ロロ『ロマンティックコメディ』 | 新・法水堂

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ロロ

『ロマンティックコメディ』

ROMANTIC COMEDY
 

 
2022年4月15日(金)〜24日(日)
東京芸術劇場シアターイースト
 
脚本・演出:三浦直之
美術:杉山至 照明:富山貴之 照明操作:久津美太地
音響:池田野歩 衣裳:伊賀大介 舞台監督:鳥養友美
演出助手:中村未希 演出部:岩澤哲野、桝永啓介 文芸協力:稲泉広平
イラスト:西山寛紀 デザイン:佐々木俊 制作助手:大蔵麻月
制作:奥山三代都、坂本もも
 
出演:
森本華[ロロ](店主・早川ヒカリ(33))
望月綾乃[ロロ](岬あさって(27))
大場みなみ(椎名となり(30))
大石将弘[ままごと/ナイロン100℃](浦和寧(27))
亀島一徳[ロロ](佐伯麦之介(27))
篠崎大悟[ロロ](常連客・古池遠足(34))
新名基浩(常連客・藤井瞼(36))
堀春菜(浜辺白色(21))
 
STORY
ある町の丘の上にある本屋「ブレックファストブッククラブ」では時折、すこし変わった読書会が開かれている。課題図書はいつも同じ、自費出版のある小説。その本を繰り返し読み、語り合うのだ。「ブレックファストブッククラブ」の店主のヒカリは友人のとなりとあさってとともに、何度目かの読書会の準備をしている。お菓子を用意して、お茶を淹れ、入れ替わり立ち替わり現れる参加者達を迎え入れる。小説のテキストは各々の記憶を呼び起こし、思い出話は関係のなかった人を巻き込みながら思わぬ方向へ。本筋もないまま脱線を繰り返し、雑談に雑談を重ねながら、一冊の本を中心として長い長いお喋りは賑やかに続くーー。【公式サイトより】

ロロ、2年越しの新作公演。
 
舞台は「ブレックファストブッククラブ」。
上手側が出入口でドアの外に「Breakfast Book Club」と緑の文字で書かれた看板。奥に街灯。床には円形のカーペットが敷かれ、テーブルや椅子、ソファ。奥には本棚。その向こうに置かれたいくつかの鳥小屋にも本が並べられている。舞台手前や下手側の通路にも本が並べられている。
 
三幕構成になっていて、第1幕は第2幕の1年後、第3幕は第2幕の3年後が描かれる。
タイトルから想像されるような恋愛喜劇はここにはなく、中心となるのは本屋を営むヒカリとそこで開かれる読書会に集まってくる人々の物語。その読書会で読まれるのは、ヒカリの友人であさっての姉・詩歌が生前、自費出版で出した小説のみ。
恋愛要素はとりたててないが(登場人物同士が結婚して、離婚するという展開はあるが)、romanticの語源romanには「物語」「小説」といった意味があり、フランス語のcomedieには「演劇」という意味もあることを考えれば、一見そぐわないように思える本作のタイトルもしっくりくる。

三幕それぞれの味わいがあるが、個人的にはコストコの看板に騙されて店に入ってきた白色が登場する第3幕がいちばんよかった。白色は中学時代、詩歌がサイトに投稿していた小説を読んでいて、クラスで一時期流行ったという。恐らくヒカリもあさってもそのことは知らなかったのだろうが、死後数年が経ってもこうして新たな発見があるというのは亡くなった人にとっても残された人たちにとっても幸福なことのように思える。
本は時にこうして見知らぬ者同士を結びつけるが、この第3幕は閉じられていると思われた読書会というサークルが一挙に世界に向けて放たれたかのような開放感を味わうことができた。
 
上演後、アフタートーク。書店が舞台の作品ということで、先月閉店した日比谷コテージなどの書店員を務めて来られた花田菜々子さんがゲスト。『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』、通称「であすす」は私も読んでいたのでラッキー。
 
上演時間1時間46分。