大館市のゲーム規制と、音喜多元都議の質問主意書 | ふぇりっくす日記

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電車の優先席で、わざわざマスクをずらして咳を続ける爺さんにイライラする今日この頃です。

 

こっちはコロナ感染しても死ぬとは思ってないんですが、お年寄りや基礎疾患をお持ちの方が感染すると、それなりの確率でお迎えが来るそうなので、それなりに気を遣って自分が感染経路にならないように生活しているんですが。

 

マスクが品薄で買えないなら仕方ないとしても、いちいちマスクをずらして咳を続けるとか…マジでやめてほしいですね。

…と思って隣の車両に移ったら、次に止まった駅で乗車したと思しき若者が、逃げるようにしてこちらに移って参りました。

ちなみに、席はガラガラだったので、やはり爺さんが嫌だったんだと思います。

 

電車内で咳をした人がいると、皆チラチラと警戒の眼差しを向けたり、恐いですね。

 

 

さて、そんな殺伐とした日本列島を、新たな激震が襲ってるそうです。

 

大館市でゲーム規制条例が検討されるらしい

 

ゲームは1日60分、条例制定へ 大館市教委、親の責務明記

https://www.sakigake.jp/news/article/20200227AK0009/

 

市の教育委員会がぶち上げて条例化を目指しているようです。

個人的には、診療こそ受けてませんけど元当事者という自覚がありますので、ゲーム依存に関する議論が深まること自体は好意的に見ております。

 

けどまぁ、1日60分てのは……どうなんすかね。

 

私個人としては、仮に規制するとして最初に考えるべき(そして最終的に、反対派の意見も汲んで落しどころにすべき)は、未成年におけるオンラインゲームの夜間規制がいちばん良いと思ってます。それを自治体レベルでなく国でやるべきであると。

 

依存症の専門家の本、ICTの功罪について書かれた医療関係者の本、睡眠学の本などを読んで、そう考えてます。

世間一般の理解も得やすく、反対派も妥協点にし易いとしたら、ここくらいが適当かなと。

 

 

他方、香川にしても大館にしても、先行して話題になるのは 「1日60分」 なんですね。

 

個人的に必ずしも 「60分のエビデンスが必要」 とは思ってませんが。

(後述する音喜多氏も60分推しの記事を引用していたので)

60分にどういう合理性があるのか気になりますね。

 

私の観察するところ、ネット上で散見する香川条例への反対意見(山田太郎氏・音喜多氏の界隈の意見)って、驚くほどゲーム障害について何も調べずに滅茶苦茶な意見を述べてるケースが多いので(山田太郎氏も含め)、そこに同調する気はないんですが。

 

「60分」の根拠が何か。

それは依存症に関するデータ由来か、健康や学力に関する(相関・擬似相関含む)ものか、または常識で考えて…ということか。

 

条例制定側の説明は聞いてみたい。

 

なぜなら自分が依存症の本などを読んでいても、「60分」に納得できる記述は特にないので。

(逆に言えば、夜間制限に納得できる記述は依存症の本でも他分野でも、たくさん出てくるということです)

 

まぁ、他所の自治体なんで、どうでも良いって言えばどうでも良いんですけど。

後学のために知りたい感じはあります。

 

 

60分の合理性と非合理性

 

読んでる本で特に「60分」とか、その根拠とか出てなかった気がしますので、ここは推測しながらになりますが。

 

まぁ、いちおう依存症対策の合理性として考えれば 「60分でコントロールできたら依存症ではない」(完璧な予防になる キリッ) という強引な説明は成り立つのかなと思います。

 

細かい説明は、「ゲーム障害とは何ぞや?」

というICD-11の暫定的な規定とかの話を踏まえることになるので、この記事では省略しますが。

 

「時間でコントロール出来りゃ、それは依存症でない」

て言われたら……、それはまぁ、そうですね。(汗) となります。ここを否定する意味はないでしょう。

 

だから「エビデンスが~」という反対派の意見は、規制派にはあんまり響かない気がしますね。

エビデンスとか関係なくても、本当に60分で規制できれば、依存症は生みませんから。(本当にできればな)

 

あくまで、現実不可能性とか、適用時における条例化の弊害とか、依存リスクの低い人への非合理性とか。

そのあたりを指摘するほうがマシな議論になると思われます。

 

