ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』「拝み渡り」チーム | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ハイバイ

『ヒッキー・カンクーントルネード』

 

 

【東京公演】

2021年8月11日(水)~26日(木)

すみだパークギャラリーSASAYA

 

作・演出:岩井秀人

舞台監督:谷澤拓巳、成瀬正子 音響:中村嘉宏 照明:兼子慎平(株式会社ラセンス)
衣裳:薫田エリ(MeeM design) 宣伝美術:土谷朋子(citron works)
WEBデザイン:斎藤拓 記録写真:坂本彩美 記録映像:安達亨介
票券:藤野沙耶、ローソンチケット 制作協力:松本梨花
制作:後藤かおり、新開麻子

 

出演:
山脇辰哉(森田登美男)

藤谷理子(森田綾)

富川一人(母)

町田悠宇(出張お兄さん・圭一)

藤村聖子(カウンセラー・黒木香織)

 

STORY
プロレスラーを夢見ているが自宅からは一切出られない引きこもり(ヒッキー)の登美男。妹の綾が唯一の理解者。ある日心配をした母が連れてきた「出張お兄さん」なるカウンセラーもどきの男、圭一に登美男は説得をされるが、あろうことか逆に圭一が、登美男と共に引きこもってしまう。続いてやってきたカウンセラーは、二人を家から外に出すべく、新たな策を練る。果たして、登美男は外に出られるのか…。【公式サイトより】


ハイバイの代表作を2バージョンで上演。「トペ・コンヒーロ」チームに続いて「拝み渡り」チームを鑑賞(ちなみにどちらもプロレス技の名前)。

 

舞台にテーブルと椅子3脚が置いてあるのは同じだが、カレンダー/公衆電話は下手から上手へ、登美男の部屋のドアノブは上手奥から下手手前に移動。それに伴い、玄関への出入口も上手奥に。

 

2018年『ヒッキー・ソトニデテミターノ』に続いて綾役を務める藤谷理子さんがやはり巧いのよなぁ。

特に怒ったときの表情や動きが抜群。

今回の綾は歴代の綾の中でも一番、兄の理解者は自分だけ、自分以外は母親も含めて何も分かっていない!という感情が強かった。

それはともすれば兄妹の間柄を超えた「愛」(本篇ではその言葉を恥ずかしがって「あいうえ」としている)。

かねてから兄妹がプロレスの技を練習しているシーンを見ながら思っていたのだけど、本作におけるプロレスはいわばセックスの代替表現。

だからこそ、綾は富美男と圭一がタッグを組み、目の前で練習をすることを激しく拒む。圭一が練習をした後、「こんな世界、初めて知った」というようなことを言うが、それは同性愛に目覚めた男の台詞にも聞こえる。


また、本作での肝はやはり母親。

これまで男性がこの役を務めてきたが、「トペ・コンヒーロ」チームの矢崎まなぶさんは優しすぎた。今回の富川一人さんも悪くはないが、もっと普通に(つまり男性役を演じるように)やってもいいんじゃないかという気がした。

青白い中山雄斗さんに対して茶色い町田悠宇さん、金髪の藤村聖子さん、総じてこちらのキャストの方が好みだった。


上演時間1時間29分。