新国立劇場『反応工程』 | 新・法水堂

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新国立劇場

『反応工程』

REACTION PROCESS
 

 
2021年7月12日(月)〜25日(日)
新国立劇場小劇場
 
作:宮本研 演出:千葉哲也
美術:伊藤雅子 照明:中川隆一 音響:藤平美保子
衣裳:中村洋一 ヘアメイク:高村マドカ アクション:渥美博
方言指導:下川江那 演出助手:渡邊千穂 舞台監督:齋藤英明、清水浩志
 
出演:
平尾仁(反応工程職長・猿渡)
有福正志(責任工・荒尾)
八頭司悠友(見習工・矢部)
若杉宏二(徴用工・柳川)
高橋ひろし(現場担当係長・牟田)
内藤栄一(勤労課員・太宰)
天野はな(見張勤務、荒尾の娘・正枝)
久保田響介(動員学徒・田宮)
清水優(同・林)
奈良原大泰(同・影山)
河原翔太(同(中学生)・木戸)
田尻咲良(同(中学生)、田宮の妹・節子)
神農直隆(監督教官・清原)
神保良介(憲兵)
 
STORY
太平洋戦争の敗色濃い1945年8月、九州中部にある軍需指定工場。戦前は染料を製造するためだった工場も、今ではロケット砲の推進薬を作り出す"反応工程"の現場となっている。 田宮、林、影山らの動員学徒も配属され、日夜、古株の工員らと共に汗を流している。勝利を信じる田宮だったが、勤労課の職員である太宰に戦争の本質を説かれ、禁書となっている本を渡される。そんな中、影山に召集命令が下り......。【公式サイトより】

フルオーディション企画第2弾。
本来、昨年4月に上演予定だった作品の延期公演。
 
5階建ての工場の4階にある反応工程現場が舞台。
中央にテーブル、下手に五畳分の仮眠スペース。上手には機械装置が並び、窓は覆われている。下手側に下から昇ってくる階段、中央に下へと降りる階段。上手にも出入口があり、奥には上階への階段。柱には「生産増強」、梁には「火気厳禁」の文字(正字体にて)。
 
本作の初演は1958年。勤労動員を経験した宮本研さんが、「ゲロがはきたかった」という理由で書いた作品。
宮本研さんの作品は岸田戯曲賞受賞作『メカニズム作戦』の上演を観たことがあり(流山児祥さん演出)、その際に戯曲集も読んだのだけど、60年以上前の作品が決して古びていない。
本作も太平洋戦争末期から戦後すぐを描いているのだけど、現在の状況が重ね合わせて観てしまう(新型コロナのせいでよりその度合いが強まった)。歴史を学ぶことにも通じるけど、古い作品を上演する意義というのはこういうところにあるんだよなぁ。
戦後になり、窓ガラスを覆っていた板が取り払われ、光が射すようになるあたりは希望が感じられたけど、果たしていつになったら今の状況に光が射すのかねぇ。

キャストは若手中心で、もう一つ飛び抜けた個性が欲しかったところ。お目当ての天野はなさんもあまり目を引かなかった。 
 
上演時間2時間43分(一幕1時間24分、休憩20分、二幕59分)。