぞ。笑

充電期間中の月船さららさん(詳しくはこちら)は愛人役が似合うなぁ。

 

上演時間2時間14分。