『俺達タッチ!』    作詞:レフトハンド舘

              編曲:バージニア周


過呼吸を止めて1秒

あなた死んだような目をしたから

そこから客も笑えなくなるの

これ 笑いの論理ね


きっと愛する人を 愛人にして

知らずに淋病なのね

彼女いない歴 2年フリー


すれちがいやカミカミトーク

あと漫談やったら

変わらずダダすべり


俺達タッチ 性質

悪い性質

苦笑い


タッチ 手を伸ばして受けとってよ

鼻息の荒さだけ 俺達男前 


芸人じゃなければ虚しさなんて

知らずに過ぎて行くのに

そっと手鏡に こにゃにゃちわ


あなたがくれた 淋病全部

移してしまえば いいね

1人で相方 通院したけど
笑いもロンリーです


ひとり涙と 笑顔はかってみたら

笑顔がやけに重くて

ダメね 突っ込みはラリアット(スタンハンセン本仕込み)


整形はね 女優のなす業

胸シリコン その後の彼女は

事務所とわだかまり


俺達タッチ 性質

悪い性質

あこぎな手


タッチ 毛をのばして ウケとってよ

ためいきで鼻毛が

1本出る 偶然


過呼吸を止めて1秒
また死んだフリをしたから
そこから客もドン引きなのよ
笑えぬコンビね


俺を愛さなければ 笑いなんて
知らずに過ぎて行くのに
昨日、相方が 夜逃げした



肉体披露宴


最近、身体を動かすことが日課。


山田弘。33歳になります。


生まれてこの方、運動などしたことがなかった。


普段は、インターネットに興じており、秋葉原へ新しいパーツを


買いに出掛けるのが、趣味だ。


またゲームや列車などにも詳しい。


ちょうど、高校に入った頃にはファミコンが全盛期になっており、


帰宅部で、自宅に帰ってはスイッチを入れていた。


そんな僕が。


33年間、心に引き摺っていることがある。


彼女が1度も出来た試しがないことだ。


正直、もうこの年齢になると、諦めムードも漂い始める。


実家に戻った時などはもう大変で、両親は、見合いを盛んに勧めてくるし、


兄弟もみな、結婚し、子供がいるので、心細ささえ感じている。


それでもコミック本で、純愛物のラブストーリーを読んでいると、


もういい大人なんだからと、耳の側から念仏のように聞こえてくるようで


何かし、片身が狭い。


そんな僕を、会社の同僚は「もう適齢期を過ぎたしなぁ」などと


からかって来る。


そういう状況下でさえ、僕は一切、好意を抱く女性がいたとしても


何のアプローチもかけたりしないのだ。


しかし、8月に入った猛暑の日。


会社の受付の女の子から、プレゼントを貰った。


僕の誕生日を誰かから聞いたらしい。


「おめでとうございます。頑張って下さいね」


僕は、彼女の元気で、活発な声に励まされた。


何と言ったらいいのだろうか。


嬉しい、というのを通り越し、涙が溢れてくるような感動さえ覚えた。


彼女は、わざわざ僕に買ってきてくれたのだ。


隣にいた部下が言った。


「おっ!いいじゃないですか!美人受付からプレゼントなんて。羨ましいなぁ。」


僕は、心の中でガッツポーズだった。


それ以来、僕は彼女を徐々に見とれるようになった。


毎朝の挨拶。


昼食時の笑顔。


来客に応対する姿。容姿。


僕は、彼女を見るたび、ドキドキして胸が張り裂けそうなほど、


興奮するのだ。


いい年をしたおじさんが。


その時だった。彼女に生まれて初めてのアプローチを


目論んだのは。


しかし、どう見ても老け顔だし、垂れ下がったお腹がだらしがない。


僕は、毎日、運動し、痩せることを決心した。


帰宅すると、すぐにランニング用のジャージに着替えた。


そして、近所の公園の外周、1キロを3周することにした。


始めた当初、息がすぐに上がってしまい、1周半で断念してしまった。


その後、本屋でトレーニングやダイエットするためのランニング法といった


本を読み漁り、最も効果的な方法を選んだ。


静的運動。


お腹についた脂肪を燃焼させるのには、ゆっくり腰を捻り、息をとめ、


5秒から10秒、その体勢を崩さないというものだ。


何度も何度も。


繰り返しているうちに、ランニングも次第に楽になり、お腹の出っ張りも


徐々にスマートになってきた。


そして、ランナーズハイという存在に気がつき、僕はその呼吸に至るまで、


夜の公園をもくもくと走り続けたのだった。


かれこれ、半年が経過した。


会社の上司から飲み会に連いて行く事になった。


なんと、受付の彼女も同行するというのだ。


僕は、この時ばかりは、走ってもいないのに、ランナーズハイと


同じような錯覚に陥った。


初めての恋。


もうすぐ成就する一目惚れ。


僕は、勢いよく返事をした。


上司は笑いながら、僕の肩を叩いた。


飲み会は、20時から会社近くの居酒屋で行われる。


僕はきっかけを掴もうと、必死に考えた。


隣の席に座ること。


その為に、居酒屋の下で早めに行き、待っていること。


全てを入念にチェックした。


そして、いよいよ彼女が来た。


3人の女子社員と一緒だ。僕は、彼女達を先に通した。


ジェントルマンを猛アピールした。


彼女は、くすっと笑った。


僕は、それを見逃さず、すかさず彼女達の背後を付いていった。


定刻に飲み会が始まる。


上司が乾杯の音頭を取る。


僕は、彼女と幸運にも隣の席に座ることが出来たのだ。


「かんぱ~い!!」


陽気にはしゃぐ僕。それを見た部下が、


「山田さぁーん。大学生じゃないんだから・・。」


