『兵隊やくざ 殴り込み』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『兵隊やくざ 殴り込み』
 
 
1967年日本映画 89分
監督:田中徳三
企画:久保寺生郎  原作:有馬頼義  脚本:笠原良三、東条正年
撮影:武田千吉郎  録音:奥村雅弘  照明:伊藤貞一  美術:下石坂成典
音楽:鏑木創  編集:山田弘  助監督:勝呂敦彦  製作主任:吉岡徹
 
出演:勝新太郎(大宮貴三郎一等兵)、田村高廣(有田上等兵)、野川由美子(明美)、岩崎加根子(女郎・さつき)、細川俊之(香月少尉)、南道郎(赤池曹長)、安部徹(副官・影沼少佐)、小松方正(滝島准尉)、丸井太郎(黒磯一等兵)、三木本賀代(女郎・夕子)、稲葉義男(連隊長・大淵大佐)、守田学[守田学哉](班長・犬飼軍曹)、戸田皓久(隊長・柴口大尉)、水島真哉(水巻一等兵)、水原浩一(あけぼの楼主人・金村)、伊達三郎(分隊長・染谷伍長)、橋本力(営倉看守の兵隊)、小林直美(満人の若い妻)、近江輝子(やり手婆さん)、堀北幸夫(暗号兵)、越川一、沖時男、浜田雄史、勝村淳、岩田正、福井隆次、志賀明、山岡鋭二郎、薮内武司、黒木現、西岡弘善、森内一夫、上原寛二、暁新二郎、戸村昌子、谷口和子、三藤頼枝、久本延子、東山照代
 
STORY
激戦の度を増す大陸の最前線で、友情から堅く結ばれた有田上等兵と無鉄砲で女好きの大宮一等兵の二人は、悪徳上官に盾ついて過酷な制裁を受けながらも、その正義一徹ぶりに上官をけむたがらせていた。二人はそんな中で連隊旗手の香月少尉の毅然とした態度に好感を持った。香月も軍旗祭の相撲大会で赤池曹長によって不利な判定を受けた大宮を助けるなど、何かと二人の味方になるのだった。ある日、大宮と有田は女郎屋でインテリ娼婦さつきの口から赤池や影沼少佐の一派が女郎屋で私腹を肥やしていることを知ったが、有田が暗号教育の名目で滝島准尉から転属を命ぜられ、大宮一人ではその調査は出来なかった。そんなとき大宮は、稼ぎが悪いと赤池にヤキを入れられているさつきを助けたことから上官暴行罪で営倉にぶち込まれてしまった。しかも、上官影沼の女明美といい仲になって重営倉に移される有様。そんなうちに香月の尽力で有田が原隊に復帰してきた。有田は事情を知り、軍の機密を握る暗号兵の特権を利用して、影沼一派が二重帳簿で軍票をごまかしていることをつきとめた。それをネタに影沼一派を脅した有田は大宮を営倉から救い出したのである。やがて、戦況が逼迫し、香月隊は全滅した。香月は軍旗の奪還を大宮に託して息をひきとった。大宮はクソ度胸で敵陣に潜入し、無事軍旗を奪還するという大殊勲をたてて戻ってきたが、彼を迎えた有田は、戦争が終ったことを告げた。それを聞いた大宮は有田と共に副官室に乗り込み、逃げ仕度に懸命な影沼たちに痛快な鉄拳制裁を加えると、軍にサヨナラして大陸の彼方に駆け去って行った。【「KINENOTE」より】

『兵隊やくざ』シリーズ第7弾。
 
いよいよ終戦を迎えることになる本作。シリーズの中では成功している部類だと思う。
ろくでもない上官たちや戦地で生きる女性たちといった要素はいつもと同じだが、戦闘シーンもしっかり描かれ、銃弾の中、流れ弾に当たった母親のために赤ん坊を助けるあたり、いつになく大宮のヒロイズムが溢れる。
また、本作で重要な役割を果たすのが軍旗。序盤で軍旗室の前で水巻に手紙を読んでもらっていた大宮が香月少尉に叱責されるシーンがあるが、最後には大宮が香月隊の軍旗を奪還するために活躍する。ただこの軍旗、周辺だけ残っていてボロボロの状態で、こんなもののを後生大事に守ってきたのかと馬鹿らしくもなってくる(大宮はそれを抱えて先頭を歩くことを志願する)。
ヒロイズムの一方でこういった戦争の愚かさを描くバランスのよさが光っていた。
 
大宮と有田の相思相愛ぶりは相変わらず。
最後に再会して大宮が有田に抱きつくシーンなんてキスしそうな勢いだし。笑
ただ本作、大宮は香月少尉にもちょっと入れ込んでいて、これはもう浮気よね。
有田がそれに嫉妬して三角関係になったら面白かったのに(もはや主旨が違っている)。
「日本が負けたからって俺たちが負けたわけじゃねぇ」と仲間たちにいう大宮に対し、有田が「これからはな、お前が俺の上官だ」という最後のくだりもいいねぇ。
 
キャストでは野川由美子さんの大宮を誘うような表情がたまらない。
シリーズ中、最も記憶に残るヒロインと言っていいだろう。
香月少尉役の細川俊之さんはこの頃から既に渋かった。