トライストーン・パブリッシング『少女仮面』 | 新・法水堂

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トライストーン・パブリッシング

『少女仮面』
 
 
2020年1月24日(金)~2月9日(日)
シアタートラム
 
作:唐十郎  演出+美術:杉原邦生(KUNIO)
 
照明:齋藤茂男  音楽:国広和毅  音響:鈴木三枝子
衣裳:山下和美  ヘアメイク:小林雄美  振付:白神ももこ
ドラマトゥルク:稲垣貴俊  演出助手:神野真理亜  舞台監督:田中政秀
制作:米田基(style office)  制作助手:山根容子(style office)  票券:熊谷由子
プロデューサー:佐藤政治、安部菜穂子、鳥居紀彦、笛木園子[fuetree]
エグゼクティブプロデューサー:山本又一朗
 
出演:
若村麻由美(春日野八千代)
木﨑ゆりあ(少女貝)
大西多摩恵(老婆)
大堀こういち(ボーイ主任)
武谷公雄(腹話術師)
井澤勇貴(ボーイ1/甘粕大尉)
水瀬慧人(ボーイ2/看護婦)
田中佑弥(水道飲みの男)
森田真和(腹話術の人形)
 
STORY
宝塚歌劇団に入りたい少女・貝が老婆と共に訪れたのは、宝塚の伝説的スター・春日野八千代が経営する地下喫茶店《肉体》。そこには、腹話術師と人形の客、水道の水を何度も飲みに来る男、タップダンスを踊る二人のボーイと暴力的なボーイ主任といった、一風変わった人々がいた。そして『嵐が丘』のヒースクリッフになりきった春日野が現れる。【パンフレットより】

唐十郎さんの岸田國士戯曲賞受賞作を杉原邦生さんが演出。
 
唐さんが初めて外部のために書いた作品で、鈴木忠志さん率いる早稲田小劇場による初演は1968年。ちなみにその時、春日野八千代を演じたのが白石加代子さん。
その後、唐さん自身の演出で状況劇場でも上演されていて、PARCO劇場や新宿梁山泊なんかも手掛けているのだが、私が本作の上演を観るのはこれが初めて。
 
開場し、客席に入ってまず驚いたのが舞台上。
作業の途中のような状態で機材などが雑然と置かれていて、開演5分前ぐらいでスタッフらしき人々が現れて作業を再開。舞台上が次第に片付けられ、開演時間きっかりに上演開始。
 
初演から51年経っているが、一向に古びていない現代性を持ち合わせている。
確かに春日野八千代という実在の宝塚スタアは今ではほとんど馴染みがないし(私も本作で初めて知った)、甘粕大尉や満州と聞いてもピンと来ない人も増えているのかもしれない。しかし、唐さんが描いているのは史実ではなく、あくまで春日野八千代はモチーフに過ぎない。唐さんの想像力溢れる自由闊達な筆運びの前では固有名詞など些細な問題で、だからこそ半世紀もの長い時間を生き延びてこられたのだろう。
本作のテーマは「肉体」だが、肉体が滅びても残る。そんな強靭さを感じる作品だった。
 
主演の若村麻由美さんは30分ほどして、客席後方から登場。
背中に大量の羽根をつけたいかにも宝塚男役!といった衣裳で実にハマっていて、その場を一気にかっさらっていく。
そんな春日野八千代に憧れる少女・貝を演じたのが元SKE48の木﨑ゆりあさん。
今回、初めて唐さんの名前を知ったそうだけど、ここまで器用な演技が出来る人とは思っていなかった。
その他の登場人物も負けず劣らず個性的なのだが、『グリークス』でも印象に残っていた森田真和さんが秘密兵器的に投入されていたのが嬉しかった。ここまで腹話術の人形が似合う人も珍しい。笑
 
今年は本作と月船さららさん主宰のmétro、そして天野天街さん演出の糸あやとり人形一糸座と3つの『少女仮面』が上演されるのだけど、トップバッターの仕上がりは上々で、残る2団体にも期待が膨らむ。
 
上演時間約1時間40分。