と半ば、呆れた表情で僕に訴えかけてくる。


僕は、そんなことなどおかまいなしだ。


この日の為に、走りこんでダイエットして来たのだから。


誰も、僕のランナーズハイに及びはしない。


そして、会の中間に差し掛かった頃、僕は部下にずいぶんと


飲まされ、泥酔しかかっていた。


「これはいかん。彼女にアピールせねば!」


そう思い、彼女に腹筋を触らせた。


「山田さん、どうしたんですか、その腹筋!」


驚いてる、驚いてる。僕は、意気揚々とシャツを脱ぎ始めた。


肉体美をこの時こそ、彼女に目の当たりにさせるのだ。


そう思い、胸のボタンを開け、腰をくねくねさせながら動く。


彼女が、目を手で覆う。


「見てよ。これ。どうよ。」


と猛アピール。


しかし、彼女から思わぬことを耳にした。僕は、目の前の光景を疑った。


「山田さん、露骨な人なんですね。私、そういう不潔な人が1番嫌いなんです。」


彼女は。


太っていた頃のほうが、よっぽど、山田さんらしいと言ったのだ。


脱ぎそこねたワイシャツが、腕に引っかかり、宙吊りになっている。


「先輩、カッコ悪いっすねぇ!」


そう言って、部下は僕を囃した。


彼女の目には、涙が溜まっていた。


脱ぎ損ね、内側に着ていたVネックのランニングシャツからヘソだけが


のぞいている。


出べそ。


泣いている彼女。


半年のランニング。ダイエット。


僕は、全てが失われたと思った。


肉体が。心底、痙攣し、泣いていた。


翌日、受付の彼女は僕を見るや否や、無視をするように


なった。


僕は、今までのランニングをその日以来、辞めた。


それよりも、却ってランニングを恨むようになった。


肉体。披露。


初恋だと思った相手。


僕の身体は、みるみるうちに、元通りどころか、倍近くまで


体重が増えた。


何の為の。


ランニングだったのだろう。そう考えると、僕は今でも虚しい。


そして、肉体は見せびらかすものではないことを悟った。


もしかしたら。


それは、全て自分に対する行為なのかもしれない。


しかし、それに気付いた時は、時既に遅し。


結婚の2文字は、以前より遠ざかっていた。


肉体的、精神的に疲労困憊であった。



<完>

何だかんだ言いながら、小説や詩を書いてるレフトハンドです。


今日、考えてて思った。


俺、基本、苦労人なんだって。


誰もが嫌がる仕事に就いたりもした。


人間関係がうまくいかなくて、悩んでばっかの時期もあった。


とにかく、自分を省みた。


相手の気持ちにも配慮した。


だけど、物事はうまく進まなかった。


今、晴れ晴れとした気分でいられるのは、


悩みと苦痛、苦労を重ねる運命にあると思える自分が


いるから。


常に苦労の真っ只中。


親に揉まれ、社会に揉まれ、乳を揉まれ、何処へやら。


でも、志す方向は決まりつつある。


そもそも、遠回りなんだと思う。


その遠回りが、きっと誰かの役に立つ日が来る。


その時、その時は、悩みって、辛いものかもしれない。


逃げ出したくなるかもしれない。


けれど、後になって、必ず生きる。


辛いこと、誰だって経験したくないから。


なら、俺が代理人。


対処法は、臨機応変、事象によりけり色々ある。


1つだけじゃない。


悩んでるときは、焦点を絞りすぎて、視野が狭くなっている。



視点や切り口を変えてみる。


すると、面白いことに、笑いばかりが溢れている。


誰かが言う。


「悲しい話だね」


いや、想像でいくらでも変えられる。


その力は、既に持ちつつある。


人。


期待。


期待してる自分なんて、そもそも自分しかいない。


相手が持ってる期待は、あなた以上ではない。


なりたい自分であるために。


必要なのは、あなたの捉え方、実行でしかない。



自分を褒めた後は、戒める。


その繰り返し。


自分という人間をもし、振り返るとするなら、


日記を読み返す程度でいいかもしれないと思う。


何故なら、後ろには、夢がない。



前にしか、存在できない。


もし、仮に自分を否定して、存在を否定するなら、


あなたは、既にこの世にいない。



死は観念的ではない。


考えに考えを重ねている以上、生しか見据えられない。


でも、刻一刻と死への道は近づいている。



何をするか。


何をしたらいいのか。


考えること自体が、生きていることだと思う。



情念は、すぐに入れ替わる。


昨日の出来事が、今日は異なる。


だから、考える。


考えることが、生き方に一定のリズムを創る。



苦痛という状況を楽しもうとするのは、


そのためだと、思えて仕方ならない。




「珍獣ポコペン」



公園の時計は、正午を指していた。


噴水の周囲にOLが群がり始める。陽気な声。空には、


飛行機雲が残る。ここの所、雨が多く、久しぶりの日本晴れ


だった。


強い紫外線に、OL達が木陰を探そうとする。


その時。急に地響きが鳴る。


ドスン。


「じ、地震か?!」


いや、違う。地面を踏む、足音だ。そして、みるみるうちに


その大音響は激しさを増し、近づいてくる。


OL達が、耳を塞ぎ、慌てておにぎりを落とす。


そして、ビルの谷間に現れたのは。


珍獣、ポコペンだ。


「どうして、あなた、怪獣の名前を知ってるの?」


天然な子が場違いな質問をする。


体長、500mを越す怪獣だ。


「きゃー!!」


公園からは人々が、珍獣を確認する間もなく、


