ブックカバーチャレンジ Day 7 | Le ciel d'azur~藤倉梓blog

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脚本,作曲,演出,出演,訳詞,ピアノ弾き and so on...

「ブックカバーチャレンジ」は
お気に入りの本の表紙の写真を1日1日、7日間で7冊紹介して、1日1人を後任に指名するというもの。
ほんとは説明しないで写真だけupするらしいですが、
どうせなんで説明をブログに書こうと思います

の、最終日7日目。

夏目漱石『坊っちゃん』。
国文学科出身の端くれとして最後は真面目路線で締めるふりをしますねー

うちの高校では漱石の『こころ』を、1年かけて1冊まるまる読む授業がありました、通称「こころの授業」。
一般的な教科書に出てくる後半の手紙部分だけではなく、文庫本をつかって前半の思わせ振り複線からすべて浚い出すもので、
しかもクラスに1人、1年間『こころ』を担当する先生が居て、他のクラスとうちのクラスでは教わる内容や解釈が違って、隣のクラスで語り合って「うちはこういう解釈を聞いたよ」「えー聞いてない何それー」なんて情報交換をしていた。
それで読んだ『こころ』、高校生ながらクライマックスの表現にビビッときて、その文章は今でも忘れられない、
「もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横(よこた)わる全生涯を物凄く照らしました。」

あ、ブックカバーチャレンジは坊っちゃんの話でしたね。
こうしてみると大衝撃を与えられたのは『こころ』なんだけど、そのあと読んだ『坊っちゃん』は、あまりに全ページがひねくれていてクスッとなって、森見登美彦さん並みのアイロニーに満ちていて、でもぐんぐん連れてかれるうちにそれはそれはスカッと爽快な気分になる。
最後のほうなんか声に出して笑ってしまった。

漱石の憧れ理由のもうひとつは、ことばに対する柔軟性。
シェイクスピア同様、漱石も新しい言い回し?をうみだした人。
ことばがもつ意味や助詞や送り仮名を、既存のものとは違う使い方をするところに良い意味の引っ掛かりをおぼえることができる。

漫画もきらいじゃないですが、ことばフェチとしてはどうしても「ドーン!」で済まされる描写が多い漫画とかよりは、やはりことばを噛み締めたいと思います。
漫画もね、絵や物語やキャラクターが素晴らしいものは沢山あると思う。(漫画も勿論読んだことありますよ、人生で100作品以上は読んでると思います。大好きなものもいっぱいあります。)
でも、ことばという、儚くてあやうい健気な存在を、私は大切に思いたいなと。

なので漱石は、切実に、永遠に残って欲しい文学です。

ブックカバーチャレンジおわり。