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Le ciel d'azur~藤倉梓blog

脚本,作曲,演出,出演,訳詞,ピアノ弾き and so on...

すこし前に参加した「10 minutes musical」のお話、Episode 5。

【17:00】
我々のゲネプロは18:30と定められていた。
げ、あとたった1時間半。
現在の状況はというと、そろそろM3が出来るころ。たぶん。
もう脳の酸素は薄くなり血糖値が下がり、うつろだ。記憶は、朧だ。
M3がこれまた長めのナンバーになってしまったのだが(誰のせいかな)、ともかくM3の完成と同時に急いで音取り。
しっかし背水の陣に身をおいたキャストのインプット力がすごい。
私ならあんなに覚えられない。
驚嘆しかない。

【17:30】
だがまだ安心してはいられない。手付かずのM4があるのだ。
作曲家先生がM3の音取りをされている間、万一を考えて持って来ておいた私のPC作曲ツールに遂に動員令が下った。
すなわち悠々自適脚本家の立場を取り止め、作曲家のアシスタント作業開始。
こんなに作曲家を追い詰めてしまったそもそもの責任を取らねばなるまい。
人生最速の勢いでアシスタント業務にいそしんだ。壁抜け男のデュティユルをも凌駕する勢いで。
こんなかんじですな、壁抜け男のデュティユルの歌。
あ、壁抜け男、観たいなあ。

【18:00】
このあたりの時間帯、なんだか早回しで生きている感覚だ。
タイムラプスが脳内にインストールされたかのよう。
じっさい動作が皆いちいち1.5倍速になっていたと思う。
キャスト達は、M3の大ナンバーとM4の細かいメロディをわんこそばのように体に入れていく。
はいどんどん、はいどうぞ、はいよっこら、もう1曲。
M3をやるとM4を忘れる。M4をやるとM3を忘れる。うちのわんこそばはざるそばだったのか。まだまだ終了合図の蓋が出来ない。

そこにゲネプロ開始時間が延びたとの朗報。
祈りが通じたか。ありがとうSend me a sign!

足掻きに足掻いてさぁもう逃れられない【18:30】、
ゲネプロのために会場へ。
「(一緒にデュエットを練習しながら移動したいので)ずっとそばにいてください」
キャスト1がキャスト2にプロポーズしていた。
ひゅーひゅー。
かたや脚本家と演出家は、脳内酸素の薄さも手伝ってか肚も目もすわった燃えさし。
アップで寄ったら出エジプト記かと見紛う形相だったやもしれぬ。
やばめな狂気のディアスポラ。
かくて最初で最後の通し稽古へ。

Final Episodeへ続く。
すこし前に参加した「10 minutes musical」のお話、Episode 4。

【15:00】
脚本家は脱稿を(そのあとちょっと直したりした)、
作曲家はM2をあげたタイミングで、
再び稽古場移動である。
何だか気分が晴れやかである。
ついに脱稿したからだ。うはははは。

作曲家はキャスト2にM2の歌稽古をしてから、M3の作曲にとりかかる。

引退して悠々自適の身となった脚本家は、しれっと稽古を見守った。
演出家がキャスト1に振付を始める。
歌詞だって覚えるの大変なのに振付も?!?!ドS演出家だな!
しかし驚異的なことに、キャスト1はそれを覚えたのだ。ど根性と能力のなせる技。

【16:00】
キャスト1は振付の復習。
キャスト2は歌を演出家にみてもらう。

自分も演出家をやってるので、おそらく役者さん達よりも「演出家」のバリエーションを知らない。役者さんの方が現場を渡り歩いて様々な演出家さんに出逢うだろうから。
だから他の演出家の仕事を見られる機会は非常に有り難いし興味深い。
そんなこんなしていたらもうすぐ17:00。
新たに不安という心の闇が再び広がりはじめた。

