今年の5月に無事完成した「太平洋の女王 第一話」。
架空の現実離れした発展ぶりの高知県で繰り広げられる作品です。
現実の高知県は生まれ育った人間が嫌というほど知っています。半分死んだような土地になってますからね、今では。
この話では「土佐海運会社」が建造し、進水式を迎えた空前の巨大船のお話ですが、
すっごい大変なトラブルが起こっています、それは・・・・・・・・・・
ライバルがいない!!!!!!
ライバルがいないんだったら別にいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、
これ実はすっごい深刻・・・・・・。
勘のいい方ならこの時点で気が付いたかもしれませんが、
客船の檜舞台といわれた北大西洋では、年間100万人超!!!!もの利用者がヨーロッパとアメリカ大陸間を行き交っていました。対する北太平洋航路は、主に鉄道会社が船主の親会社的存在で、旅客輸送よりも物資の輸送に重きが置かれていました。
さらに当時のアメリカの「排日移民法」という太平洋戦争の遠因となる法律が存在し、渡航も容易ではなく、そこに農業国家だった当時の日本人には船賃が重くのしかかり、あの時代の生活水準も足すというに及ばず・・・・・
北太平洋航路は年間利用者数は8万人程度・・・・・・・
大西洋航路:100万人超
北太平洋航路:8万人程度
・・・・・・2ケタも違うんですから勝負になりません!!!!!
それがどう関係あるんだ?と思う方にさらに具体的に説明すると、
ノルマンディーが生まれた背景には、20年代後半のフレンチラインがマイペースに経営を続けていたところに、ドイツが5万総トンのブレーメン、オイローパなどの巨船を建造し、30年代前半にはイタリアでレックスとコンテ・ディ・サヴォイアという同じく5万トン級の大型客船が就航、そこへもってきてイギリスでは75000総トンの巨船建造計画が持ち上がり、これが後のクイーンメリーとして就航し、ノルマンディーと覇権を争ったのは非常に有名な話です。
そうなるとフレンチラインもマイペースという訳にはいかなくなり、
やたらスゴイ「史上最高の客船」として就航したのがノルマンディーでした。
もうお分かりいただけたかと思います。
大きい船が就航するという事は、それだけライバルも一定数いて代表者を脅かすスゴイ存在もいるという事です。
1隻だけ際立って大きい船が就航すると、採算が合わず「無用の長物」扱いされる危険性が高いです。
あの当時の本にも書かれていましたが「その小なりを嘆ずるなかれ、客船とは所詮、営利採算の上に立脚した交通機関でしかないのだから。」なのですよ。
太平洋航路で一番大型だったエンプレス・オブ・ジャパンも26000トンくらい、
日本郵船の浅間丸や秩父丸も1万6000トン程度なのです。しかも先述したように8万人程度の利用客・・・・・。
北大西洋航路なみに利用客がいればそれなりに大きな船が造れないことも無いのですが・・・・・。
しかも大西洋ではこうした名船以外のあまり目立たないマイナーな客船も3~4万トンありましたし。
太平洋航路の倍くらいの大きさですよ!!!
と、いう事でライバルづくりに腐心したいと思います!!!!!
例えば日本郵船の浅間丸が6万トンとか、氷川丸までもが4~5万トンとか、
カナディアンパシフィックラインのエンプレス・オブ・ジャパンが8万トンとか・・・・・・
そんなかなり滅茶苦茶な世界になります。
「僕はかなりシュールな発想に欠けているかもしれない、理性は置いてブッ飛んでみようかなと思う・・・・・」
byギル・ペンダー(ミッドナイト・イン・パリ 2010年)