『女は二度生まれる』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『女は二度生まれる』

 

 

1961年日本映画 99分

脚本・監督:川島雄三(東宝)  脚本:井手俊郎(東宝)

企画:川崎治雄  原作:富田常雄「小えん日記」より 講談社版

撮影:村井博  録音:長谷川光雄  照明:渡辺長治

美術:井上章  衣裳考証:三田村環
音楽:池野成  編集:中静達治  助監督:湯浅憲明  製作主任:大岡弘光

現像:東京現像所  衣裳提供:京都 白壽苑、十日町セキヨシ

 

出演:若尾文子(小えん・磯部友子)、フランキー堺〔東宝〕(大葉寿司板前・野崎文夫)、藤巻潤(大学生・牧純一郎)、山村聰(建築家・筒井清正)、菅原通済〔特別出演〕(島崎専務)、山茶花究(矢島賢造)、江波杏子(大学生・山脇里子)、高野通子(清正の娘・筒井敏子)、潮万太郎(大工頭・桜田)、倉田マユミ(芸者・吟子)、上田吉二郎(猪谷先生)、村田知栄子(置屋の女将・お勢)、八潮悠子(芸者・桃千代)、山内敬子(芸者・とき哉)、仁木多鶴子(野崎の妻)、花井弘子(矢の字)、紺野ユカ(島崎の愛人・木村信子)、目黒幸子(芸者・小吉)、村田扶実子(仲居・お高)、山岡久乃(清正の妻・筒井圭子)、穂高のり子(矢島の知人・園子)、平井岐代子(寿美吉)、耕田久鯉子(佐助)、三保まりこ(お手伝い・鶴子)、中條静夫[中条静夫](大葉寿司板前・田中)、村井千恵子(和子)、中田勉(呉服屋)、竹里光子(戸むらの女中)、山中和子(芸者・君代)、大山健二(部長)、酒井三郎(アパート管理人)、高見国一[高見國一](少年工・泉山孝平)

 

STORY

靖国神社の太鼓の音がきこえる花街。芸者小えんは建築家の筒井の胸にいだかれていた。「お名刺いただけません、だってもしもって時いい訳が利かないんですもの、恋人の名前も知らないんじゃ」。売春禁止法も彼女にとってはなんの拘束も感じさせなかった。ともかく、毎日がけっこう楽しかった。そんな彼女にも心をときめかすことがあった。それはお風呂屋への行きかえりに顔を合わせる大学生牧純一郎に行きあう時であった。しかし彼女の毎日は、相かわらず男から男へと、ただ寝ることだけの生活だった。そんな時知りあった寿司屋の板前、野崎にふと触れあうものを感じ、おトリさまに一緒に行き商売を離れて泊ったりした。その一方、彼女は遊び人の矢島と箱根に遠出したりした。その帰りはじめて牧と口をきいたが、大学を出た彼はよそに行くとのことで彼女は淋しかった。そんなある日、彼女のいた置屋の売春がばれて営業停止になった。彼女は芸者仲間だった桃千代に誘われるまま、銀座のバーに勤め、そこで筒井に再会、勧められ二号となった。そこでも彼女はかわいい女だった。ロードショー劇場であった少年工・孝平をかわいがって筒井を怒らせたりした。しかし、筒井が病にたおれると本妻の目を盗んで懸命に看病したりもした。その頃、野崎が将来のことを考え、子供まである女のところに入婿に行ったことを知った。そして一時小康をたもった筒井が死ぬと写真を飾り、喪服を着て嘆いた。彼女はふたたび座敷に出て牧に再会したが、彼が外国人客の接待を頼んだのを知って絶望した。街にさまよいでた彼女はいつかの少年工に会った。少年が山に行きたいのを知って、故郷へ行ってみようと思った。その途中、電車で妻子ともに幸福そうな野崎にばったり出会った。彼女から金をもらって元気に山に出かける少年を見送り、故郷へ行く決心をした彼女の目には新しい人生を生きていこうという生きがいのようなものが見られた。【「KINENOTE」より】


川島雄三監督、初の大映作品。

 

若尾文子さんが芸者役というザ・適役な本作。

フランキー堺さんはポスターにも写真が使われているが、さほど出番が多いわけではなく、小さんの本命は山村聰さん扮する一級建築士・筒井清正(後に若尾さんが黒田紀章さんと結婚するのも奇遇ですなぁ)。

寿司屋の板前・野崎の他、大学生の牧や遊び人の矢島、少年工の孝平など職業も年齢も様々な男性が登場するものの、筒井が亡くなった後の憔悴ぶりを見れば彼女の本気具合が分かろうというもの。

本妻との対決もなかなかの見ものだった(本妻役・山岡久乃さんより娘役・高野通子さんの方がクレジットが先なのが解せん)。

 

余談ながら、筒井の二号となって暮らし始めたアパートの隣人が江波杏子さん扮する大学生・里子なのだけど、彼女が小さんにペッティングという言葉について教えるのが面白い。当時はまだ浸透していなかったのね。笑

あと、靖国神社も出てくるのだけど、脚や腕のない人が普通に映し出されていて、さりげないながらもこういう場面をしっかり捉えているところがさすが川島雄三監督。