逃げ纏う。


公園に近づいてくる。危ない。


足が青空を覆い隠す。


辺り一帯が、影になる。


天然の子が逃げ遅れている。


「あ!踏み潰される!!」叫んだ、その時だった。


珍獣が、止まる。



OLや会社員の注目が、一点に注がれる。ゴクリ。


「な、なにか言うぞ・・・」


珍獣、ポコペンは牙を向いて、彼女に顔を寄せるため、屈む。



すると。


「胃腸科病院、どこぉんぎゃああ~~~???」


天然の子は、怯えながらも、ゆっくり応え、指をさす。


「あっち、・・・だと思います」


「あんぎゃああああ~~~!!」


どうやら、有難うと言っているようだ。


天然の子は、またしても突込みを入れる。


「どうして、訳せるの?」



珍獣は、彼女の指した方向へ歩いていく。


ドスン。ドスン。


ポコペンは、どうやらお腹の調子が悪いみたいだ。


会社員の1人が腕組をし、うんうん頷く。


ドスン。


そして、足音は消えた。


何故か、OL達は拍手をし始める。


「良かった!助かった!あの子のお陰ね!」



そして。ポコペンは、ようやく胃腸科を探し当て、到着する。


ドアを馬鹿でかい指の爪でちょこんと開ける。


「初診、うおぎゃあああ~~!」


受付嬢は、怖がり慄きつつも、


「は、はい。かしこまりました。」と保険証を預かる。


そして、急いでDr.コペの元へ駆けつける。


「せ、先生。大変です!!ち、珍獣が、来てます!!」


回転椅子をくるりと回し、眼鏡をかけ直す、ドクター。


「ん?なんで、珍獣って解かるんだ?」


なんてずぼらな質問をしている。


受付嬢が急かす。


「先生!それどころじゃないんです。診て下さい!あれを!」


Dr.コペは、またしても、椅子をくるりと1回転させる。


とても無邪気だ。


「どれどれ?あ、ポコペン君じゃないか!」


「コペ、んぎゃぁぁぁぁあああ~!!」


「なに?お腹が痛いの?はい、正露丸。」


「あんぎゃぁああ~~~!!!」


「おい、ちょっと、辞めてくれよ。照れるじゃないか。」


と先生は赤面し、額をぽりぽりと掻く。


受付嬢は、隣で事務的に言う。


「先生、今のは褒め言葉じゃないです。」


「そう?」


そう言いながら、Dr.コペは、もう行っていいよ、


とポコペンに一声掛け、足の甲を叩く。


そして、珍獣ポコペンは、正露丸を受け取り、


口から火を噴く。


「あっはは。よっぽど、嬉しかったんだな」


だが、火吹雪のせいで、ビルが燃えている。


「先生、燃えてます。」


受付嬢は、相変わらず淡々と語る。



「あんぎゃああああぁぁあ~~~!」


こうして、珍獣ポコペンは、地平線の彼方へ帰って行った。


怪獣も、腹痛には勝てなかったらしい。



生ものを食べる際には、ご注意を。






ワンコールにしては、重い言葉を吐こうと思う。


死。


それは、紛れもなく刻々と近づく、生きている証。


誰にだっていつか死は訪れる。


じゃあ、生きてるって何だって話になる。


死を強烈に意識し、イメージした時。


『もっと生きたい』という気持ちが、働きかけてくる。


あれはいつだったか。いや、生まれた時からだと思う。



自分を見るより、人の生き方を見据えるほうが、よっぽど賢明


かもしれない。俺を支えてくれた人たち。



俺、過去に、ずっとスポーツに生きてきた。


スポーツこそ、俺の人生そのものだ。


なんて馬鹿みたいなことを想ってきた。


だけど、スポーツを志す前。


小学校にあがる前の出来事だった。


俺に教えてくれた指導者がある日、突然、死んだ。



「おじさん」っていつも呼んでた。おじさんは、毎週末、


仕事が暇になるからと言って、近所の子供たちを集め、


夕方から夜にかけて、俺等を指導してくれた。



練習が終わると、いつもコーラや清涼飲料水を差し入れしてくれた。


おじさんは、練習では、厳しさよりも、身体を動かす楽しさを


教えてくれた。


体が動いてる時は、褒めてくれるし、反対に全く動いていないと


心配してくれた。


自由だった。


子供だから、自由そのものすら、感じたこと無いが。


今振り返ると、自由とか開放とか。


そういう自然な流れから生き方を教えてくれたと思う。



雁字搦めの生活は、発想を壊す。


生き方そのものの、流れに逆らう。


いつも、スランプに陥った時は。おじさんの言葉を思い出している、


自分がいた。



1年ぐらい練習に通ったある日。


親父に連れられて、おじさんの家のチャイムを鳴らす。


出なかった。


「おかしいな」と言った。


だが、仕事が長引いているんだろって親父が言ったので、


その日は止むを得ず、帰ることにした。



数時間後、おじさんの親戚と思われる人から


電話がかかったらしい。


親父が言った。


「おじさんが死んだ」



おじさんが死んだ。


俺は意味が解からなかった。


死ぬって?なに?



その頃、実家が商店をやっていたこともあり、


俺は家から塩を持たされ、おじさんの家へ駆けつけた。


そこには、変わり果てた姿のおじさんがいた。



顔に、身体に白い布が被されてあった。


泥状のコンクリートを溜める池に転落し、


死んだらしい。


おじさんの親戚が、涙ながらに訴えた。


「口にいっぱい泥が入って・・見るも無残で・・」



俺は、ぽかんと口を開けたまま突っ立ってた。


なんで、泣いているの?


なんで、死んだの?


死ぬってどういうことなの?


