「世界屠畜紀行」 内澤旬子 | バックパッカー、いや元バックパッカーです。

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113か国旅して、それから・・・

 世界各国の屠畜現場を取材して、イラストと文章で著すというアイデア賞ものの本。私は旅行記や海外の生活に密着したやルポなどが好きでよく読んでいて、モンゴル人の羊の解体や、イヌイット、もちろん日本の猪や鹿の解体について書いたのなども読んだことがあるが、自分でわざわざその現場を見に行こうとも思わないし、自分で解体しようとも思わない。

 

 しかし、東ティモールを旅していた時、地方の小さな町の宿で偶然牛の解体を目撃したことがある。その宿では、庭で牛一頭、豚一頭、山羊一頭、鶏数羽、犬数頭飼っていてひじょうにのどかな場所だったのだが、ある日、牛の背中がざっくり切られていて、しかも肉が切り取られているのを見つけた。背中の一部が切り取られていながら、その牛はまだ生きていた。主人に尋ねると、夜中に泥棒が肉を切り取っていったというのだ。

 

 翌朝、目覚めるとすでに庭で牛の解体が始まっていた。近所の犬もやってきておこぼれをもらおうと辺りをうろうろ。解体後はその場で一部の肉を焼き、私もおこぼれをいただいた。どの部分かわからなかったが、硬い肉だったのは覚えている。

 

 最近、田舎で自然とともに暮らしてみたいと思うようになって、古民家に住み、野菜を育て、鶏などの家畜を飼い、魚を釣ったり、猪を捕ったりといった半自給自足生活をやってみたいと思っている。著者の「漂うままに島に着き」に近い生活だ。彼女の場合は小豆島だが、私は沖縄の離島がいいかなと思っているのだが、ただ準備金、もしくはある程度の現金収入が必要だし、田舎の人は必ずしも移住者を受け入れてくれるとは限らないので一歩踏み出せないでいる。都市部の便利な暮らしも捨てきれない。

 

 それはともかく内澤さんの本は何冊も読んだが、なかなか面白い。廃屋を借りて豚を3頭買った話「飼い喰い」もよかった。次にどんなテーマで本を書かれるのか、楽しみだ。