『その壁を砕け』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『その壁を砕け』

 

 

1959年日本映画 100分

監督:中平康

企画:大塚和 脚本:新藤兼人

撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 録音:橋本文雄 美術:千葉一彦

音楽:伊福部昭 編集:辻井正則 助監督:西村昭五郎 製作主任:林本博佳

出演:長門裕之(森山竜夫)、芦川いづみ(三郎の婚約者・道田とし江)、小高雄二(渡辺三郎)、渡辺美佐子(谷川家の長男の嫁・谷川咲子)、清水将夫(相生警察署署長)、芦田伸介(三郎の弁護士・鮫島卓次)、西村晃(刑事部長)、岸輝子(徳蔵の妻・谷川民子)、信欣三(裁判長)、伊達信(検事・滝川)、下條正巳(相生署の刑事A)、佐野浅夫(中古車センターの男)、大町文夫(医師)、梅野泰靖(愚連隊リーダー)、下元勉(相生署の刑事B)、横山運平(食堂の主人)、木浦佑三(谷川家次男・谷川芳吉)、神山繁(ヒゲ面の石工)、垂水悟郎(三郎の上司)、沢井杏介(富永清美)、浜村純(酒屋の主人)、高野由美(看護婦長)、峰品子(芳吉の妻・谷川美恵)、三崎千恵子(竜夫の母)、菊地靖子(看護婦)、潮京以子(酒屋の女将)、田中筆子(咲子の母)、松本染升(石工の親方)、鈴木瑞穂(主任検事)、弘松三郎(新潟署の刑事A)、杉幸彦(三郎の同僚)、日野道夫(食堂の主人)、大滝秀治(裁判官A)、小泉郁之助(村人)、青木富夫(相生署の警官)、長弘(警官)、神山勝(裁判官B)、紀原耕(相生署の看守)、久松晃(村人)、神戸瓢介(三郎の同僚)、峰三平(警官)、高野誠二郎(駐在)、木島一郎(食堂の客)、三原一夫(警官)、二木草之助(鉢木郵便局局長・谷川徳蔵)、柳瀬志郎(三郎の同僚・修理工)、玉村駿太郎(新潟署の刑事B)、近江大介(三郎の同僚・修理工)、水木京一(食堂の客)、柴田新(同)、林茂郎、瀬山孝司(愚連隊メンバー)、三笠謙(警官)、野呂圭介(愚連隊メンバー)、中西妙子、淡月梨花(看護婦)、伊藤周子(同)、漆沢政子(同)、角田真喜子(同)、鈴木多加子(中華食堂店員)、田中敬子(看護婦)

 

STORY

東京-新潟間の国道を吹っとばす一台のワゴン。運転している渡辺三郎は自動車修理工だが念願かなってワゴンを手に入れ、新潟で独立するため、いまそこへ向う途中。新潟には恋人のとし江が待っている。二人は結婚することになっていた。この日のために三郎は東京で、とし江は新潟で懸命に働いてきたのだ。幸福感にひたされ車を走らせる三郎は三国峠で一人の青年を便乗させた。青年は次の駅近くの雑木林で降りた。三郎は駅前広場に差しかかった。と、突然彼は警官に逮捕された。意味の判らぬ逮捕に怒り狂う三郎は刑事に押されて町の郵便局の奥座敷に連行された。部屋は血の海、二人の男女が頭を割られて倒れていた。女の方が顔を上げ、「こいつだ!」と三郎を物凄い形相で睨みつけた。三郎は起訴された。局長・谷川徳蔵を鉈で殺し、その妻・民子に重傷を負わせ十五万円を奪った疑いで。現場に指紋はなく、民子が「こいつだ!」と叫んだことは三郎を不利にした。捜査に活躍した土地の森山巡査は本署勤務に栄転した。が、署長だけは三郎を白と漠然と感じた。裁判は長岡で開かれた。新潟から駈けつけたとし江は長岡駅前の食堂で働きながら三郎を励ました。署長も友人の鮫島弁護士を紹介してくれた。裁判は証拠の発見と凶行時間の空白に争点が絞られた。一方、栄転した森山は刑事になったが、これを機会に結婚しようと考えた。対象は事件の被害者宅の嫁・未亡人の咲子だった。森山は実家へ帰ったという咲子を訪ね佐渡へ行った。が、咲子は、事件発生のころ裏山に働きに来ていた石工と結婚していた。森山は二人の結婚に何か釈然としないものを感ずるとともに三郎が真犯人ではないと感じた。翌日、被害者宅に寄り、何げなく裏の雑木林に行った森山は挙動不審の男を発見、尾行して上野まで来た。男は安ホテルに入ったが森山が踏込んでみると何者かに殺されていた。犯人として検挙された三人の愚連隊は、殺されたのは富永といい、彼が借金を返さないので怒り、殺した末に持っていた十五万円を強奪したと自白した。富永が持っていた十五万円は被害者宅から盗まれた金額と同じである。富永は事件当日、長岡競輪に来ていたことも判った。犯人は富永だったのか?しかし死人に口なし、きめ手は依然ない。が、裁判はやり直しとなり、事件当夜、犯人を目撃したという民子の証言は錯覚と分り、また隣の部屋で寝ていて犯人を見たという咲子も、そのとき裏の納屋で、夫となった石工と寝ていたことがわかった。三郎は晴天白日の身となった。とし江とワゴンに乗った三郎はフルスピードで新潟へ向った。【「KINENOTE」より】


本日は伊福部昭さん107回目の誕生日ということで音楽を担当した作品を鑑賞。

 

この作品は2004年の《中平康レトロスペクティブ》、2019年の《恋する女優 芦川いづみ》でそれぞれスクリーンで鑑賞していて、今回はアマプラを利用。ひと昔前はそういった特集上映でもなければ見ることのできなかった作品が手軽に見られるようになったものですなぁ。

 

それはさておき。3回目ともなると、展開は重々承知の上なのだけど、渡辺三郎が逮捕される理由がやっぱり弱いよなぁ。被害者の妻の証言だけだし、そもそも芦川いづみさんとの結婚を控えている人間がわざわざ東京から新潟へ来て殺人なんて犯すかよ!というのが最大のツッコミどころ。

ちなみに芦川いづみさんは『青春を返せ』では兄・長門裕之さんの無実を信じる妹を演じていて、その曇りのない汚れなき瞳がそういった役柄にぴったり。

渡辺美佐子さんは、そんなヒロインとは対照的に人生の酸いも甘いも噛み分けてきたような女性を好演。