『グッモーエビアン!』(山本透監督) | 新・法水堂

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『グッモーエビアン!』


 

2012年日本映画 106分
脚本・監督:山本透
脚本:鈴木謙一 原作:吉川トリコ『グッモーエビアン!』(新潮文庫 刊)
企画:宇田川寧 プロデューサー:小林智浩、若林雄介

撮影:小松高志 照明:蒔苗友一郎 音響:石貝洋

美術:龍田哲児 衣装:西留由起子 ヘアメイク:藪西智美

編集:相良直一郎 ポストプロダクションプロデューサー:篠田学

VFXスーパーバイザー:大萩真司 カラリスト:長谷川将広

音響効果:松浦大樹 キャスティング:田端利江 助監督:安達耕平

制作担当:齋藤悠二 ラインプロデューサー:田口雄介
音楽:葉山たけし 音楽プロデューサー:安井輝

主題歌:「the same as...」ONE OK ROCK

 

出演:

麻生久美子(広瀬アキ)

大泉洋(ヤグ・矢口)

三吉彩花(ハッちゃん・広瀬ハツキ)

能年玲奈(トモちゃん・丸尾トモミ)

土屋アンナ[友情出演](フリーマーケットの店番)

小池栄子(担任・小川先生)

塚地武雅[ドランクドラゴン](学年主任・カニ)

山野海(佐々木さん)、パンチ佐藤(警官)、竹村哲[SNAIL RAMP](ベースの茂樹)、MAH[SHAKALABBITS](ドラムのヒロシ)、柚木彩見(安藤先生)、倉橋悦子(トモちゃんの母親)、原田裕章、小泉彩(幼少期のハツキ)、山本啓之(教師)、坂本彩夏、山口貴之、古川慎悟、林正樹、福島祐次、小川美穂、征矢一那、松野高志、小松咲子、小松千早、蒔苗みほ子、蒔苗晃那

 

STORY

中学3年生のハツキは、名古屋市内のアパートで母のアキと二人暮らし。以前パンクバンド"MISSION FROM GOD"でギタリストをしていたアキとハツキは友達同士のように仲がいい。桜が満開の頃、1年半前から「世界ツアーにでる」と言って音信不通になっていたヤグから葉書が届く。そこにはカンガルーの写真と共に「グッモーエビアン!」と書かれていた。半年後。ハツキが商店街を歩いていると、世界放浪を終えて突然帰国した薄汚い格好のヤグに出会う。その日からアキとハツキ、そしてヤグの騒がしい3人暮らしが復活した。15年前、ヤグは自分が父親ではないにもかかわらず、ハツキを身ごもっていたアキにプロポーズ。当時アキは17歳、ヤグは中学3年生。やがてハツキが無事に産まれ、3人は一緒に暮らし始める。アキとヤグはバンド活動も続け、籍は入れなくとも3人は家族同然だった。だが2年ぶりの3人暮らしにハツキは戸惑いを隠せない。仕事もせずにその日暮らしをするヤグと、それに対して文句も言わないアキにも理解できなかった。そんな中、ハツキの親友、トモちゃんに「あんな人がお父さんだったら毎日楽しそう」と言われ、思わずハツキはキレてしまう。だが翌日、トモちゃんは学校に来なかった。両親が離婚して、母親の実家がある鹿児島へ引っ越してしまったのだ。ハツキが呆然としながら授業を受けていると、突然ヤグが教室に侵入。先生に取り押さえられながら「ハッちゃん、『さよなら』と『ありがとう』は、言える時に言わなダメ!」と叫ぶヤグの声にハツキは教室から駆け出してトモちゃんの見送りに向かう。ヤグのママチャリの荷台に乗って空港を目指すが、トラックと接触事故を起こし、結局トモちゃんの見送りはできなかった。幸い軽い怪我で済んだヤグは、病室に迎えに来たアキに「またバンドがやりたい」と切り出す。ある晩、アキが帰宅すると、待ち受けていたハツキの担任教師、小川から、ハツキが就職を希望していることを初めて聞かされる。就職をして一人暮らしをするというハツキはどうやら、自分がアキとヤグの暮らしに邪魔な存在だと思っているらしい。家を飛び出し、土手に座っているハツキを見つけたアキは、本当の父親のこと、ヤグが中学卒業後すぐに両親を事故で亡くしていること、ハツキの名付け親がヤグであることを打ち明ける。春。中学を卒業し、パンクテイストのファッションに身を包むハツキとトモちゃんが薄暗いライヴハウスにいた。ステージではヤグが歌い、アキがギターを弾きながらコーラスをしている。MCでヤグは「アキちゃんと結婚します」と宣言、温かい拍手と愛情溢れる野次を贈る観客の中に、少し大人になった笑顔のハツキがいた……。【「KINENOTE」より】


吉川トリコさんの同名小説を映画化。
2007年には『なごや寿ロックンロール』としてドラマ化もされている(ちなみに主演はオセロ・中島知子さんで板東英二さんも出演していたから、現時点での再放送の可能性は限りなくゼロに近い)。

前半は少々単調で、人物造形もそれほど深いわけではないのだが、トモちゃんの転校のあたりから段々面白くなってくる。学校に乗り込み、「『さよなら』と『ありがとう』は、言える時に言わなダメ!」とハツキに叫ぶヤグの台詞もいいが、ケッタ(名古屋人ならチャリンコと言わずにケッタと言え)で駅に向かい、空港に行って見送りという鉄則のパターンになるかと思いきや、トラックにぶつかって救急車で運ばれるという意表を突いた展開。
その後、進路をめぐって衝突した際、ヤグは思わずハツキの頬を叩くが、これはこの3人が家族であるという何よりの証拠。ハツキも普通の親が欲しかったとは言うが、心ではずっと傍にいてくれたヤグのことを必要としていたのだろう。
終盤のライブハウスでの演奏シーンもなかなか本格的。
麻生久美子さんも様になっているし、ヤグのMCも実に不器用ながらもストレートに伝わってきて、大泉洋さんが意外に演技が出来るんだと認識を新たにした(笑)。

ところでこの作品は名古屋を舞台としていて、色々な地名が出てくるが、ハツキたちの通うのは「名古屋市立栄生第二中学校」。もちろん架空の学校だが、「栄生」は実在する地名で「さこう」と読む。
また、冒頭のナレーションで「鶴舞(つるまい)公園の桜が…」とあったが、「つるまこうえん」が正しい。もっともこれは地元の人でも「つるまいこうえん」と言う人がいるし、「鶴舞」という地名も今では駅名などでは「つるまい」になってしまっているが…。

実質的な主演の三吉彩花さんもよかったが、能年玲奈さんの屈託のない可愛らしさと来たらもう。次期朝ドラの『あまちゃん』がますます楽しみになってきた。