先日、NHKの「ラジオ ビジネス英語」を聞いていて疑問に思ったことがあります。

Being part of the Wilson family, she is an easy target in a nepotism debate. 
(2026年1月6日(火)放送)

これはイギリスの老舗ワイン商社の創業者一族・ウィルソン家のエミリー(she)は、縁故採用の議論では格好のターゲットになる、という意味の文です。

この「一員(一部)」のところ、なぜ"part of"であって、"a part of"じゃないんでしょう?

このとき私の頭にあったのは、マイケル・ジャクソンの"Another Part of Me"という曲です。
この曲の歌詞に

"You're just another part of me"
(君は僕の一部なんだ)

というのがあります。

"Another"は an+other なので、"a part of"と同じと考えられます。
("a"ではなく"an"なのは、後ろの"other"が母音で始まっているからですね)

それをBAWIの授業でベト先生に聞いたところ
「う~ん、どうやって言葉で説明したらいいかわからないけど、僕の印象としてはこんな感じ」
とホワイトボードに○を描いてくれました。
お椀に入った甘酒の写真で再現してみるとこんな感じです。

 
part of

 
a part of

 

そこで思い出したのが、ジョン・ダンという詩人の詩"For Whom the Bell Tolls"です。
ヘミングウェイの小説にも同じタイトルで「誰がために鐘は鳴る」がありますが、冒頭にこの詩が引用されています。

No man is an island,
Entire of itself.
Each is a piece of the continent,
A part of the main.

(以下、略)

これは、

「誰も一つの島ではない
誰も一人で完全なものではない
大陸の一部なのだ」

という意味ですが、ここでも"A part of"となっています。

そもそも冠詞の"a"がつくのは、「ひとつの」と数えられる物であると考えると、
独立したもの
と言えそうです。

マイケル・ジャクソンの"You're just another part of me"の"You"も"For Whom the Bell Tolls"の"No man"も

独立した存在であって、誰か/何かにくっついている 

ということになりますね。

一方、"a"のつかない"part of"は

独立していない、あるものに取り込まれた一部

と言えそうです。
"Being part of the Wilson family"はウィルソン一家に取り込まれた一部で、次の有名な言葉

If you are not part of the solution, you are part of the problem.
(もしあなたが解決する側の一部でなかったら、問題になっている側の一部だということだ)

も、"solution(解決)"や"problem(問題)"に含まれた一部、と言えますね。

翌週、ベト先生にこの考えで合っているか聞いてみたら「そういう風に考えたことなかったけど、理にかなっているね」という返事でした。

ネイティブだとかえって言葉で説明できないこともありますね。
それができるのは言語学者です。
それにしても、言葉で説明できなかったらこうやって図で説明できるあたり、ベト先生、本当に優秀な語学教師です。

 

ついでにいえば、語源的には違うようですが、"island"に無音の"s"が入っているのは
"island(島)"が"isolated land"(孤立した陸地)の短縮形だと考えると、綴りが覚えられそうです。