《WILL2LIVE Cinema 2021》『シリア・ドリーム~サッカーにかけた未来』 | 新・法水堂

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『シリア・ドリーム~サッカーにかけた未来』

CAPTAINS OF ZAATARI

 

 

2021年エジプト映画 74分

監督・製作:アリ・エル・アラビ

撮影:マフムド・バシール 音響:モハメド・サラー

編集:メナ・エルシシニ 音楽:ギル・タルミ

出演:ファウジ・ラドワン・カトリッシュ、マフムド・ダーギル、ローズ(ファウジの妹)、ファウジの父

 

STORY

ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らしているマフムドとファウジ。二人とも将来の見通しが立たない中、サッカーのプロになることが自由への切符だと固く信じ、日々練習に励んでいる。世界有数のスポーツアカデミーは、マフムドをすぐに才能ある選手だと見抜き、ドーハで開催される国際大会の選手に選考。その後、ファウジも参加できることになり、2人の親友は、ザータリの家族が衛星で見守る中、人生で最も重要なサッカーの試合に臨んだのである。決勝戦の後、二人が記者会見で訴えたのは「人には同情ではなく、機会が必要だ」と。それから3年、青年に成長した二人は今もなお、不安定な将来への不安に苛まれながら、ザータリに留まっているのである。【公式サイトより】


《UNHCR WILL2LIVE Cinema 2021》配信作品。

 

こちらもなお出口の見えないシリア難民を描いた作品。

タイトルの「シリア・ドリーム」はファウジとマフムドが選抜されるサッカー代表チームの愛称でもある(もちろん正しくはシリアン・ドリーム)。

サッカーの王様ペレの例を出すまでもなく、子供の頃貧しくてもサッカー選手になって金持ちになるというのはほとんどの発展途上国に当てはまる夢だと思うが、ことシリアに関しては単に貧しいだけではなく内戦下にある母国では安心して暮らすことすら難しいという現状があるだけに尚更切実なものとなる。


ただ、本作は苦難ばかりを描いているわけではない。

例えば、ファウジとマフムドが夜、戸外で並んで座って「彼女出来たんだ」「名前教えろよ」「やだよ」みたいな他愛のない話をしているあたりは若者らしくてどこかホッとさせられるし、そんな二人が「誰が出来ないって言った? 俺たちなら出来る」と歌うラストからはこういう状況でも夢を諦めないたくましさが感じられた。