梅田芸術劇場『M.バタフライ』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

梅田芸術劇場

『M.バタフライ』

M. Butterfly

 
 

【東京公演】

2022年6月24日(金)〜7月10日(日)
新国立劇場 小劇場
 
原作:デイヴィッド・ヘンリー・ファン 翻訳:吉田美枝
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
美術:山本貴愛 衣裳:前田文子 照明:松本大介 音響:角張正雄 ヘアメイク:宮内宏明
京劇指導:張春祥 所作指導:飛鳥左近 ステージング:当銀大輔
演出助手:長町多寿子 ドラマトゥルク:下平慶祐 舞台監督:藤崎遊
 
出演:
内野聖陽(ルネ・ガリマール)
岡本圭人(ソン・リリン)
みのすけ(ルネの幼馴染・マルク/パーティーの男2/シャープレス領事)
藤谷理子(女子大生ルネ/パーティーの女/雑誌の若い女)
占部房子(ソンの監視役・共産党員チン同志/蝶々さんの女中スズキ/ソンの女中シュー・ファン)
朝海ひかる(ルネの妻ヘルガ)
三上市朗(ルネの上司・トゥーロン大使/パーティーの男1/裁判長)
 
アンサンブルダンサー:
南部快斗
新井健太
 
STORY
中国、北京に駐在経験のあるフランス人外交官ルネ・ガリマールは、国家機密情報漏洩により投獄されている。なぜ彼は、そんな大罪を犯すに至ったのか。オペラ『蝶々夫人』と対比させながら、彼が自らの物語として、その「正しさ」を説いていくうちに、ことの全貌が見えてくる。時は1960 年代、文化大革命前夜の中国・北京。駐在フランス人外交官のルネ・ガリマールは、社交の場でオペラ『蝶々夫人』を披露した京劇のスター女優ソン・リリンに出会う。「東洋人らしい」慎み深さと奥ゆかしい色香を湛えたソンに、瞬く間に魅了され恋に堕ちていくルネ。やがて男女の仲になり人目を忍びつつも20 年に渡り関係が続くが……
その実、ソンは毛沢東のスパイであり、男だった―――。【公式サイトより】

映画化もされたデイヴィッド・ヘンリー・ファンさんのトニー賞受賞作を日本では32年ぶりに上演。
 
ちょっと迷っていたのだけど、やはり藤谷理子さん出演作は見逃せない!とばかりに何とかチケットを確保しての鑑賞。
映画版は観たことはあるし、どんな話かは承知しているのに、ポスターに写っている岡本圭人さんが女性だとばかり思っていた私。笑
 
プッチーニのオペラ『蝶々夫人』をモチーフにしつつ、実話がベースになっているのが驚きな本作、ソンが男であることに気づかなかったことにもびっくりだが、果たしてこの20年間はルネ自身が口にする通り、無駄な年月だったのだろうか。
終盤、ルネ役の内野聖陽さんが自分で白塗りのメイクをするシーンは一人芝居『化粧二題』を思い出させると同時に、映画版のジェレミー・アイアンズさんの惨めな顔も蘇ってきたが、そこにはソンに対する変わらぬ追慕の念があるようにも思われる。
 
こういった設定の物語なだけに役者の力量も問われる作品だと思うが、その点、主演の2人は説得力のある演技をしていた。特に岡本圭人さんの女性的な仕草や動作は見事。内野さんはちょっとトチりが多いのが気がかり…。
脇も安心して見ていられる布陣だが、中でもお目当ての藤谷理子さんはこれまでにない大胆な恰好になるシーンもあって、いい意味でイメージを裏切ってくれた。