動かなくなって青ざめた身体。



おじさんの不慮の死は、


ずっと心に異物として残り続けた。


全く飲み込めなかった。


気持ちとして把握したのは、10年先くらいだったと思う。


死。



死ぬことと生きること。


切り離せない2つ。


おじさんが教えてくれたことは、俺の中で今でも生きているけど、


物体としては、消えてなくなる。


生きることは、誰かに何かを伝えることなのかもしれない、


と今になって痛感する。



もし、仮に俺が死に、


風化し、時代が流れ、誰かにこの言葉が


残っていなかったとすれば。


それは、生きていてもしょうがないんじゃないのかなとも


思う。


それまで、俺には生きる使命感がある。


おじさんの言葉をいつか、自分流に仕立てて、


誰かに託す。


それは、いつの時代でも同じで。


俺1人に限っていうと、俺なりの生きた言葉を誰かに


知ってもらい、実感してもらう。


それこそ、今の生きるという意味に繋がるんじゃないか。


そう思っている。



だから、自殺なんかも、今の俺には無意味でしかない。


今、死んで何が人の心に残るんだろう。


そう考えて止まない。



書き続けること、自然に生きること。


それは、俺自身である。


何の証明も必要としない。



誰かが言う。


もし、必死に恋愛に生きている人であれば、


「セックスしたい時って、死にたくなる時と似てる」


という言葉を信じて止まないかもしれないと。



セックスが生きる事、そのものだと。


だから、生を感じた時、死を同時に、それ以上に


実感するんだと。



ある旅人は言う。


「疲れきった人生。


生死をかける旅をすれば、生き生きとしてくる」と。



そして。


其々が持つ、生き方は果たして「死」を実感し得る物


なのかということ。



俺には、はっきりと言える。


おじさんの死を、生かす。


それまで、俺は死ねない。



死ぬことを真剣に考えた時。


ふいに思い浮かぶ言葉こそ、


生きた言葉かもしれない。


であるなら、


俺はそういう作品を書き続けたい。




2005/9/7


ドボクン 第5話



翌日、僕は久しぶりに土木バイトに出掛けた。


昨日までの哀しみは、雨で流し落とした。


正確には、友人宅の熱湯のシャワーだったかもしれない。


外に出ると、水溜りにアメンボが這っていた。


わずかに空が笑っていた。


乾いた風を横切り、駅まで歩く。1歩ずつ。



改札を入り、ホームで電車を待っている時、


唐突に友人の顔を思い出す。


彼は僕のやつれた表情を見て、こう言った。


「お前は、常に発展途上なヤツだよ。その恋が実るかどうかは


ともかく。もっと伸びて、大物になる気がするなぁ・・」


発展。途上。


僕は、少し照れ、思わずホームから目をそらした。


通りすがりの女子高生が僕を一瞥し、噴き出していた。


まだまだこれから。


そう独り言を言った途端、快速電車が入り込んでくる。


僕は、電車に揺られ、自分の頬を捻った。


不器用な手。



バイト先では、見慣れた顔ぶれが待っていた。


よくよく考えたが、建築現場では誰もがドボクン。


作業用のヘルメットを取りに、事務所へ入ると、友人や


先輩達が声を掛けてきた。


「少し痩せたんじゃないのか?」


察して、温かく気を遣っている。僕は、ここが自分のメッカだと


思えてくる。


その日の作業は、午前9時から午後5時までの鉄骨を組む作業だった。


訛っていた体が、重い鉄筋を運ぶ度、次第に馴染んでいく。


汗が地面へ滴り落ちる。


ここ最近の僕と言うと、悩みすぎていたのかもしれない。


