スヌーヌー『モスクワの海』再演 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

スヌーヌー vol.3 

『モスクワの海』

 


2022年6月30日(木)〜7月3日(日)
象の鼻テラス
 
作・演出・制作・音響・映像・その他:笠木泉
チラシイラスト・衣装:タムナデ姉 
制作チーム:タムナデ姉、踊り子あり ロゴデザイン:ムーサマスイ
スチール:明田川志保 戯曲冊子デザイン:牛尾千聖

出演:
高木珠里[劇団宝船](女1・フジオの母・加藤伸子)
踊り子あり[はえぎわ](女2・通りすがりの女/フジオの友人ハシモト/渡り鳥のリーダー)
松竹生(男・フジオ/通行人)
 
STORY
東京の隣の街。12月のある日、爆発が起きて古い小さな一軒家の庭で尻餅をついた女1に通りすがりの女2が声をかけて手を差し伸べるが、女1は大丈夫だと拒絶する。女1が庭で転ぶずっと前、長年引きこもっていた50代の息子・フジオはバイトの面接を受けに新宿に向かうが、途中で電車を降りてしまう。

旧臘、下北沢のライブカフェ、ニュー風知空知で初演され、笠木泉さんによる脚本が岸田國士戯曲賞最終候補となった作品の再演。

会場が象の鼻テラスに移ったことで、スペース的には広くなり、開放感も段違い。奥の壁にスクリーンがあり、その手前に普通の脚立、円形のラグマット、小さな脚立が並ぶ。客席はスクリーンに向かってUの字に椅子が置かれている。
本作は初演を鑑賞し、その後、PDFで戯曲の無料配布をやっていたのでそれで読み、岸田戯曲賞の候補になった際に再び読み、そして今回、300円というお値打ち価格で売られていたので再び戯曲を読んだのだけど、これほど読むたびに新たな発見がある戯曲も珍しい。単にこちらの読解力不足なのかも知れないけど、噛めば噛むほど味が出る。
登戸の通り魔事件、福島原発の事故と汚染水放出、チェルノブイリ原発の事故(スベトラーナ・アレクシエービッチ著、松本妙子訳『チェルノブイリの祈り』からの引用あり)、いわゆる8050問題といったモチーフを織り交ぜつつ、自分の力で立ち上がる女1や2万キロの旅に出る渡り鳥たちの姿が希望を感じさせてくれた。

初演に引き続きの3人のキャストはいずれもよかった。
会場が広くなったお陰もあってか、声量もアップし、特に踊り子ありさんの声はビリビリと響くほどだった(特に鳥のリーダー役のとき)。
 
上演時間1時間13分。


 

初演時、フジオがハシモトから借りたのはカセットテープだったが、今回は客席に鈴木慶一さんがいらっしゃったからか、ムーンライダーズのLP、それとビートルズの『リボルバー』になっていた。