ゆうめい『娘』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ゆうめい

『娘』

 

 
2021年12月22日(水)〜29日(水)

ザ・スズナリ

 

作・演出:池田亮

舞台美術・衣裳:山本貴愛 照明:中西美樹 音響:鈴木はじめ

映像:新保瑛加 アニメーション・宣伝美術:りょこ 

演出助手:池内風 舞台監督:竹井祐樹

衣裳スーパーバイザー:藤林さくら 音響補佐:若林なつみ

映像操作:田中りか 演出部:梶原あきら 大道具:C-COM、林口奈未

運搬:マイド 稽古場:すむぞう新橋スタジオ、下北沢本多スタジオ

DIPオペレーター:岡田湖以 票券:安達咲里、後藤かおり 制作助手:上村悠莉

制作:いとうかな

 

出演:

高野ゆらこ(へら/へら母)

宮崎吐夢[大人計画](へら父/音声)

木村美月[阿佐ヶ谷スパイダース](若へら)

岩瀬亮(へら夫/へら父の旧友)

中村亮太(へら子/ヤクザ①)

森谷ふみ[ニッポンの河川](ゆの/義母)

大石将弘[ままごと/ナイロン100℃](ゆの父/へら父兄/男(へら子の同級生))

大竹このみ[贅沢貧乏](若ゆの)

田中祐希(ゆの夫/ヤクザ②/店員)

山中志歩[青年団](ゆの子/ゆの母)

 

STORY

へら子とゆの子の夫婦は、家に来たゆの子の両親(ゆの・ゆの夫)とリモートで繋がったへら子の両親(へら・へら夫)に娘が生まれることを伝える。へら子の両親もゆの子の両親も卒婚と称して別居していたが、へらとゆのの両親もまた別居を経験していた。警察学校の校長の息子だったへらの父は、満洲で捕虜となった体験を芝居にしようとしていた。しかし、上京してへらが公務員となって結婚した後、兄の葬儀のために北海道に戻った父は音信不通となる。一方、ゆのの父は飽きずに娘の絵を描き続けていた。ゆのは子供を産んだ後も共働きに出ていたが、義母との折り合いは悪く、娘も自分に懐いていなかった。ゆのはそんな不満をインターネットの匿名掲示板に書き込む。


ゆうめい新作公演。

 

舞台は三重の枠組を持つ構造になっていて、前後に移動できるようになっている。奥の壁はスライドして開閉可。床には蓋があり、へら子をいじめていた男の風呂になったり出入口になったりする。

 

開演時間になると、作者の分身たる中村亮太さんが現れ(毎回思うけど、本当に作者だと思っている人多そう)、上演前の諸注意などを述べた後、来年の2月に娘が生まれることを報告。そこから流れるように本篇へ。

本作では作者の母・へらと妻の母・ゆのの2人の物語がメイン。上演台本によれば、一風変わった名前はギリシャ神話における母性を司る女神ヘーラーとローマ神話における結婚生活を守護する女神ユーノーが由来。

 

かつて娘であったへらとゆの、それぞれ紆余曲折を経て今があるわけだが、その2人の来し方を描くことによって日本の社会における歪みが露わになってくる。夫婦別姓を巡る論議一つとっても、「伝統的な日本の家庭」を持ち出す輩がいて笑ってしまうが、自分の娘が大きくなる頃には「母親はこうあるべき」「妻はこうあるべき」という枷がなくなっていますように、という作者のささやかな願いが込められているように感じた。

 

キャストでは木村美月さんが髪型や喋り方などを高野ゆらこさんに寄せていっているのが面白く、若い頃のゆのを演じた大竹このみさんが義母と対峙するシーンがよかった。

 

上演時間1時間46分。