こうして身体をほぐすことで、解消するものもあるんだなぁと


僕は思わぬ所で感心させられた。


仕事が一通り終わると、僕は友人に誘われた。


どうしても、連れて行きたい場所があるんだと言う。


彼は、実家にあるスポーツカーで出迎えてくれた。


僕は、昨日の「発展途上」という言葉の真意を確かめたくなった。


助手席にそそくさと乗り込む。


彼は、車にエンジンをかけ、ウィンカーを上げる。


仕草そのものが格好良くて、僕は何だか自分の事のように


思えてきて、嬉しくなる。


友人は、暫く国道を走らせると、話を切り出した。


「お前は、変なヤツだよ。気持ち悪いっていうか、魅力的っていうか。」


そう言っては僕に指を差し、シートベルトはちゃんと締めろよ、と促す。


赤く染まった雲が穏やかに流れている。


道路脇の景色に赤色を滲ませる。


オフィス街を抜けると、望む海岸線。


彼は続ける。


「俺も、ドボクンみたいな恋をしたことがあった。1回きりだけど」


そう言って、友人は鼻を啜った。


彼の照れ笑いした表情を見たのは、それが初めてだったかもしれない。


僕は頷いた。


「思い出したよ。お前の話聞いて・・」


何故だか、横顔が寂しげだった。


僕はこの雰囲気はまずい、と咄嗟に思い、


つなぎのポケットからある物を取り出した。


彼女の家に忍び込んだ時。


こっそり拾ってきたブラジャーだった。


僕は、徐に取り出すと、頬冠して彼に見せた。


彼は笑った。


走行が少し右にずれた。


「お前・・笑わすなよ!!衝突してもいいのかよ!」


ごめん、と僕は言った。いつの間にか、顔が綻んでいた。



暫くすると、羽田と書かれた標識が見えてきた。


空に飛び交う飛行機。


僕は、上空をぽかんとした表情で見とれていた。


「ここ?どうして?」


僕は言った。


まぁ着いてくれば解かるよ、そう言ったまま、彼はカーブを


曲がり、橋を越える。


それから20分ばかり。


目的地は、空港だった。


彼は、駐車場に車を停め、ターミナルに入っていく。


無言のまま、どんどん先へ進んだ。僕は彼の背後を追いかけるように


歩いた。


そして、向かった先は、見送り用の屋上だった。


彼は、ベンチに腰をかけた。煙草を取り出し、火を点ける。


風。


空港は、風が強かった。空には、何機もの飛行機が入れ替わり


離陸、着陸を繰り返していた。


彼は、重い口を開いた。


「なぁ。ドボクン。」


僕は、思わず、はいと返事をしてしまった。何故だか解からないけど。


雰囲気がそうさせたのかもしれない。


彼は、微笑みながら話し始めた。


「ニューヨークに彼女が行くって話。ドボクンの好きな子も行くんだよな。


実は・・。実は、俺もニューヨークに2年ぐらい留学してたんだけど、その時、


彼女がいてさ。」


彼は僕を見た。


真剣な眼差しだった。


「彼女と日本へ戻るつもりだったんだよ。だけど、あることが


きっかけで別れることになった。しかも、彼女の一方的な言い分で。」


僕は、生唾を飲んだ。


自分の唾を飲む音が耳に響いた。


緊張感。


「好きだったんだよね。だけど、俺が日本へ帰って何ヶ月か経った


ある日。一通の手紙が来た。彼女から。


それで・・・。何て書いてあったと思う?」


僕は、戸惑った。


首をかろうじで捻るのが、やっとだった。


彼の目には、うっすら涙が溜まっていた。


彼女はね・・。


声が少し震えていた。


「彼女はね、現地のアメリカ人と結婚したと書いてあった。


すごく幸せな日々だって。だから、あなたも幸せでいて欲しいって。」


そんな事、急に言われて幸せでいられるか?


