こまつ座『雪やこんこん』 | 新・法水堂

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こまつ座 第140回公演

『雪やこんこん』

 

 
【東京公演】
2021年12月17日(金)〜26日(日)
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
 
作:井上ひさし 演出:鵜山仁
音楽:宇野誠一郎
美術:石井強司 照明:服部基 音響:秦大介
衣裳:中村洋一 所作指導:沢竜二 ヘアメイク:鎌田直樹
宣伝美術:安野光雄 演出助手:谷こころ 舞台監督:増田裕幸
制作統括:井上麻矢
 
出演:
熊谷真実(座長・中村梅子)
真飛聖(女将・佐藤和子)
大滝寛(頭取・久米沢勝次)
まいど豊(番頭・立花庫之介)
藤井隆(二枚目・秋月信夫)
小椋毅(女形・明石金吾)
前島亜美(娘役・三条ひろみ)
村上佳(お囃子方・光夫くん)
安久津みなみ(女中お千代)
 
STORY
消滅寸前の旅一座、女座長・中村梅子 起死回生の大芝居!!「一座総勢十八名、大挙来演」と看板をかかげ、人気も芸も関東一とうたわれた大衆劇団「中村梅子一座」を待つ北関東の雪深き旅館に併設された芝居小屋「湯の花劇場」。「こんな一座に居たんじゃ、明るい未来はありゃしねえ」「給金代わりにかつらと衣裳はいただき」と流れ流れの旅一座が小屋にたどり着いたときは、座員はたったの六名。「正月興行までなんとかもちこたえねば」女座長・中村梅子の焦りと悩みは外の雪のようにこんこんと降り積もる。旅館の女将・佐藤和子は、大衆演劇の大スターであったが、嫌気がさしてこの世界から足を洗い旅館を切り盛りしている。役者の頃から尊敬していた梅子とその一座を迎え、何かと世話を焼く女将の和子と番頭の庫之介を巻き込んでの中村梅子一座の涙と人情の二日間。【紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA公式サイトより】

1987年初演作、キャストを一新しての上演。
本来は昨年上演予定で、辻萬長さんもキャスティングされていたが、新型コロナのために上演中止の憂き目に。
 
舞台は芝居小屋の楽屋。下手に板戸があり、外は吹雪。上手に揚げ幕がかかり、舞台へと通じる。屋根には雪が降り積もる。
 
こまつ座の舞台を観ると、あぁいいお芝居を観たなぁという気になるけど、本作は旅一座の面々と女将たちが織りなす芝居に次ぐ芝居といった内容なので、尚更その思いが強まる。
一幕では梅子と和子が生き別れになった親子(1週間しかなかった昭和元年に生まれたから和子と名付けた)という設定で金をせびる座員たちを騙し……かと思いきや、二幕では実は和子が座員たちにひと芝居打たれていたことが判明するといった具合で、こうしたどんでん返しも井上戯曲の楽しさ。
とりわけ、二幕で梅子が老婆に扮してやってくるシーンでの「お客あっての役者稼業」という言葉には、井上ひさしさんの万感の思いが込められているように感じられて心に響いた。
 
それにしても井上ひさしさんの書く台詞の見事なこと。浅草フランス座での経験が活かされているそうだけど(『浅草キッド』!)、「道理も下駄もない」「親の悪いのと味噌の悪いのは治しようがない」「烏も枯木に二度止まる」といった今ではあまり聞く機会のないフレーズも名調子とともにストンと落ちてくる。
 
キャストでは、真飛聖さんの気風のよさに惚れ惚れ。さすが元宝塚男役トップスターだけあって、様になっている。
最後の口上で出演者のそれぞれの属性(元宝塚、文学座、青年座、吉本興業、東京ヴォードヴィルショー、モダンスイマーズ、エーベックス、マー姉ちゃんなど)をずらずらっと並べ立てていくのもよかった。
 
上演時間2時間36分(一幕1時間14分、休憩15分、二幕1時間7分)。