イキウメ『関数ドミノ』 | 新・法水堂

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イキウメ

『関数ドミノ』



【東京公演】
2022年5月17日(水)〜6月12日(日)
東京芸術劇場シアターイースト

作・演出:前川知大
ドラマターグ・舞台監督:谷澤拓巳 美術:土岐研一
照明:佐藤啓 音響:青木タクヘイ 音楽:かみむら周平 
衣裳:今村あずさ ヘアメイク:西川直子 ステージング:下司尚実
演出助手:須藤黄英 演出部:成瀬正子
照明操作:溝口由利子 音響操作:古川直幸
宣伝美術:鈴木成一デザイン室 イラストレーション:星野勝之
舞台写真:金子愛帆、田中亜紀
制作:坂田厚子 票券:宍戸円 制作デスク:谷澤 舞
プロデューサー:中島隆裕

出演:
安井順平(目撃者、コンサルタント・真壁薫)
浜田信也(目撃者、予備校講師・左門森魚)
小野ゆり子(目撃者、精神科医・大野つかさ)
太田緑ロランス(目撃者、看護師・澤村美樹)
盛隆二(目撃者、飲食業・土呂弘光)
川嶋由莉(目撃者、会社員・平岡泉)
大窪人衛(事故の当事者で歩行者。森魚の弟・左門陽一)
森下創(事故の当事者で運転者・新田直樹)
温水洋一(保険調査員・横道赤彦)

STORY
金輪総合病院前。見渡しの悪い交差点、車の運転手は路上に歩行者を発見するが、既に停止できる距離ではない。しかし車は歩行者の数センチ手前で、まるで透明な壁に衝突するように大破した。歩行者は無傷。幸い運転手は軽傷だったが、助手席の同乗者は重傷。そこで目撃者の一人が、これはある特別な人間「ドミノ」が起こした奇跡であると主張する。彼の発言は荒唐無稽なものだったが、次第にその考えを裏付けるような出来事が起こり始める――。【当日パンフレットより】

2005年初演の作品の2022年版。

まず目につくのが、天井にある巨大な額縁のような太い枠。その真下の部分は一段低くなっている。左右についたて、あちこちに椅子が数脚。いつもながらに土岐研一さんの舞台はスタイリッシュ。

物語の発端は交差点で起きた不思議な交通事故。
最初に目撃者の一人、真壁薫が登場して語り手を務めるが、彼が「ドミノ」なる概念を持ち出してそこで起きた出来事を解釈しようとする。
彼に言わせれば、左門森魚(もりお)こそが「ドミノ」であり、彼が強く願ったから弟の陽一が事故に遭わずに済んだという。
真壁の理論は陰謀論めいていて、自分の人生がうまくいかないのは全部「ドミノ」のせいだと言わんばかり。結局のところ、この物語は世界とどう対峙していくかということに尽きると思うのだけど、当の真壁自身が「ドミノ」だったことを知り、「ドミノだったのに!」と悔やむ様は痛切。
自分のことを信じる、その先にこそ未来はある。そんなメッセージを説教臭くなく伝えている作品だと思った。

安井順平さんはそんな真壁を好演。
真壁の指令で森魚に近づく土呂を演じた盛隆二さんの不器用そうな感じが役に合っていた。
ただ、全体的に珍しくトチりが多く、若干リズムが損なわれていたのが残念。まぁ2日目ということもあるのかも知れないけど。

上演時間2時間4分。