パルコ+サードステージ『ラブハンドル』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

パルコ+サードステージ
『ラブハンドル』
LOVE HANDLES


【名古屋公演】
2006年2月24日(金)
愛知厚生年金会館

作:中谷まゆみ 演出:板垣恭一
音楽:北村紀子 美術:尼川ゆら
照明:吉森賢治 音響:堀江潤
衣装:森永幸徳、金田実香
ヘアメイク:西川直子 インテリア:来澤聰
振付:井上一馬 演出助手:松倉良子
舞台監督:藤崎 遊
宣伝美術:ながせゆういち イラスト:桑原節
プロデューサー:佐藤玄、中島隆裕
制作:高石由紀子

出演:
原田泰造(立花勝)
富田靖子(八木沼千鶴)
石黒賢(薄井幸男)
長野里美(御手洗笑子)
小須田康人(御手洗進)
瀬川亮(長沢嵐)

とある弁護士事務所。
下手に応接セット、中央に机2つ。その奥に階段があり、外へと通じるドア。正面には観音開きの大きな窓。
上手3分の1は一段下がって、こたつなどくつろぎスペース。その奥に短い階段があり、奥は寝室。
大検を受けて苦労しつつも弁護士の資格を取った立花勝は、離婚歴があり、一人娘のユカリは妻と暮らしている。秘書であり、恋人の千鶴とは早十年の付き合いになるが、先妻との離婚がしこりとなっている勝は、結婚しようとは言わない。1年ばかりセックスレスの状態が続いているが、勝には決して恋人には言えない秘密があった。
そんな事務所を一人の男が訪れる。薄井幸男という冗談のような名前のその男は、最初は遺言状作成のことなどを言っていたが、結局のところは保険外交員への恋に悩むオクテくん。死ぬの死なないのの大騒ぎのうち、仕事も辞めて家も失った薄井はいつの間にやら同居することに。
一方、近所に住む勝の姉・笑子がやってきて、夫が自分に黙って勝手に仕事を辞めたことが許せないから離婚すると宣言。しまいには夫が浮気しているとまで言い出す始末。結局、夫の御手洗進が迎えにきて、すべて彼女の勘違いだと分かり事なきを得るが、昨日千鶴に会ったことを覚えていないなど、何となく変な様子。
更には、勝の娘・ゆかりとミクシィを通じて知り合ったという長沢嵐と名乗る男が現れ、彼女が結婚したがらないのは、離婚した両親のせいだと勝をなじる。

一昨日の『クラウディアからの手紙』と同じ会場での観劇。
同じ週だったので、当初こちらはパスしようかと思っていたのだが、雑誌で木村多江さんが今月はこの芝居を観ると書かれていたので、慌ててチケットを取った次第。
ま、同じ事務所でグリコ「和ごころ」のCMでも共演している長野里美さんが出てるから、多少宣伝も込めて書いていたのかもしれないけど。笑
後から取った割には『クラウディア』より前方の席。客席全体を見渡しても、7割程度の入り?

正直、途中まではフツーのコメディだなと思いながら観ていた。
ところが、である。
終盤にさしかかって、笑子が何かに怯えている様子で事務所にやってくるあたりからグッときた。
最初は、夫の進に暴力でもふるわれたかと気色ばむ勝だったが、どうも様子がおかしい。子供の頃に戻ってしまったかのよう。実は、彼女は若年性アルツハイマーに冒されていて、記憶がなくなりかけているのだという。
進が内緒で仕事を辞めたのも彼女に付き添ってやりたいがためのことだった。
ここでの小須田康人さん、長野里美さんの第三舞台コンビが素晴らしいのなんの。
怯える長野さんを包み込む、小須田さんの温かさ。
どうして病気のことを言ってくれなかったのか、と詰め寄る勝に、「僕は彼女の夫だ。彼女の一生を背負う権利は、弟の君にではなく、夫である僕にある」と静かに、だけど力強く言い放つ。
女性の皆さん、結婚するならこういう男性ですよ。笑

一方、千鶴に愛想を尽かされてしまった勝。そんな折、彼女の実家があるはずの福島で大きな地震が起きる。人一倍地震を怖がっていた千鶴を心配して、福島へ向かうが、電話連絡はつかず、手がかりすらない。今更ながらに千鶴のことを何も知らなかったと悔やむ勝。
ひょっこり戻ってきた千鶴にどうして連絡しなかったんだと責めるが、彼女の実家があるのは福島ではなく、福井。笑
それでも死ぬほど心配した勝は、いなくなって初めて彼女を必要としていることを痛感し、プロポーズする。
ここでの原田泰造さんが真っ直ぐでいい。多少、台詞回しに難はあったが、このシーンで帳消しとしよう。
千鶴が駆け寄って勝に抱きつくところでは、会場から「あぁ」と声が。
無条件で祝福したくなるような二人の姿にまた涙腺を刺激され。
最後には富田靖子さんのメイド姿。結局、この芝居では最初のパジャマ姿に始まり(しかも裏返しにしていてそれを直すシーンもあり)、ナースの制服、セーラー服とコスプレ三昧。
いくつになっても可愛いぞ、富田靖子さん。笑

いつものドラマなどでの役柄とは違って情けない男を演じた石黒賢さんや、NHKの朝ドラ『ファイト』でヒロイン・優(本仮屋ユイカ)が想いを寄せる厩務員の太郎を演じていた瀬川亮くんもそれぞれ好演。
なお、タイトルの「ラブハンドル」とは、お腹の周りについた贅肉のことだとか。
私もラブハンドルが気になる今日この頃です。笑