『マルモイ ことばあつめ』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『マルモイ ことばあつめ』
말모이

 


 

2019年韓国映画 135分

脚本・監督:オム・ユナ
撮影:チェ・ヨンファン  照明:キム・ホソン  編集:キム・サンボム

美術:チェ・ギョンソン、アン・ジヘ  音楽:チョ・ヨンウク
出演:ユ・ヘジン(雑用係キム・パンス)、ユン・ゲサン(朝鮮語学会代表リュ・ジョンファン)、キム・ホンパ(朝鮮語学会チョ・ガビュン先生)、ウ・ヒョン(パンスの友人イム・ドンイク)、キム・テフン(朝鮮語学会・記者パク・フン)、キム・ソニョン(朝鮮語学会ク・ジャヨン)、ミン・ジヌン(同ミン・ウチョル)、ソン・ヨンチャン(ジョンファンの父リュ・ワンテク)、ホ・ソンテ(上田)、イ・ソンウク(チャン・チュンサム)、チョ・ヒョンチョル(パク・ポンドゥ)、チョ・ヒョンド(パンスの息子キム・ドクジン)、パク・イェナ(パンスの娘キム・スニ)、イ・ジョンウン[友情出演](済州島教師)、チェ・グィファ[友情出演](本屋郵便配達人)、ユン・ギョンホ[友情出演](メガネ店社長)、ユ・ウンミ[友情出演](中学生のスニ)、イェ・スジョン[特別出演](チョ・ガビュンの妻)、ユ・ジェミョン[特別出演](キム・ドゥボン)、キム・ドンヨン[特別出演](成人したドクジン)

 

STORY

1940年代・京城(日本統治時代のソウル)。名門中学校に通うドクジンと幼いスニを育てる男やもめのパンス。ある日、勤め先の劇場をクビになった彼は、息子の学費を工面しようと朝鮮語学会代表ジョンファンのバッグを盗むが失敗に終わる……。一方、裕福な家庭の息子・ジョンファンは、失われていく朝鮮語を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆる“ことば”を集めていた。民族の精神である言葉を守ることが国を守る道であると信じる彼は、親日派である父の言動を恥じていた。そんな折、パンスは刑務所で同房だった朝鮮語学会のチョ先生の紹介で、プライドを捨てて朝鮮語学会で雑用係として働くことになる。彼は学校に通ったことがなく、母国語である朝鮮語の読み方や書き方すら知らなかった。しかし、40を過ぎて初めて文字を学び、ジョンファンの辞書作りを通して、母国の言葉の大切さを理解していく……。【「KINENOTE」より】


『タクシー運転手 約束は海を越えて』の脚本家オム・ユナさんの初監督作品。

 

朝鮮語の辞書作りということで、韓国版『舟を編む』などという紹介のされ方もしていた本作だが、朝鮮語学会事件という史実を基に禁止されていた朝鮮語を守るべく辞書作りに取り組み人々を描いているという点でかなり性質は異なる。個人的にはむしろ、朝鮮語で詩を書き続けて福岡刑務所で獄中死した尹東柱(ユン・ドンジュン)さんと共通するものを感じた。

しかし、全国の方言まで集めていたとはすごいなぁ。まったく届いていないと思っていた全国から寄せられていた手紙が逓信局に山のようにあったり、劇場で秘密裡に行われていた総会に人々が押し寄せたり、当時の朝鮮人の“ウリマル”に対する想いが伝わってきた。

 

朝鮮語学会の面々は恐らくフィクション部分も多いと思うが、片や文盲のパンス、片やインテリのジョンファンという好対照のコンビが物語の中軸を担う。この辺りは現在観ている『兵隊やくざ』シリーズなどを持ち出すまでもなく鉄板の人物設定。

パンスに関しては父親としての面も描かれ、特にスニちゃんが可愛すぎて癒しとなっていた。

パンス自身は悲劇的な結末をたどるが、彼がたどたどしい筆跡で書いた手紙は泣くよね…。