FUKAIPRODUCE羽衣 第25回公演
『スモール アニマル キッス キッス』
【東京公演】
2020年8月28日(金)~9月7日(月)
吉祥寺シアター
作・演出・音楽・美術:糸井幸之介 プロデュース:深井順子
振付:木皮成(DE PAY'S MAN)、根本和歌菜
照明:中山奈美 音響:佐藤こうじ(Sugar Sound) 舞台監督:安田美知子
衣裳:小松陽佳留 ヘアメイク:梶田キョウコ(レサンクサンス)
宣伝美術:土谷朋子(citron works)
宣伝写真:金子愛帆/渡辺斗紀(佐々木)、日髙啓介(日髙)
WEBデザイン:斎藤拓 記録写真:金子愛帆 映像:彩高堂
制作:坂田厚子、大石丈太郎、芳野広太郎
出演:
深井順子
日髙啓介
鯉和鮎美
澤田慎司
キムユス
新部聖子
岡本陽介
浅川千絵
田島冴香
松本由花
平井寛人(以上、FUKAIPRODUCE羽衣)
緒方壮哉(libido:)
岩田里都(シラカン)
村田天翔
佐々木由茉
STORY
無人島に一人でいる。けれど、どうやらこの広い海には、他にも一人で無人島にいる人が結構いるらしい。宇宙の歴史や大きさに比べたら、動物の、人間の歴史や大きさはほんのちょっと、みんなヤング、みんなスモール。倦怠や諦念で覆われた人間も、中年も、老人だって、一皮剥けばキュートな小動物みたいなもの。人間の業を、カワイイ~と小動物をめでる心で鎮める“妙ージカル”。【公演チラシより】
FUKAIPRODUCE羽衣、昨年6月『ピロートーキングブルース』以来の本公演。
天井からは形も大きさも様々な水筒がぶら下げられている。
開演前からキャストが舞台上に出てきて円形のビニールプールをそれぞれ膨らませ始める。
膨らませ終わると、そこに入って体を丸めて横たわる。あたかもそこは母親の胎内。
本作はいくつかのエピソードが積み重ねられていくオムニバス形式。
最初はプロローグ的な位置づけで、離れ離れにいる男女が恋に落ちる。お互いに名前を尋ねるが、風にかき消されて聞こえない(2人以外は寝転がったまま、歌に合わせて時折手を伸ばす振付)。
摑みはOKとばかりに、続いて全員が参加しての「スモール アニマル キッス キッス」。
いやこれがもう本当に素晴らしい。
今回、歌も台詞もリップシンクという試み(飛沫感染対策も兼ねて…なのかな)なのだが、そんなことを微塵も感じさせないほどの一体感とライブ感、そして高揚感。
続いて2歳の男の子ヨシオの世話をするパパ。
ママは昼間に男と出て行ったらしい。保育園では3人の保育士がお相手。
一方、出て行ったママはヨシオ会いたさに戻ってくるが…。
ところ変わってロンドン。雨が降っても傘は差さないハンドクラップマン。
親友とライブハウス“ブラッディメアリー”の前で待ち合わせたはずが、時間になっても現れない。場所を間違えたかと思ってイギリスを飛び出し、ヨーロッパ、更にはインドにまで親友を捜しに行く。
とあるリゾート地でバイトを始めた大学生。
1杯2700円のテキーラサンセットをお替わりし、チップもくれる女性に心惹かれる。
大学生が飲み物をこぼし、クリーニング代3万円を要求された時もスッと肩代わり。
大学生はお礼にラーメンをごちそうし、花火大会へ。
花火をビニールプールで表現しているのが面白かった。
その後、魚釣りをする男、アネネ島とイモモ島、検品マスク、日髙(啓介)さんとりっちゃん(岩田里都さん)、悪魔と呼ばれた海賊、令和ダンシングクラブ……などのエピソードがあった後、冒頭の2人のシーンに。ここが謂わばエピローグで、最後は「今行くよー!」と恐らく生声で叫びながら近づいていく。
全篇を通して伝わってくるのは、この世に生まれてきたことに対する喜び。
最後の方で、キャストが全員揃ってビニールプールの中で蛙のように高く跳び続けるシーンがあるのだが、ここを一つとっても生命感に溢れている。更には天井から吊るされた水筒が星のようで、少し大袈裟なようだが、宇宙に存在していることを実感させられた。
上演時間約1時間53分。