ミュージカル『ジェイミー』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ミュージカル『ジェイミー』

EVERYBODY'S TALKING ABOUT JAMIE
 

 
【東京公演】
2021年8月8日(日)〜29日(日)
東京建物Brillia HALL
 
音楽:ダン・ギレスピー・セルズ 作:トム・マックレー
日本版演出・振付:ジェフリー・ペイジ 翻訳・訳詞:福田響志
音楽監督:前嶋康明 美術:石原敬 照明:奥野友康 音響:山本浩一 映像:石田肇
衣裳:十川ヒロコ ヘアメイク:宮内宏明 歌唱指導:高城奈月子 演出補:元吉庸泰
稽古ピアノ:太田裕子 演出助手:河合範子 振付助手:鎌田真梨 舞台監督:幸光順平
宣伝美術:野寺尚子 宣伝写真:HIRO KIMURA 宣伝ポージング(ジェイミー):FUMIHITO
バルーン制作:家泉あづさ 宣伝衣裳:十川ヒロコ
宣伝ヘアメイク:沓掛倫雄(ジェイミー)、真知子、天野誠吾、高原優子
 
出演:
森崎ウィン(ジェイミー・ニュー)
安蘭けい(マーガレット・ニュー)
田村芽実(プリティ・パシャ)
保坂知寿(レイ)
石川禅(ヒューゴ・バタースビー/ロコシャネル)
今井清隆(ジェイミー父/サンドラ・ボロック)
樋口麻美(担任ミス・ヘッジ)
佐藤流司(ディーン・パクストン)
フランク莉奈(ベッカ)
鈴木瑛美子(ベックス)
伊藤かの子(ファティマ)
田野優花(ヴィッキー)
太田将熙(ミッキー)
川原一馬(サイード)
小西詠斗(サイ)
MAOTO(リーバイ)
吉野圭吾(トレイ・ソフィスティケイ)
永野亮比己(ライカ・バージン)
 
学生役SWING:
亀井照三
笹尾ヒロト
佐藤みなみ
山村菜海
 
STORY
主人公は16歳の高校生ジェイミー・ニュー。彼には一つの夢があった。それはドラァグクイーンになること。そして高校のプロムに本来の“自分らしい”服装で参加すること。母親から真っ赤なヒールをプレゼントされたことをきっかけに夢に向かって強く突き進む思いを抱いたジェイミーだが、学校や周囲の保護者たちは猛反対。ジェイミーの夢を理解できない父との確執や周囲からの差別など、多くの困難を乗り越えながら、自分らしさを貫くジェイミーの姿に勇気と感動、そして幸せをもらえる、最高にハッピーなミュージカル!【公式サイトより】

2017年、シェフィールド劇場で初演され、その後、ウエストエンドに進出したミュージカルの日本版。昨年の韓国版がレプリカ上演だったのに対し、日本版はオリジナルの演出。
 
主人公の夢がドラァグクイーンになること、ということで『キンキーブーツ』や『ビリー・エリオット』を連想する作品ではあるが、一人の少年が悩みながらも自分らしさを摑んでいくさまをしっかり描いていた。
終盤のプロムの夜のシーンで、ヒジャブ型ドレスを着たファティマとクラスメイトの女生徒がお互いのドレスを褒め合いつつ、自分じゃ着ないけどと言っていたのが、この作品の本質を表している気がする。つまり、自分と違うものを認め、価値観を押しつけ合わないこと。そうすれば世界はもっとよくなる。
 
ジェイミーの夢に対し、両親は正反対の反応を見せる。
母親マーガレットは、ドラァグクイーンになりたいというジェイミーを無条件に受け容れ、誕生日には赤いハイヒールをプレゼントしてやる。マーガレットの友人レイの存在も大きく、2人の前で生き生きとしているジェイミーを見ているだけでも涙腺が緩む。
一方、父親は8歳の頃にジェイミーが母親のドレスを着ているところを見て、酷い言葉をジェイミーに投げつける。現在では別居中なのだが、マーガレットが父親の振りをして誕生日カードを送ったり、ドレスの代金を払ってやったりする。
そのことがバレて、ジェイミーに暴言を吐かれた後にマーガレットが歌う"He's My Boy"が殊の外素晴らしい。全般を通じて安蘭けいさんがとてもよかった。

父親同様、ジェイミーがドラァグクイーンになりたいという夢を否定する存在としてクラスメイトのディーンがいるのだけど、これは彼の物語でもあるなと思っていたので、演出のジェフリー・ペイジさんがまずディーンのことを考えたと発言していたのには我が意を得たり。
そんなディーンに対し、ジェイミー同様に立ち向かうのがパキスタン系移民のプリティ。自身もマイノリティであるプリティとジェイミーの関係性がよく、彼女がジェイミーを励ますように歌う"It Means Beautiful"はタイトル通り美しい楽曲。
 
キャストは全般的によかった。
森崎ウィンさんは繊細さの中にも力強さを感じさせる歌声。表情も豊か。
一度生で見たかった田村芽実さんも期待通りで、ひとつ目の音から引き込む力が強い。
今回、この舞台を観ようと思ったきっかけが岡田育さんだったのだけど、岡田さんの推しである石川禅さんも存在感を発揮。Twitterなんかでは可愛らしい面を見せていたが、ロコシャネルとのギャップが凄まじい。もちろん歌声も。
クラスメイトたちの中で目を引いたのが田野優花さん(小柄な人に目が行きがちというのもあるけど。笑)。名前は何となく聞いたことあるなという程度だったのだけど、元AKB48なのね。
 
カーテンコールは撮影OK(開演前と休憩中も)。
 
アフターパーティトークは森崎ウィンさん、ジェイミー役Wキャストの髙橋颯さん、安蘭けいさんが登壇。更に来日中の日本版演出・振付のジェフリー・ペイジさんも特別に参加。
日本版演出をやることになったときのことを聞かれて"Why me?"(なんで僕か?)と答えていたのが面白かった。
 
上演時間2時間50分(一幕1時間22分、休憩18分、二幕1時間10分)。