「これ、終わるのか…?」

Episode 5へ続く。
やること減ったから、書くことが少ない。
すこし前に参加した「10 minutes musical」のお話、Episode 3。

【12:00】
あぁくそう1時間もロスしちまったバカバカ、そんな慚愧の念を追いやるかのごとく、M2の歌詞を書き始める。
結末はまだ考えていない。
普段なら、結末が見えないまま曲を書いたりなんかしない。だって結末が変わっちゃったら、作った曲が無駄になるかもしれないんだもん。
そんなにゆとりをもって準備できないんだもん。
リン・マニュエル=ミランダ氏の「イン・ザ・ハイツ」みたいに「100曲書いて60曲捨てた」みたいなことが出来ない。あはれニッポンミュージカル事情。

だが今はこれ以上他の人を待たせていられないから、結末知らぬまま進めるしかない。こわいよーやだよー。
隣では、作曲家がM1の作曲を始めている。
その隣では、演出家がなんとなくそわそわしている。

普段、ものづくりは孤独な作業である。
脚本も作曲も翻訳もひとりでうみだす。
作品が史実を扱ってる時なんか大変だ。
ひとりで墓参したり取材したりしながら、何か、この世の先のものとチャンネルを合わせ、身体じゅうが繊維になったかのように細かくふわふわ・ばさばさとした皮膚の感覚で呼吸する日々。
え、おまえ何いってんのって感じ?
作家ってそういうひと、おらん?

しかし今日は、すぐ横に皆が居る。ぜんぜん孤独じゃない。
こうなってみると、誰かが居たら居たで困るんだということが初めてわかった。人間どこまでも我儘だ。
単純に、やはり周りの音が気になるのである。
かーえーるーのーうーたーがー、
って歌ってるところに
闇が~広~が~る~っ
とか聴こえてきたら誰だってどうしても気になっちゃうだろう。
おまけに手出しが出来ずそわそわするしかない演出家とキャストが、先行き不安のあまりか今なう執筆中の画面を覗き込んでくる。
やめて見ないで。恥ずかしい書けない。

今までネガポイントだと思っていた創作作業の孤独を、これからはポジポイントだと思うことにしよう。
私はさりげなくイヤホンを耳に挿したし、作曲家も同じなのであろう、ヘッドホンを着けた。

そんな絶賛難産中の作家たちの目の前で、果たしてキャストはお弁当を広げておにぎりをキメはじめたのであった。

【13:00】
稽古場交替のため、部屋移動。中目黒トライに戻る。
先にトライを使っていたCチームは既に歌稽古に入っていた。
やっば、できてんじゃん。うちなんかまだ半分しか本が書けていない。(誰のせいかな)

動揺を笑顔に包んで続きを書き始める。
キャスト1はM1の歌稽古。
キャスト2はM2が出来るのを待っている。
脚本家はM3と、どうやらラストとなるM4の構想メモを文字にする。
演出家は待っているが、脚本チェックもしてくれてアイディアやフィードバックをくれた。それがまた的確なんだ。さすが。
数分前に生まれたての脚本、人間でいうところのまだ首がすわっていない赤子状態だ。第三者の指摘をうけて修正する事にいつも以上に抵抗がない。

フィードバックをうけて第1稿を直し、第2稿となる最終稿をPDF化し、Wi-Fiを借り、グループLINEに送りつける。令和だねえ。

ところで私が脚本執筆に使っているソフトは平成初期のヴィンテージ遺産「一太郎」だ。若者は知らんだろう。私もミュージカル座の作家達から一太郎を薦められた時ポカンとしたものだ。それって私が小学生の時にあったやつですか?
だが米国でアルファベットを書くために出来たwordよりも、日本語の台本を書くには一太郎は快適なのだ、文字が揃うし重唱の歌詞の配置も綺麗に書ける。ちゃんと年々バージョンアップもされている。
ただ、M座の他に誰も一太郎なんて持っていないから必ずPDF化しなければならない。「wordのデータで下さい」といわれると「くっ…(移行作業めんどくせ…)」となる。

閑話休題。
ふだん何に従事していても「食べる」を決して忘れない藤倉、このときばかりは昼食を摂ることも忘れ、冷めきったマフィンにようやく手をのばしたのはラストとなるM4の歌詞をひととおり書き上げた後の【14:30】。

ちなみに朝買ったマフィンとは違う。
昼もマフィンを買ってしまったのだ。
頭大丈夫か。

Episode 4へ続く。