鵺的『悪魔を汚せ【再演】』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

鵺的 旗揚げ十周年記念公演

『悪魔を汚せ【再演】』

 

 

2019年9月5日(木)~18日(水)

サンモールスタジオ

 

作:高木登(鵺的)  演出:寺十吾(tsumazuki no ishi)

 

舞台監督:田中翼、鳥巣真理子
演出助手:中山朋文(theater 045 syndicate)
文芸協力:中田顕史郎  照明:千田実(CHIDA OFFICE)
音楽:坂本弘道  音響:岩野直人(STAGE OFFICE)
舞台美術:袴田長武+鴉屋  衣装協力:上岡紘子
宣伝美術:詩森ろば(serial number)
宣伝美術写真撮影:橋本恵一郞
宣伝美術ヘアメイクディレクション:るう(ROCCA WORKS)

宣伝美術衣装協力:木下祐子

 

出演:

祁答院雄貴[アクトレインクラブ](春野の長男・美樹本謙人)

秋月三佳(長女・美樹本一季(いつき))

福永マリカ(次女・美樹本左季)

水町レイコ(美樹本家の長女・美樹本春野)

釈八子(春野の夫・美樹本大助(専務))

斉藤悠[アクトレインクラブ](長男・美樹本夏彦)

高橋恭子[チタキヨ](夏彦の妻・美樹本笙子)

秋澤弥里(次女・美樹本秋良)

杉木隆幸[ECHOES](秋良の夫・美樹本保雄)
奥野亮子[鵺的](三女(腹違い)・美樹本冬子)
池田ヒトシ(美樹本製薬総務部長・御子柴徹)

 

美樹本謙人は美樹本製薬創業者一族の家に生まれ、大学を中退してからはニート状態。謙人の母・春野には夏彦、秋良、冬子と三人の弟妹がいたが、腹違いの冬子は家を出ていた。そんな美樹本家の庭に猫の死骸が置かれていたり、奇妙な文字の書かれた紙で包まれた石が投げ込まれたりする。春野は夏彦の妻・笙子がやったと決めつけるが、夏彦や秋良の夫・保雄らは謙人と下の妹・佐季の仕業を疑う。上の妹・一季は二人を嫌悪しつつもかばいだてする。そんな折、創業者の清造が死去。総務部長の御子柴は会社に送られてきた怪文書の存在を明かし、美樹本家の人間関係にも歪が生じる。


3年前に初演された作品の再演。

舞台は高級住宅街にある美樹本家の庭に面した和室。

 

家族が嫌いだという謙人によって一家の紹介がされた後、「人を傷つけずには生きていけない、哀れな人間たちの姿を見せつけて、皆さん(観客)が傷つくところがみたい」という宣言通り、人間の醜い側面がこれでもかこれでもかと突きつけてくる。

 

美樹本家の中でも謙人の妹で高校生の佐季は家族を、大人たちを、世間を見下したナメた態度を取り、姉・一季のことも善良だとからかうなど、なかなか質(たち)が悪い。

また、その母・春野にしても製薬会社の創業者一家というプライドばかりは立派で、自分たちは間違わないと盲信する姿は滑稽ですらある(ところで、夏彦がいるんだから、春野と秋良が婿を取る必要なくないか?笑)。

 

そんな美樹本家に変化が訪れるきっかけとなったのが清造の死。

特に保雄がそれまで溜め込んでいたものをぶちまけ、妻・秋良と義姉・春野に暴力を振るうシーンは凄まじい。

家を出ていた冬子が登場し、清造と一家にまつわる様々な事柄が明らかになるにつれ、物語は更に醜悪なエンディングへと向かう。

パンフレットによれば、この形での再演はもうないとのことだが、美樹本家の姉妹対決の行方を続篇として書いて欲しいなぁ。

 

祁答院雄貴さんは冒頭の長台詞という重責を果たし、しっかり物語世界へと誘ってくれる。

福永マリカさんは堂々たる悪女っぷり。まだまだ高校生役、いけまっせ。笑

対する秋月三佳さん、最後に妹に対する怒りを爆発させるシーンがよかった。

唯一、初演から変更となった春野役の水町レイコさんはどこかイッちゃっているような高慢女性を好演。北島三郎さんを父に持つだけあって、創業者一族の長女という役どころは合っていたのかも。

 

スタッフワークもよかったが、とりわけ音楽の坂本弘道さんと陰影を活かしたライティングが効果的だった照明の千田実さんのお名前を特記しておきたい。

 

上演時間約1時間46分。