先日、神奈川県公立高校入試の勉強会に参加してきました。
それほど目新しい内容というのはありませんでしたが、講師の方の話を聞きながら、いろいろと考えさせられました。
そのいくつかを簡単に記しておきたいと思います。
神奈川県公立高校入試を受験予定の方はもちろん、その他の地域の方にも、ぜひお読みいただき、それぞれのご家庭ないし学習の場において、子どもたちの学びというものを改めて考えるきっかけにして頂ければ幸いです。
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新しい入試になって早3年。
昨年度の学力検査では、理科の難易度が上がり、
今年度はやや易化するかと予想されていましたが、
ふたを開けてみれば、平均点は低いまま。
神奈川県としては、この路線で突き進むという意志を示しているのでしょうか。
理科もさることながら、今年度入試では、数学の出題でこれまでの典型的なパターンがくずされたものがあり、ビックリした受験生も多かったとか。
英語でも、記述解答の仕方の変更など、なかなか歯ごたえのある問題となりました。
こうした状況から、やはり神奈川県としては、入試を新しい制度に変更する際に打ち出した理念を、変にヒヨラズに、突き進めているとみることもできます。
また、勉強会で指摘され、確かにそうだと思ったことに、大学入試の改革があります。
現在の中学1年生の代から新しい大学入試になるとのことですが、
その大学入試の改革というのも、神奈川県の新しい高校入試と基本的路線は同様のものです。
つまり、これまでのようないわゆる知識量偏重の「受験学力」ではなく、習得した知識をきちんと活用できるかどうかについて、その力を測るテストを実施していこうというのが現在の教育界の大きな流れのひとつです。
少し違った角度で具体的にみれば、その根本には、学習指導要領にも記されている「生きる力」、その習得のために重要なポイントとなる「思考力」「判断力」「表現力」をテストという場でもきちんと測っていこうという意図があるのです。
ですから、指導要領では、各教科の学習において、「言語活動の重視」が示されています。
どんな教科であれ、どんな種の学習であれ、そもそもコミュニケーションや思考は、言語によるところが大きいわけですから、当然といえば当然です。
神奈川県公立高校入試では、もちろん国語においても、記述解答の問題が増加するなどの変化がありましたが、それ以上に、英語や数学、理科などにおいて問題を読み取る力、情報を整理する力、適確に答えを表現する力が求められています。
こうした流れは、これまでの神奈川県公立高校入試からすれば、かなり大きな変化です。
これまでであれば、中3の夏頃からちょこちょこっと知識面の補強をして、後半にはパターン演習をしてしまえば、なんとか乗り切れていた入試が、そうではなくなってしまったわけです。
これからの受験生からすれば、なんともまぁ大変な状況になって、さぞ恨めしく思っていることでしょう。
ですが、単に知識だけあって、パターン化された問題だけ効率よく解ける程度の力しか磨いていなければ、いずれどこかでその代償を払うときが来ることになるわけです。
そんな調子の学習だけで、たとえば大学に進学し、その後就職をするとなっても、社会に出て「使える」力は身に付けられていないかもしれない。
その時になってはじめて、「もっと勉強しておけばよかった」と思うことになったとしたら、それはもう悔やんでも悔やみきれないことなのかもしれない。
もちろん、そうした学習をくり返す中であっても、そこから、単にテストに解答できるだけではない「なにか」を得る人もいます。
直接的な知識だけでなく、情報を吟味する力や、論理的な思考力など、あるいは、副産物として集中力とか計画力とか、まぁ一連の受験勉強から、学ぼうと思えば実にたくさんのことを学ぶこともできます。
でも、やはりそうしたことができるのは、一部の人と言わざるを得ないのが現実でしょう。
一部の優秀な人、一部の良い指導者に出会えた人、そうした人からすれば、入試がどんなものであっても、きっとさして変わりはないのでしょう。
だって学ぶってことが何たるかときっと理解しているのだから。
であれば、小中高と学習をする中で、きちんと大切な視点を持って学習を積み重ねていった方が、たとえ以前の人に比べて少々大変であっても、テストの点数に即つながらず少々遠回りをするようであっても、そうした学習の方がどれほど有意義なことでしょうか。