そう尋ねてきた。


僕は首を横に振った。今度は、スムーズに振った。


「だけどよ、悔しいから、幸せだって書いて送ってやった。


お前より、可愛い彼女が出来たって。・・・・、嘘だけどね。」



彼は、静かに立ち上がり、金網の方向へ歩いていった。


羽田空港。


ここへ来ると、いつも思い出す。そう彼は回想しながら語った。


強風で彼の髪が靡く。


手で押さえながら、空を見上げていた。


すっかり暗くなった空。


暗雲が不気味に動いていた。


彼は、暫く眺めながら、彼女に対する想いをぶちまけた。


それは、あまりに悲惨で、僕も言葉にならないほどだった。


僕は、彼の元へ行った。


背中が。


泣いていた。


僕は、今の自分と重ね合わせ、幸せになろうよ。


そう言って、彼の肩に手をやった。


不器用だけど、必死にフォローした。


ありがとう、彼はそう言って、お前こそ頑張れと目で合図を送った。


「もう行こう。思い出してもキリがないよ。」



そう言う彼は、真摯的に格好良く映った。


励ますのは僕のほうだったのに。


優しい眼差しで僕を見た。



次の飛行機が離陸し始める。


轟音が周辺に響き渡る。


僕には。


彼女のフライトまでに告げなければいけない想いがある。


そう呟いては、手を握り締める。


彼が先行くぞ、と催促する。


もう1度、振り返り、空を見上げる。


後悔するのはまだ早い。


黒く押し寄せる闇に、僕はそう強く言い聞かせた。





もしも彼氏がいたら自慢大会


出場者☆レフトハンド(1人)


内容☆アゲていくのは、女性だけではなく、男性もアゲていこうと

    いうこの企画。 急遽、作り上げた為、グダグダ感は拭えないと

    思われる。

    彼氏がもし仮にいたら、という設定のもと、自慢も含めて

    持ち上げていく。


相手☆健司(28歳)


