PARCO PRODUCE 2021『藪原検校』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

PARCO PRODUCE 2021

『藪原検校』
YABUHARA KENGYO
 
 
【東京公演】
2021年2月10日(水)~3月7日(日)
PARCO劇場
 
作:井上ひさし  演出:杉原邦生
音楽・演奏:益田トッシュ
美術:田中敏恵  照明:原田保  音響:星野大輔
衣裳・宣伝衣裳:西原梨恵  ヘアメイク・宣伝ヘアメイク:河村陽子
振付・ステージング:尾上菊之丞  ドラマトゥルク:稲垣貴俊
演出助手:城野健  舞台監督:松下清永
宣伝美術:東學  宣伝写真:渞忠之  宣伝:DIPPS PLANET
制作:大迫彩美、徳永のぞみ  ラインプロデューサー:冨士田卓
プロデューサー:尾形真由美  製作:井上肇
 
出演:
市川猿之助(杉の市、後の二代目藪原検校/斬首役人)
松雪泰子(お市/座頭/越後屋手代)
川平慈英(語り手役の盲太夫)
三宅健(座頭/杉の市の父・魚売りの七兵衛/佐久間検校の結解/とっかえべい屋/塙保己市/安房の市/定廻同心・浅野某)
宮地雅子(座頭/七兵衛の女房・お志保/日本橋の橋番)
みのすけ(座頭/仙台座頭・熊の市/男(お志保の情夫)/魚市場の仲買人/甲斐の市/将軍補佐役・松平定信)
佐藤誓(座頭/塩釜座頭・琴の市/水戸東照宮の宮侍/馬具屋/刀研ぎ師・善兵衛/凶状持ちの倉吉)
髙橋洋(座頭/佐久間検校/日本橋下の魚売り/伊豆の市/若い座頭/初代藪原検校)
松永玲子(座頭/相対死(しんじゅう)の片われ女/強請られる寡婦)
立花香織(座頭/魚市場の仲買人/寡婦の娘)
 
STORY
とある按摩・盲太夫が語る、稀代の悪党の一代記……。江戸時代の中頃、日本三景の一つ・松島は塩釜の漁港に一人の男児が生まれた。親の因果が子に報い……を地でいくこの子は、生まれた時から目が見えない。盲目の身に生きる術を得るべく塩釜の座頭・琴の市に預けられ、もらった名前が杉の市。父ゆずりの曲がった性根と母ゆずりの醜さ。有難くもない天賦のためか、杉の市は殺しと欲にまみれた栄華への道を上り始める……。【公式サイトより】

1973年、「西武劇場オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として初演された作品を《PARCO劇場オープニング・シリーズ》として上演。
 
背景は近代的なビルの裏側。壁はグラフィティアートで埋め尽くされている。
工事現場にある「安全第一」のバリケードなども。宙には綱が張られ、開演すると床にも綱が縦横に張られてアクティングスペースとして区切られる。
ギター演奏および語り手は上手が定位置。
 
藪原検校というタイトルではあるが、実際に藪原検校となるのは割と終盤。
父親が座頭の熊の市を殺した因果か、生まれつき目が見えなかった杉の市。佐久間検校の結解(秘書役)を殺めたのに始まり、母親をはずみで殺し、師匠・琴の市をその妻・お市に殺させようとしたところ相討ちとなり……と周りで人が死んでいく一方、杉の市は出世していく。
主人公はリチャード三世ばりに見た目は醜悪な稀代の悪党ではあるが、ギター演奏を交えた歌を取り入れてあくまでエンターテインメントとして昇華(初演では井上ひさしさんの実兄・滋さんが演奏を担当)。と同時に障碍者を差別する人間の醜さをも描き出していたが、盲の中にも歴然たる序列があるのが皮肉よのう。
 
市川猿之助さんはアクの強い演技でまさにTHE猿之助ショー。
途中、刀研ぎ師に名前を聞かれて「市川猿之助」と答え、「贔屓の役者の名前だ」と冗談めかすシーンがあったけど、市川猿之助の名跡は明治からなので江戸時代にはなかったみたいね(一応調べた。笑)。
斬首役人を猿之助さん自身が演じるという演出もトリッキーでよかった(2007年の蜷川版、2012年の栗山版ではいずれも塙保己市役の役者が演じていた)。
 
語り手を務める川平慈英さんは全体的には悪くなかったし、歌声もさすがだったんだけど、主人公の名前が「やばらけんぎょう」と聞こえてしまったのがマイナス。
 
上演時間3時間7分(一幕1時間28分、休憩20分、二幕1時間19分)。