『水深ゼロメートルから』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『水深ゼロメートルから』



2021年11月3日(水)〜7日(日)
「劇」小劇場

脚本:中田夢花 演出・美術:小沢道成
原作:徳島市立高等学校 演劇部
音楽:森優太 舞台監督:大刀佑介
美術:坂本遼 照明:伊藤孝(ART CORE)
音響:中村光彩
衣裳:山中麻耶 ヘアメイク:武部千里
音響操作:日影可奈子
宣伝美術:目黒水海 制作:村田紫音
キャスティング:池田舞、松本晏純
プロデュース:直井卓俊、半田桃子、保坂暁

出演:
濵尾咲綺(出島ココロ)
宮﨑優(奥田チヅル)
仲吉玲亜(ミク)
花岡すみれ(水泳部先輩・ユイ)
椙山さと美(体育教師・山本)

STORY
故障中で水の入っていない高校のプールの底を、水泳部で2年生のチヅルが、服を着たまま腹ばいになって進んで「泳いでいる」。大会をイメージした練習のつもりだ。プールサイドには、同じ2年生のココロとミクが、体育の補習で体育教師の山本から呼び出され、グラウンドから飛んできた砂が積もったプールの清掃を指示される。その手伝いのために、引退した元水泳部部長で3年のユイもやって来る。女子高生4人の何気ないガールズトークから、見た目や「女らしさ」への悩み、気になる男子のことや生理の憂鬱など、それぞれが抱える思いが浮き彫りになり、交錯する……。【「SPICE」より】

映画化もされた『アルプススタンドのはしの方』に続く高校演劇リブート第2弾。

舞台には学校の机が並べられ、机の上がプールサイド、何もない床がプールの底に見立てられる(ロビーには舞台の模型あり)。

本作は四国地区高等学校演劇研究大会にて文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した作品だが、全国大会はコロナ禍のために中止。生徒役の名前はその役を演じた部員の名前が使われている。

プールサイドに集まった女子生徒たちはそれぞれジェンダーにまつわる悩みを抱えている。
大きくなった胸をさらしで隠し、阿波踊りの男踊りをやりたいミク。中学時代は自分の方が早く泳げていたのに、野球部の楠に負けたチヅル。生理中にもかかわらずプールに入らされ、男と戦うためにメイクに勤しむココロ。
少女から大人になるに従い、否が応でも自分が女であるという現実をつきつけられる姿が等身大に描かれる。

野球部が練習中のグラウンドからプールに飛んでくる砂は、そんな彼女たち、もっと言えば女性全般を取り巻く社会からの抑圧が具現化されたものであろう(言うまでもなく野球部はほとんどが男性だし)。
そんな砂を封じ込めるラストが痛快。

キャストは椙山さと美さん以外はほとんど舞台経験のない顔ぶれだが、そんなことは微塵も感じさせないほどの演技だった。
特に舞台向きというか、勘がいいなと思ったのが宮﨑優さんだけど、濵尾咲綺さん、仲吉玲亜さん、花岡すみれさんの3人もしっかりと名前を覚えた(笑)。
そういった意味では、配役表がなかったのが残念。彼女たちの名前を覚えてもらう絶好の機会なのに。

上演時間1時間5分。

上演後に小沢道成さん進行のもと、脚本の中田夢花さん、徳島市立高等学校演劇部顧問の村端賢志先生を迎えてのアフタートークあり。村端先生の髪型や服装が下北沢にいる若者と見紛うほどでびっくり。
中田さんが1年生の時に全国大会で『アルプススタンドのはしの方』が上演され、本作の脚本を書く上でも大いに参考になったとか。

この作品も映画化されるかもねーと思っていたら、既に自分たちで作っていたのね。