瞳の奥の秘密 (2009) | 心を湛(しずか)にゆるがせて

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2011/5/3観  於小倉昭和館  (※『終着駅 トルストイ最後の旅』と二本立て)
『 EL SECRETO DE SUS OJOS 』  2009年  アルゼンチン映画  129分
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 監督・脚本/フアン・ホセ・カンパネラ         【キャスト】
 原作・脚本/エドゥアルド・サチェリ          ベンハミン/リカルド・ダリン
 撮影/フェリックス・モンティ              イレーネ/ソレダ・ビジャミル
 編集/フアン・ホセ・カンパネラ             パブロ/ギレルモ・フランセーヤ
 音楽/フェデリコ・フシド                 ゴメス/ハビエル・ゴディ
                                 リリアナ/カルラ・ケベド
 
第82回米国アカデミー賞 外国語映画賞受賞
第24回ゴヤ賞 スペイン語外国映画賞受賞
            新人女優賞(ソレダ・ビジャル)受賞
 
連邦裁判所勤務を退職したベンハミンは、25年前(1974年)に調査した殺人事件を題材に小説を書く事にする。新婚の女性リリアナが暴行され殺害された事件の調査は、当時の政情が絡んだ理不尽な結果に終わったことで、ベンハミンの上司だったイレーネへの想いと共に封印していたのだが・・・。
 

 
1970年代のアルゼンチンの時代背景は、フアン・ペロン(映画にもなったエビータの夫)が大統領三選目を果たしたが高齢の為1974年に死去。後継者は再婚した36歳年下の妻イザベルで、彼女は副大統領に任命されていた。が、世界最初の女性大統領となったイザベル・ペロンは、反対派への徹底的な弾圧を強行し、大勢の人権運動家などの殺害を命令した。1976年、軍事クーデターで彼女は解任された。
 
さて感想を。
タイトルはアモーレなニュアンスだし、スペイン語ってアグレッシブに聴こえる印象あるし・・・と思いきや、
とても静謐な映画で、ストーリーは凄惨な事件を追いながらも人間の感情を恐ろしい部分まで静かに
丁寧に描いた秀作だった。
率直に言うとある程度ラストの予想はついたのだが、これは映画好きならば身に着いた習性なので(既に様々なパターンの作品を体験しているので)、脚本や俳優の演技が素晴らしければ自分は無問題。
ローレンス・ソーントンの小説『闇の迷宮』(愛するアントニオ・バンデラス出演で映画化されとります)等を読み、僅かながらの知識はあったのだが、改めてアルゼンチンで起こった恐怖政治の実態を見、
本当に辛くやるせない気持ちになった。
そういう政治的物語と深い人間ドラマを巧みに絡め、俳優達の抑制された見事な表現、
細かい小道具の使い方など脚本の繊細さも含め、完成度の高い映画となっている。
 
 
アモーレなラテン系だからって、何でもかんでも猪突猛進って訳ではない。
互いに惹かれ合いながら、社会的立場などのコンプレックスも関係し、
どうしても肝心の一言が言えないベンハミンと、一言を待つ美しい上司イレーネ。
ドラマ的には、ストレートに感情をぶつけるものより少々もどかしいパターンが情緒的で好き。
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プライベートで問題を抱えているが、ベンハミンとは厚い友情で結ばれた同僚パブロ。
少々イラつくキャラなのだが、ここぞという時は漢であることを見せる。
その辺の微妙な演技の見せ方が実に上手い。役者の技量大!
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被害者の夫モラレスは、大きな怒りに懊悩しながらも、それを決して表面に出さない。
いつも冷静で淡々としている故に、爆発する時が恐い!とドキドキしながら観た。
もの凄く共感できるのだが、倫理感に捕らわれた傍観者は彼の行動に引くかも?
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ラストは好みの大きく分かれる所だと思う。自分はもう一声抑えを利かせて欲しかったのだけど、
辛く悲しい物語に一条の光を与える感じも結果的には良かったと、時間が経って思えた。
照明的に暗いシーンがとても美しいので、DVDでご覧になる場合は特に部屋の灯りを抑えて♪
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