・現実不可能性

私は香川条例の時から「掛け声条例」と言ってるとおり、規制しても強制力がないので無視される可能性は高いでしょう。

(逆に言えば、オンラインゲームの夜間規制は国をあげてやればきちんと規制化できるはずです)

 

・適用時における条例化の弊害

条例化して依存症対策を推進する効果はあるのでしょうが、一方で適用に柔軟さを失う可能性はあると思われます。

先立って時間を決めちゃってますからね。

 

既に多くの自治体で、スマホの使用制限などはあります。

刈谷市では1年後に9割の保護者が賛成という結果もありますから、ゲームもこの様に地域でのルール作りと継続したアンケート調査、それによって適宜内容を修正しつつ推進したほうが丁寧かと思われます。

大館市の現状は知りませんが、仮にその流れが無い地域で条例化しても丁寧さに欠ける気はします。

 

一方で、「家庭の問題」として片付ける反対派の論調にも疑問があります。

久里浜医療センターで診療しているオンラインゲーム依存では、3割ほど家庭内暴力(主に母親が被害)があるそうです。

これは「ゲームが暴力性を増す」という「ゲーム悪玉論」とは違って、依存した結果に起こり得ることです。

依存症専門家も以前から、ゲームを取り上げると家庭内でバトルになって逆効果と指摘しています。

それは当事者の家族から家庭内での暴力を聞いて知っているからです。

この様に、家庭内だけで対処できないケースもあります。

元農水事務次官の件は典型的な例だと指摘されています。

これはもちろん極端な事件ですが、家庭に任せるという姿勢は極論すると、ああいう悲劇を放置するということです。

反対派は議員も含めて、このあたりの現場の声を全く聞かずに反対意見を煽っている様子です。

社会的にきちんと対処していくべき問題であって、「家庭の問題」だけにしてはいけないでしょう。

 

・依存リスクの低い人への不合理性

完璧にコントロールできる「時間の長さ規制」とはいえ、最大の副作用はここでしょうか。

依存には「本人要因」「環境要因」など、リスクに個人差があるそうですが、一律に「60分」と規制すると、完璧なコントロールという合理性を超えて多くの非合理を発生させる可能性が高くあります。もともと依存リスクの高い人を(条例を守れれば)完璧に依存から守ることができたとしても、多くの人は高い依存リスクを有しているとは限りません。そこにも一律に規制をかけるのは非合理といえば非合理です。

 

この非合理があまりに大きいため、私個人としても「60分」を条例化する理由をもう少し知りたい気はしますね。

 

子供は依存に陥りやすい

とはいえ、子供は依存に陥りやすい、という指摘がされています。

 

・ゲーム障害が他の依存症と比べて低年齢層が多いこと

・脳の発達段階である子供は依存性に陥りやすいこと

 

これらは留意すべきでしょう。

ICD-11のゲーム障害についても、重症度によっては規定の12ヶ月に満たなくても認定する方向のようです。

アルコール依存など他の依存症を見てきた専門家によると、他の依存症より進行速度が早いそうです。

 

また、スティーブン・ジョブスが子供にデバイスを与えなかった話は有名です。

 

ジョブズは自分の子どもにiPadもiPhoneも触らせなかった (現代ビジネス)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/40647

 

ビル・ゲイツも自分の子供がPC等を使うことに厳しい使用制限をかけていました。

 

ガーディアンの記事では業界関係者の対処法が記されています。

(ジョブスの記事にも一部あるとおり、厳しい制限による反動も考慮して論じられている)

 

さて、その対処法の要点というと。

 

● 子どもが14歳になるまで携帯電話を持たせない(一部の家庭では、その後もデータプランの使用は控えている)
● 家族の食卓での使用を禁止する
● 就寝時間のかなり前から、デバイス使用を禁じる時間を設定する
● 平日については、スクリーンを見ていい時間を厳密に定める
(年少の子どもに関しては、全面的に禁止する場合もある)
● 使用を認めるソーシャルメディア・サービスを慎重に検討する(少なくともスナップチャットであれば、若気の至りで書いたことが一生残ってしまうことはない)
● 子どもが寝室でデバイスを使うことを禁止する

 

というものらしいです。

2017年以前の話としても、「14歳まで携帯電話を持たせない」は、今の社会では現実的でない気はしますが…。

「就寝時間のかなり前からデバイス使用禁止」 「寝室でのデバイス禁止」 は今でも、参考になると思われます。

 