以下、「健」とする。



レ「俺も彼氏がやっと出来てさー」


健「え?マジで!?」


レ「健司って言うんだけど」


健「俺と同名じゃん」


レ「健司は、カッコイイし、モテるヤツでさぁ。

  で、元自衛官なんだよね」


健「は?俺も元自衛官なんだけど!」


レ「二の腕が太くて、頼りになるんだよね」


健「何の??」


レ「腕に掴まってブランコしたり」


健「(笑)」


レ「あとは、腹筋が割れてるのも、頼りになるよね」


健「さっきから俺のこと??」


レ「腹筋の上に頭を乗せて、新しい枕感覚なんだよね」


健「単に利用されてんじゃないの?それ」


レ「元自衛官ってこともあるから、体力が自慢で、何やっても

 持続力がハンパじゃないんだよ」


健「まぁ、一応、税理士の試験は受けてるけど」


レ「勉強が出来るっていうより、普段の生活からして、賢いんだよ」


健「へぇ。例えば?」


レ「食べられる草と食べられない草を見分けられたり」


健「まぁ・・サバイバルやってっからね」


レ「あとは、日本人と韓国人を見分けられたり」


健「それは、誰でも出来るんじゃん?」


レ「もっと凄いのは、パンダとラッコを見分けられたり」


健「ナメてんのかよ!」


レ「ジャングルにいても、一発で識別できるんだよね」


健「当たり前じゃん」


レ「男らしいから、フェロモンとホルモンが両方、出てて」


健「ホルモン出てたら、怖えーよ」


レ「レバーなんてイチコロでやっつけるんだよね」


健「食べるってこと?」


レ「マンモスも食したことあるらしくて」


健「1度たりともねーし」


レ「だから、牙向くと、怖い部分あるけどさ」


健「食べたから?」


レ「何言ってんだよ。勝手に食べさせんなよ、俺の大事な彼氏に」


健「彼氏!?お前、いつからホモになったんだよ」


レ「そうだね。ホモサピエンスの頃からだったと思う」


健「何年、生き残ってんだよ」


レ「あと、健司は他はどうでもいいけど、性格がいいんだよ」


健「他って・・」


レ「とにかく優しいヤツで、昆虫とかにも優しくて」


健「まぁ・・。そうだね、虫好きだし」


レ「昔から蟻を拾っては、巣穴へ手で運んで帰してやってたもんな」


健「蟻は、自分で帰れんだろ?!」


レ「1匹ずつ掴んで、穴へ押し込んでた」


健「無理矢理じゃん」


レ「あとは、蟻地獄の穴を掘ってやったりとか」


健「余計なお世話だよ」


レ「とにかく、地球に優しいヤツ。いいヤツなんだよね」


健「どうでもいいけど、俺のことだろ?」


レ「ということで、俺と付き合ってください」


健「本末転倒じゃん」




※グダグダです。


「火事場の妊婦」


妊婦 貧富の格差 蹴飛ばして 乗り込むVIP なタクシー


産婦人科病院  3人が常備


どのように 手術後の治療費


支払うか解からず微妙に


睨む非常勤 の受付嬢に


運び込まれる オペ室  即、尾を摘出 


旦那が飛び込む 発汗体質


ダラダラ流す  汗水垂らす


手に握り締めた 給料袋


支払いはローンか、錠剤服後


ケチね、なんて言わないで


そりゃ使うよ 手堅い手


妊婦、瞬いて 産まれるオンギャー


養育費のため出稼ぎ、全国行脚



※HOOK


火事場の妊婦  産んだ3つ子の人数


だけ生活、いと苦しい  掴む白いシーツ



ヒィヒィふー 大人数 の家族養うだけ 借り入れ緊急


ラマーズ呼吸  堪らず途中


脳裏に浮かぶ 家計簿指数


義務教育 私立大学 日々、膨らんでく


赤字と赤子を抱いていく


5つ子政策 なんてジョークが後に響く


「私がやるわよ、パート」 ろくに払えないアパート


家賃 カチンとくる 親父


「あと2週間、待って下さい」なんて負債


抱えて、やっぱ全国行脚


働くベンチャー 企業で連チャン


倒産 でも子作り生産


だけは励むのやめない 夜間のヤリクリ上手


避妊しろって言ってんのに


快楽が大事の一点張り


それじゃ返せない借金ラリー


自転車操業  2ケツで同乗


単身赴任で篭城  やっぱり火事場の妊婦に任せっきり



※HOOK

火事場の妊婦  産んだ3つ子の人数

だけ生活、いと苦しい  掴む白いシーツ


養育費が嵩めど、母は強し



「ナンセンス」



夜空に満月が止まっている。


私は彼と出会って以来、自宅の屋上へ行き、じっと


眺めることが多くなった。


東京の星は、お世辞にも綺麗ではない。


けれど、今夜だけは星が鮮明に映り、


煌々と街を照らし続けている。


私がモデルになると言った時、母親は猛反対した。


その反対を押し切って、念願の雑誌モデルになった。


生まれつきの美貌。後天性の教養。


正直なところ、私は自分の事をよく知っている。


私がどんな仕草を見せれば、男性が声を掛けてくるか、


あるいは、その逆もよく理解している。



そんな私が、雑誌の専属モデルになった時のこと。


1人のモデルから声を掛けられた。


五十嵐君だ。


彼は、私と同期で、よくファッション雑誌で同席することが


多い。割とソフトな口調で、優しさが表情からも滲み出ている。


すぐ思ったことを口にする、私とは正反対の人。


すごく好感が持てたし、打ち解けやすかった。



そんなある日、彼から誘いの電話があった。


アプローチは決まって、男性からだった。私は、特にこれといって、


特別に誘いはしないのだが、物事をはっきりと言うことも


あり、彼のような温厚な人からは、親しみを持って


接してくる。


毒舌なのも、たまに傷だけど。



初めてのデートは、横浜の中華街だった。手をそっと握って


くれ、私もすっかり彼に全てを打ち明けるようになった。


彼は、大人しいけれど、私の考えていることを察してくれる


側面もあった。浮き桟橋を目の前に、私は彼に言った。


