福岡は今年の寒さの底である。鈍色の雲を裂いて時々弱々しい太陽が顔をのぞかせている。
九州とはいえ、福岡の冬は寒いのだ。
昨日、小中と一緒に遊んでいた同級生が鬼籍に入った。癌だったそうだ。
53歳。早いなあ、と思う。しかし、それと同時に僕らの年代も肉体の衰えとそれに伴う、もろもろのトラブルに対峙しなければいけない年齢である、ということに気付かされた。
僕には大学1年生と高校2年生の子供がいる。
当然だけど、僕にも彼らと同じ年頃を生きた。その事を頭で理解していても何故かリアリティを欠いているような気がするのだ。その時代はロプノールを探すキャラバンが見た幻覚のようで、「そこにあっても、そこにない」気がする。
退屈な穴ほりのような日々という今とあの日の間に、深い眠りについたゴジラのように横たわっているのが見える。
俺は、まだ生きてみることにするよ。