そして、そういうものが社会的にも正当に認められ始めているのだから、そうしないというのは、やはりナンセンスだと思うのです。
わたしたちも微力ながら、そうした意味ある学習の場を、機会を提供するためにこそ、ラーニング・ラボという場を設けて、「基礎講座」を中心とした、「テストや入試でおわらない学力の育成」のための授業を行っているつもりです。
なにも、わたしたちは入試がそうなったから、というのではなく、教育界がそうなってきたから、というのでもなく、「そもそも大事な学習って何なの!?」「時代や社会が変化しても変わらずに大切にすべき学びって何なの!?」っていう問いから歩みを始めています。
だから、あえて偉そうに言い放つと、やっと時代が、社会が、神奈川県の入試でさえも、わたしたちに追いついてきた、というのが本音です。
現在の中学生以下の生徒、児童の皆さんは、今後、単にテスト的に優秀なだけの力では必ずしも評価されないということになるでしょう。
まぁもちろんそのテスト自体がどんどん変わっていくので、もしかしたらテスト的な優秀さというのは残っていくのかもしれません。
それはそれで実は怖いことなのですが、しかし、教育をとりまく現状の不健全さに風穴を開けるという意味では、こうしたテストによる改革というのは、1つの解になり得ると思います。
それに対応しなければいけない側はもちろん大変ですし、不幸なことかもしれません。
しかし、それはある意味でラッキーなことでもあります。
今までの人は、その後どこかで帳尻合わせをしなければいけなかったものが、これからの人は、日々の学習が、「生きる力」に直結するようになるのですから(たぶん)。
神奈川県公立高校入試を近い将来受験する予定の人は、今目の前の学習をきちんと積み重ねてくださいね。
知識があるだけでは解けない問題になってきていますが、しかし、知識がなければそもそもお話になりません。
必要な用語、学習事項の暗記は必須です。
あとでやればいいや、テスト前にまとめて復習しよう、などというのは、これまで以上に通用しなくなってきます。
だって、知識を入れた上でやるべきことがあるのですから、ひとまずは知識をすぐに暗記するというのは勉強の大前提です。
「鉄は熱いうちに打て」
記憶も同じ。
学習したての時こそ、間髪入れずに何度も復習するんです。
ちょっとした意識の変化と、やり方の変化で、実はこれまでよりも、簡単に知識を習得することができるはずです。
後回しにしているからツラくて、大変な作業になるんです。
めんどうくさいって思うから、嫌なだけの作業になるんです。
この辺りの学習の方法というのもとても大切なことですので、
単に大量の宿題があって、それを何とかこなすというだけの学習をくり返している人は、もしかしたら、なかなか伸びないかもしれませんよ。
もちろん復習や、大量の問題演習は大事。
でも、大事なことを抜きに、ただ大量の宿題をノルマのごとくやりこなしても、身につくものも身につきません。
心当たりのある方は、ぜひ改めて学習の方法について考え直してみて下さい。
どう出たらよいか分からないという方はぜひご一報ください。
日々意味のある学習をしていれば、たとえ入試がどう変わろうと、たいした問題とはならないはずです。
もちろん一定の対策は必要になるでしょうが、前提となる学習がきちんとできていれば、それは苦痛なだけの作業ではなく、むしろ、知的好奇心とガンガン刺激されるような意義深い学習となるはずです。
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新年度、新学期がスタートし早3週間。
授業を本格的に始動していると思います。
ただ、来週からはGWでお休みが続きます。
休みの間、勉強だけをしろというつもりは毛頭ありません。
学校が休みだからこそできることもあります。
部活動に取り組んだり、体を動かしたり、家族と旅行に行ったり、友だちと遊んだり・・・
そのすべてが価値あることですから、そうしたことにも全力で取り組んでみて下さい。
ただし、うまく学習がスタート出来ていないという人や、連休明けぼちぼち定期試験が見えてきますから、受験学年の人は、教科の勉強も忘れずに取り組んで下さい。
1日何時間もやらなくてもいいんです。
20分、30分の時間でも、全然違います。
ぜひ充実したGWを過ごしてください。