まぁ、だからといって「ゲームは1日60分」を条例化していいのかは、かなり疑問なんですが…。

 

私は基本的に地域や学校でのルール作りまでは賛成です。

オンゲの夜間規制は国レベルで取り組んだほうが良いと思います。

 

音喜多元都議の質問主意書

 

都議だったのにダーマ神殿にも行かず国会議員に転職してた音喜多先生が、香川条例について質問主意書を出したそうです。

 

いろいろ質問事項が多く、観測気球にも程があるだろと思いますが。

とりあえず 「香川条例絶対潰すマン」 として元気に駆動して行く姿勢はハッキリしているようです。

 

おーい、音喜多先生!!

慶大の中室教授の記事を引用してたのに、

同じ記事に 「1日1時間程度のゲームなら問題はない」 て書いてあるけど、大丈夫か~?

 

 

(※ 中室氏のことは山田太郎氏も1月15日の番組で触れていたので、彼らは実は規制派に塩を送ってる可能性もあります)

 

まぁ香川の条例も、60分だけじゃなくて11条とかやり過ぎ感があるので、音喜多元都議の質問主意書も全く分からないではないですし、そもそも国会議員が質問主意書を出すのは職分のひとつであって、山田太郎事務所の某秘書のように「(地方議会に)プレッシャーをかけていく」などと地方分権をぶっ壊す的な物騒な意見には至ってないのだと思います。

 

(議員である山田太郎氏本人は「地方自治は建前」と、秘書より物騒なことを言ってます。自民党って恐いですね)

 

で、とりあえず文章が4000字ほど来てたので、さっくり終わりたいと思いますが。

音喜多氏にしても、香川の福祉部の職員さんにしても、国民民主の玉木代表にしても…。

子どもの権利条約の引用にメチャがある様には見えますね。

 

FBで反対を表明してた福祉部の人は

12条1、13条1、23条1、31条1を引用してる様に見えますが。

12条1に関しては引用が変なんですよね。

 

彼の引用部分はこう

第12条

1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。

 

実際の12条1はこう

第12条

1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

 

翻訳の全文が載ってるサイトなどで確認すると分かります。

「この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」

の部分が、反対派の引用では抜けてます。

 

先述したように、子供は脳の発達段階で依存症に陥りやすい、ということを鑑みれば(これは専門家が指摘していることです)、子どもがゲームやりたいと主張しても大人が全部を受け入れる責任はないですよね。

 

また31条については、これを「ゲームをする権利」と見ていいものか。

 

そも条約が1980年代後半にできたといっても、その前進のジェネーブ宣言が1924年、国連の児童の権利に関する宣言が1959年。

成立経緯を考えると、「遊技場の設置」という解釈の方が逐条解説してる本では優位な印象ではあります。

 

つまり香川県議の大山とかいうオッサンの世界観(ゲームでなく外で遊べ)のほうが認められる可能性すらあると思われます。

 

さらに言えば24条があります。

その中でも特に2のfと、3をみます。

 

24条2のf

予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。

24条3

締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。

 

これを見ると、むしろ子供を依存症から守るという姿勢のほうが、子どもの権利条約に法っているとすら思えます。

 

というか、ほんとに香川の条例が子どもの権利条約を犯しているということを国が認めるなら、それは韓国のシャットダウン制とか中国の軍隊式矯正施設とか、いろんなものが子どもの権利条約違反になるという日本国の見解を示していることになるのでしょうか。

 

まぁ中国のはやり過ぎやろ…と思わないでもないですが。

 

他の先進国でも規制は有り得るでしょうし、その流れを無視して日本が国として「ゲーム規制は子どもの権利条約違反」という態度をとるのかは、個人的にかなり疑問ではあります。

 

条約の成立過程から考えても、一般論(音喜多質問主意書)から考えても、政治的な観点から考えても、結果的に音喜多氏の藪蛇になりそうな気がしていますが、こればかりは質問主意書の回答を見ないとなんとも判断できませんね。

 

仮に規制が条約違反であれば、山田太郎先生や音喜多先生には元気に中国韓国を飛び回って、子どもの権利を訴えて頂きたいと思いますね。

 

質問主意書は参議院のHPで公開されていて、回答が出たらそちらも確認できるようです。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/201/meisai/m201050.htm

 

どうなるんでしょうね。