日本劇団協議会『不思議の国のアリス 五場と二つの幕間小景』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

日本劇団協議会

日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演 演出家部門

『不思議の国のアリス 五場と二つの幕間小景』



2022年2月23日(水・祝)〜27日(日)

ザ・スズナリ


作:別役実 脚色・演出・振付:スズキ拓朗(CHAiroiPLIN)

音楽:諏訪創

舞台美術・映像:青山健一 照明:横原由祐 音響:高塩顕

衣裳:小林巨和 衣裳助手:佐藤愛美 舞台監督:土居歩 演出助手:橋口佳奈

稽古場スタッフ:松永将典、本間隆斗

宣伝美術:青山健一、江利山浩二(KINGS ROAD) 舞台写真:横田敦史

プロデューサー:流山児祥 アシスタント・プロデューサー:米山恭子


出演:

紅日毬子[虚飾集団廻天百眼](アリス)

イワヲ[流山児★事務所](父)

森ようこ[演劇実験室◎万有引力](母/女王陛下/虎のおきさき)

山丸莉菜[流山児★事務所](姉/王女/ライオン)

小林七緒[流山児★事務所](兄/王子/虎)

田村龍成(叔父/公爵/いたち)

清水ゆり[CHAiroiPLIN](叔母/公爵夫人/ライオンのおきさき)

山下直哉[流山児★事務所](従兄/近侍/兎)

佐野陽一[サスぺンデッズ](委員会の男/看守)

丸山厚人(金ピカの兵隊/死刑執行人)

伊藤俊彦(秘密探偵X)

諏訪創[流山児★事務所](キャラバンの男/犬)

よし乃[CHAiroiPLIN](死刑囚1/西の歩哨)

橋口佳奈[流山児★事務所](死刑囚2/北の歩哨)

本間隆斗[流山児★事務所](死刑囚3/東の歩哨)

チカナガチサト(郵便配達夫/死刑囚4/南の歩哨)


STORY

「幻想の砂漠」の一隅で、奇妙な移動サーカスの一隊が繰り広げる五場と二つの幕間小景。変わる体制の中で『虐殺された詩人』のように処刑される喜劇役者。お面をつけ替えながら関係性を変えていく人々。その中を生き抜くアリス。【公式サイトより】


1970年初演の別役作品をCHAiroiPLINのスズキ拓朗さんが演出。


舞台はスリットが大量に入った布で三方の壁が覆われ、どこからでも出入りが出来る状態。床には穴が1箇所あり、脚立の上にアリスの下半身があり、上半身をその穴から出して演じるという場面もあり。


『不思議の国のアリス』と言えば、言わずと知れたルイス・キャロルの作品だが、この別役版『アリス』はオリジナルとはほとんど何の関係もないと言っていいぐらい別の物語。

冒頭、戦争が始まるという悪い意味でタイムリーな作品となってしまったが、本作では歩哨が殺され、体制が変化していくに伴い、喜劇役者であるアリスの父が処刑のために連れ去られてしまう。

アリス一家がサーカス団という設定で、歌あり演奏ありと表向きは賑賑しく華やいだ雰囲気だし、次から次へと変化する演出も目まぐるしいほどだが、その裏側に人間の愚かしさ、恐ろしさをしのばせる。別役さんにとっては、この現実世界こそが「不思議の国」の世界なのかも知れないなぁとふと思ったりもした。


キャストでは、紅日毬子さんはビジュアルからして適役。

アリスの両親役のイワヲさんと森ようこさんもともにとてもよかった。姉役の山丸莉菜さんは金髪になっていて新鮮。ライオンの被り物をして、兄役で虎となる小林七緒さんと対決するシーンも好き。

そして何と言っても丸山厚人さん。美声健在。


上演時間2時間5分。