兵庫県立ピッコロ劇団『いらないものだけ手に入る』【配信】 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

兵庫県立ピッコロ劇団 第71回公演

『いらないものだけ手に入る』

 

 

2021年10月9日(土)~14日(木)

ピッコロシアター大ホール

 

作・演出:土田英生(MONO)
美術:奥村泰彦 照明:西川佳孝(株式会社ハートス)

音楽:園田容子 音響:奥村威 衣裳:大野知英

舞台監督:谷本誠 演出助手:眞山直則 演出部:森好文、鈴木あぐり、谷口遼

イラストとチラシデザイン:チャーハン・ラモーン 映像収録:堀川高志(kutowans studio)

制作:新倉奈々子、河東真未

 

出演:

橘義(松尾露美)
樫村千晶(坂下樹里)
岡田力(樹里の兄・坂下真)
平井久美子(真の妻・今藤美津子)
森万紀(露美の恋人・朴流香)
孫高宏(「愛すべきコチ」地区リーダー・真壁寿徳)
吉江麻樹(「愛すべきコチ」メンバー・反町早苗)
菅原ゆうき(同・山崎名高)
吉村祐樹(樹里の婚約者・水野佐々木)
亀井妙子(カフェ「バルコーネ」店長・行橋ロウザ)
車貴玲(カフェ「バルコーネ」店員・片平玲音)

STORY

地球から遠く離れたスペースコロニー「キョクトウ」。ここには地球上の隣国「マナヒラ」と「コチ」にルーツを持つ人たちが暮らしている。露美(ろみ)と樹里(じゅり)は、ルーツの国は異なるが、隣同士で育った幼なじみだ。5年前、地球上でマナヒラとコチが戦争状態に入ったのを機に、「キョクトウ」は軋み始めた。人々は自分のルーツを探し、アイデンティティに目覚める。分断していく「マナヒラ」と「コチ」。幼なじみの2人は引き裂かれてしまうのだろうか? ああ、異星のロミオとジュリエット―【公式サイトより】


土田英生さんが19年ぶりに手がけた兵庫県立ピッコロ劇団の新作公演を配信にて。

文化庁芸術祭賞大賞受賞。

 

舞台はカフェ「バルコーネ」。中央のエントランスには「BALCONE」の文字が裏側から見える。下手側は厨房へと続き、外にはテラス席、上手側にはバルコニー。店内には中央に長テーブル左右に丸テーブル。

このカフェは中立を宣言していて、政治的な話は禁止されている。

 

こういう現実とよく似ている、だけど近未来という設定は土田さんの得意とするところ。

本作はそこに『ロミオとジュリエット』風味が加わるが、この「分断」というのもしばしば用いられるモチーフ。

また、山崎名高や水野佐々木のように元々は苗字として使われていた名前が下の名前に使われているという設定の一方、真と美津子が夫婦でありながら、別姓になっているのは土田さんらしい配慮。ただ、それなら同姓婚のカップルとかを出してもよかったのかなという気もした(分断と対照的な位置づけとして)。

キャラとしては、地球の昔の文学を研究していて、ついつい喋り過ぎてしまう(だけど話はつまらない)水野佐々木がよかった。

 

兵庫県立ピッコロ劇団はその名前はよく目にはするが、観るのは初めて。

こうやって遠方でも観られるのは、コロナ禍がもたらした数少ない恩恵の一つですな。

 

配信時間1時間45分。