「ねぇ、どんな人が好きなの?」


彼は照れくさそうに、鼻に手をやった。少し考えて、ゆっくりと


口元を動かす。


「何でも率直に言ってくれる人。はっきり言うタイプが好きで・・」



そう言って、私を凝視した。


海からの風が、涼しげに顔の横を通り抜ける。


彼は、私の左手に上から重ね合わせるように、そっと置いた。


桟橋に着岸したフェリーが揺れる。


私は、もう1度、目をやった。


彼が私を好きだと言った。


さざ波が押し寄せる。


夏の晩、私達は、付き合うことになった。



彼からの連絡は、1日1回のペース。


会うたびに、日増しに彼のことが好きになっていった。


ストレートに声を掛ける時、彼の顔は綻びを見せた。


それは、まるで自宅までの帰路にある花屋の


ような情景だった。


私は、彼とのデートで遂に結婚を決意した。



ただ、私は彼からのプロポーズを待ち続けていた。


それから3日後。


その日に限って、彼からの連絡がかかってこなかった。


私は、居ても立ってもいれず、彼の実家まで


電話をかけた。


すると、彼の母親から思いがけない言葉を耳にした。


「今日。たったさっきだけど。交通事故に遭って・・。」



目が真っ暗になるという言葉は聴いたことがあった。


けれど、実際に目の当たりにしたのは、この時が初めて


だった。


何も見えない暗闇。光さえなかった。



彼は、交通事故で死んだ。


自分の乗っていた車で、運転して帰る途中。正面衝突だった。


頭の打ち所が悪かったらしく、即死だったと後から聞いた。


私は信じられなかった。



今までの彼とのデートは。何だったのだろうか。


そう思えては、ショックで立ち直れなかった。


彼の写真を持って、何度も泣いた。


今も何処かで生きている。


そんな事を友人に話したりもした。


けれど、徐々に日が経つにつれ、私は


彼に対して、出来なかった全ての優しさを


悔やんだ。


もっと私が。いや、それ以上に、辛いのは彼自身


だったかもしれない。そんな想像が、何日経っても


脳裏から離れなかった。



5年が経過した今もなお。


私は、1度たりとも彼のことを忘れたことがない。


星を眺めては、彼をずっと追い続けている。


優しかった顔。 月のような光。


暗闇の中、私だけが取り残されている。



私を人はよくこう言って羨ましがる。


「いいよね。千恵は。顔もいいし、スタイルもいいし、性格も


はっきりしてるし、おまけにお金持ちだもん。」


けれど、私は人には言えない過去を引きずっている。


羨ましい、なんて言われたくもないわよ。


そう言って、一蹴している私がいる。 気付くと。



天が2物を与える、あれは迷信だと思った。


私には、美貌と不幸を一緒に背負う運命にあるからだ。



ただ、普通に恋をし、結婚をしたかっただけなのに。


そう言いながら、夜空に向かって


「ナンセンス・・」


と呟いている。


星が、一段と輝いて見えるだけだった。






問: 以下の文章を読み、空欄を埋めよ。

   また、下記の設問に答えよ。



  710年、古代アゲチン王は、倭の国を支配下に置いた。


 これにより、律令政治が始まったわけであるが、アゲチン王は


 今の中国である、( ① )の国に使者を送った。


 この使者の中には、かつて女性であった( ② )や( ③ )らが


 参加しており、まさにウォークラリー感覚で、船によって日本海を


 渡ったとされる。


  また、当時、( ① )の国から授かったものとして、


 金印には、以下のように記されている。


 「漢の那の那の倭の那の国王」


  これ以降、倭の遣いは( ④ )と呼ばれ、漢と倭を行き来したと


 されている。


  また、7世紀に入ると、百済や高句麗などが滅亡したことにより、


 ( ⑤ )との外交(デート)は、当時、お盛んになったとされる。


  8世紀の文化としては、( ⑥ )や週刊雑誌( ⑦ )が本屋で


  立ち読みされるなどして、民に活字が多く読まれるようになった。


  中でも、古事記や( ⑧ )は日本最古の書物として有名である。


  さらに、794年になると、長岡京から( ⑨ )へと都が遷され、


  本格的に( ⑩ )プロジェクトが始動する。


  「泣くよ、うぐいす、徳光アナ」


  と、一般的には覚えられている。


  また、時代を先送りすること400年、裸足の( ⑪ )が


  それを持って、鎌倉へ攻めてくる。


  この時の代表取締役をフビライ=( ⑫ )と呼ぶ。


  しかし、2度に及ぶ、この活動は( ⑬ )に終わる。



  また、御家人たちへの報酬が支払われなかったとし、


  国家公務員は怒りを覚えた。


  これによって引き起こされたのが、( ⑭ )の乱である。


  


  設問1.( )に当てはまる言葉を入れよ。


  設問2.下線部のそれとは、何か。20文字以内で答えよ。


  設問3.この時代を何時代というか、単語で答えよ。


  


模範解答は、以下の通りです。


設問1.


①漢の那の那の倭の那 ②姉御 ③神取忍 ④アゲチン検討士


⑤新羅のセレブ ⑥CanCam ⑦ヤンマガ ⑧恋の引越し屋シリーズ


⑨平安狂 ⑩24時間テレビ ⑪少年 ⑫ミッシェル=彦兵衛=山本


⑬書類不備 ⑭たった1人



設問2.わらび餅


設問3.古代アゲチンサイト航海時代



☆出題者・レフトハンド(~2005)


著書に、「間違えた!長崎はもっと南だった・・」、


「カチューシャをつけていた夏」、「ナイス行き止まり」、


「そろそろ春ですな」、などがある。


その他、幅広くアゲチンライターとして活動中。



☆配点(/100点)


設問1. 0点


設問2. 20点


設問3. 80点


☆解答時間


1分~6時間