マン・レイと女性たち | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

マン・レイと女性たち

MAN RAY AND THE WOMEN



【東京会場】
2021年7月13日(火)〜9月6日(月)
Bunkamuraザ・ミュージアム
 
アメリカとフランスで活躍した芸術家マン・レイ(1890-1976)さんの作品を、女性たちとの出会いをテーマに読み解く企画展。
「ニューヨーク(1890-1921)」、「パリ(1921-1940)」、「ハリウッド(1940-1951)」、そして「パリふたたび(1951-1976)」という4章構成で、17のパートに分かれる。その中でキキ・ド・モンパルナスさん、リー・ミラーさん、アディ・フィドランさん、最後の妻ジュリエット・ブラウナーさんといったマン・レイさんにとってのミューズたちには単独で1つのパートが与えられている。
 
マン・レイさんというと写真家のイメージが強かったが、本展では絵画やオブジェも多数展示。初期はダダイズムの作品を手がけていて、マルセル・デュシャンさんとも交流があったとか。《ローズ・セラヴィの肖像》という写真作品では、女装したデュシャンさんがモデル!
 
1924年にシュルレアリスムのメンバーとなってからは、トリスタン・ツァラ、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアール、アンドレ・ブルトン、マックス・エルンスト、パブロ・ピカソ、ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ(敬称略)といったシュルレアリストの肖像画を撮影。
 
パリで出逢ったキキ・ド・モンパルナスさんとは7年同棲。彼女をモデルにした《アングルのヴァイオリン》は代表作の1つ。マン・レイさんとの出逢い方も運命的。
 

その後、ミューズとなるのがリー・ミラーさん。とあるバーでマン・レイさんの前に現れ、「リー・ミラーといいます、あなたの新しい弟子です」と名乗ったというのがカッチョいい。

ソラリゼーションという手法で撮られたリー・ミラーさんの肖像。美しい…。
結局、結婚には至らず、別れた後に描かれたのが《天文台の時刻に―恋人たち》。

 

他にもレ・ザネ・フォル(狂騒の時代)と呼ばれた1920年代のパリ、モンパルナスの様子や当時のファッションが分かる写真(中には仮装した藤田嗣治さんが映り込んでいるスナップも)やパンフレット、ドレスなども展示。ココ・シャネルさんの肖像も。

 

1940年に入り、ニューヨークに戻ったマン・レイさんはその後、ハリウッドに向かい、最後の妻となるジュリエット・ブラウナーさんと出会う。マックス・エルンストさん夫妻とは合同結婚式も挙げ、終生つきあいは続いたとのこと。

ハリウッドでは女優の肖像写真も撮る一方で、自分の作品が理解されない孤独感を抱いていたマン・レイさんはふたたびパリへ。

 

最後のパートは「マン・レイとは誰だったか?」と題されているが、本名すら不確かだったマン・レイさんの生涯と作品群を一望できる展覧会だった。最後にもちろん、本展の図録を兼ねた監修の巖谷國士さんの著書『マン・レイと女性たち』を購入して満足満足。

ただ、本来ならオーディオガイドを唐組の藤井由紀さんと久保井研さんが担当していたのだけど、このコロナ禍のためになくなってしまったのが残念。どこかで公開してくれないかなぁ。