『兵隊やくざ大脱走』(田中徳三監督) | 新・法水堂

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『兵隊やくざ大脱走』
 
 
1966年日本映画 88分
監督:田中徳三
企画:久保寺生郎
原作:有馬頼義 脚本:舟橋和郎
撮影:武田千吉郎 録音:大角正夫
照明:古谷賢次 美術:内藤昭
音楽:鏑木創 編集:山田弘
助監督:遠藤力雄 製作主任:吉岡徹
 
出演:
勝新太郎(大宮貴三郎二等兵)
田村高廣(有田上等兵)
安田道代[大楠道代](笹原弥生)
成田三樹夫(青柳)
南都雄二(弥生の父・笹原)
芦屋雁之助(当番兵一)
芦屋小雁(当番兵二)
五味龍太郎(黒沼軍曹)
北城寿太郎(木部准尉)
千波丈太郎(野辺地軍曹)
内田朝雄(柳田大尉)
仲村隆(朝倉中尉)
藤山浩二(長谷上等兵)
寺島雄作(開拓団の男)
伊達三郎(川部上等兵)
橋本力(村上一等兵)
木村玄(佐伯伍長)
堀北幸夫(高木伍長)
平泉征[平泉成](清島見習士官)
浜田雄史(下士官)、志賀明(後藤一等兵)、勝村淳(佐藤兵長)、薮内武司(石坂一等兵)、伴勇太郎(早川上等兵)、戸村昌子(避難民の女)、小柳圭子(母親)、山岡鋭二郎(兵A)、黒木英男(兵B)、渡辺満男、大林一夫(兵D)、上原寛二(片岡上等兵)、松田剛武(歩哨)、森内一夫、竹内春義(室井上等兵)
 
STORY
太平洋戦争も戦局は日本にとって決定的に不利で、終戦は目前だった。北満の国境を固める朝倉部隊もソ連の大軍を迎えて玉砕の覚悟を決めていたが、そんな時も時、この部隊に転属してきたのが大宮二等兵と有田上等兵である。玉砕する気持ちなどさらさらない二人は、古兵や下士官との間にいざこざを起しながらソ連軍の攻撃を待っていたが、ある夜、大宮は慰問団とはぐれた親娘、笹原と弥生を助けた。女に飢えている兵隊たちは弥生に貪欲な目を向けたが、女好きの大宮も例外ではなく、有田は一悶着起りそうだと予感した。案の定、狡猾な手段で弥生を手篭にしようとした木部准尉、黒沼、野辺地軍曹を、大宮はさんざん叩きのめしたが、翌日、木部たちのリンチにあって大宮は危うく殺されそうになった。そんな大宮に弥生は身体を許してもいいと言うが、何故か大宮は抱けなかった。有田がからかうと、大宮は弥生が初恋の女に似ていると言う。やがて笹原親娘を護送して神武屯へ行った大宮が帰ってみると朝倉部隊は全滅していた。有田だけが奇蹟的に生きていて、二人は将校に化けると柳田部隊にもぐり込んだ。そこでも玉砕気分が漲っていたが、初めて部下を持った大宮は玉砕よりは昼寝の方がましだというので、兵隊たちの間で人気がある。そんな大宮も開拓団の女子供がゲリラに囲まれていると知ってトラック一台を強引に借り出すと有田と共に救出に向った。その中には歩兵に化けた青柳憲兵軍曹がいて、大宮の邪魔をするが、青柳も大宮の義侠心に負けて、二人の間に初めて友情らしいものが芽生えた。やがて避難民を連れて馬廠に向う強行軍が始まった。途中ゲリラの襲撃にあって射たれた青柳は、大宮と有田に笑顔を見せて死んでいったが、目ざす馬廠は間もなくである。【「KINENOTE」より】

『兵隊やくざ』シリーズ第5弾。
 
本作は前半の朝倉部隊のパートと後半の柳田部隊および開拓団のパートに分かれる。それぞれ安田道代[現・大楠道代]さんと成田三樹夫さんがゲストという分かりやすい構成。

まず前半は安田道代さん(ちなみに彼女自身、戦後すぐに天津で生まれているんですな)扮する弥生が敵に襲われないようにと顔を汚し、男の格好をして父親とともに助けを求めに来るところから始まる。
ここで木部准尉は父親に日本に帰れるようにしてやるから娘を差し出せという、品性下劣な要求。本能の赴くままに行動する大宮も当然のように夜這いをかけるわけだけど、目的は同じでも手段が異なるのよねぇ、両者は。
父親に扮した南都雄二さんもいい感じ。

後半では大宮・有田が将校に扮して柳田部隊に合流するというコミカルな展開。大宮が東大卒だなどと言い出し、清島見習士官(平泉成さん若い!)などから色々と質問されて有田が肝を冷やす。芦屋雁之助さん・小雁さん兄弟は『続 兵隊やくざ』 の時とは別人の役のようで。
終盤、成田三樹夫さん扮する元憲兵・青柳が再登場。やっぱり成田さんが出てくると作品の質自体が上がりますな。最期までかっちょいい。