『東京自転車節』【配信】 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『東京自転車節』

 

 

2021年日本映画 93分

監督・撮影:青柳拓
撮影・編集:辻井潔 撮影・構成・プロデューサー:大澤一生

音楽・主題歌「東京自転車節」作詞・作曲:秋山周 宣伝:contrail
出演:青柳拓、渡井秀彦(町の有名人)、丹澤梅野(祖母)、丹澤晴仁(叔父)、高野悟志(日本映画大学の同期)、加納土(映画関係の友人)、飯室和希(高校時代の友人)、齊藤佑紀(同)、林幸穂(高校の先輩)、加藤健一郎(俳優)、わん(犬)

 

STORY

2020年3月。山梨県で暮らしていた青柳監督は、コロナ禍で代行運転の仕事が遂になくなってしまう。ちょうど注目されてきた自転車配達員の仕事を知り、家族が止めるのも聞かずに新型コロナウイルス感染者数が増えていた東京に向かう。緊急事態宣言下に入っていた東京で、青柳監督は自転車配達員として働きながら、自らと東京の今を撮影し始めた。【公式サイトより】


現在劇場公開中のドキュメンタリー映画をニコ生のタイムシフト視聴にて鑑賞。


コロナ禍により、急増したUberEats配達員。山梨での仕事がなくなった本作の青柳監督も自転車を漕いで東京にたどり着き、配達の仕事を始める。

それをちゃんとiPhoneとGoProで撮影し、こうやって一本の映画に仕立て上げたところが素晴らしい。


上京してきた青柳監督を泊めてあげるのが『沈没家族』の加納土監督なのだけど、彼が言う通り、自転車配達員はいわば最下層の人々。パンクやスマホの故障も自己負担、長時間働いても時給にしたら最低賃金を下回る人たちがいる一方で、ハンバーガーやタピオカドリンク一つ運んでもらうためにUberEatsを利用する人たちがいて、見事に格差社会の縮図となっている(ところでケン・ローチ監督のインタビュー映像、ちゃんと使用許可取ってるのかな)。


それでも重たい雰囲気の社会派ドキュメンタリーとなっていないのは青柳監督の人柄のお陰だろう。

27歳の誕生日にデリヘル嬢を呼ぶもお金が足りずに女の子に帰ってもらったり、その後で店に電話してちゃんとその子にお金が行くように頼んだり、蚊に自分の血をお腹いっぱいになるよう吸わせたり、とにかくいい人なので、過酷なはずの状況もほっこりした気持で観ることができる。

ただし、監督の本音は最後のシークエンスにも現れているし、そこに至るまでも画面の端々に安倍政権あるいは小池都政への批判を感じ取ることができる。

まぁでも今から見ると、東京の感染者が初めて200人を超えたとか言っていたから平和なものだよねぇ。あと、今の菅ポンコツ首相からすると、安倍の方がまだマシだったように思えてしまうのがスゴいよね。笑


主題歌の「東京自転車節」やコロナ禍で嫌というほど耳にした言葉やフレーズを羅列するくだりを見ても、結構センスのある監督だと思うので今後に期待したい。