新書『国家の矛盾』高村正彦 三浦瑠麗 (後編) | ふぇりっくす日記

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昨夜3時頃に書いた日記の続きです。

後半は、本の中から幾つか拾って感想を。

 

しかし具体的箇所の前に、全体的な感想を書いておくと、前回の日記で触れた 「説得力に欠ける」 砂川判決が何度も出てくるため、折角トランプ大統領が出てきてゼロベース思考できる心持ちがイライラさせられました。

 

たとえ高村さんが憲法学者の権威を否定してみせても、木村草太さんの様な憲法学者が論理的かつ具体的に論を述べると「議論で」負けてた。別に高村さんだけじゃないけど、誰も木村草太さんあたりのロジックは崩せてる様に見えなかった。

 

そして、無理筋な解釈変更で誤魔化し続けるスタンスで居直ってしまうと、改憲の正当性がなくなってしまう。そういう意味で、二重にイライラさせられる本ではありました。

 

さらに、付帯決議については触れてもいない。

(安保法制ベースだろうと、改憲しようと、民主主義国家での文民統制でいちばん重要な部分だろうに)

そういう意味で、三重にイライラがありました。

 

また、高村さんは安保法制で集団的自衛権だけでなく集団安全保障もいけると言っており、それが『国家の矛盾』に記述されている。(P149) ここまでくると、さすがに呆れてしまう。

 

なぜ、あの法案があれだけ世間の反発を招いたのか、未だに理解してないのか。

こちらにすれば、見え透いたペテンにかけられてる様に感じられる。

「馬鹿な国民なら、これくらいで騙せるだろう」と。

 

また逆の意味でも、自公で二十五回も議論を重ねたことなど、集団的自衛権についてのポジティブリストの作成でもやってたのかと・・・そう取れる記述もあり。仮想敵国(嫌な発想ですが)に弱点披露宴でもやるつもりなんすかね。

 

立憲主義は守る、かつ改憲派、という両属性を挑発された感があります。

(さっさと改憲の議論をしとけと・・・)

 

おそらく新潮出版の思惑とは裏腹で、この本は、私の様な一部の読者をムッとさせる内容になっている。もちろん安保法制は現在ホットな議論ではないので、さほど熱をもった怒りではありませんが・・・。

 

それでは、脈絡のない拾い感想になりますが、

具体的に本の内容に触れていきます。

 

武力行使の三要件

 

・我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。

 

・これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適正な手段がないこと。

 

・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

 

 

以上、一章の最初のほう(P26、27)に記されています。

安保法制の報道でも何度も示されたことなので、おさらい的に書いておきました。

 

 

維新案の個別的自衛権の拡張に否定的

 

31ページあたり。

三浦さん

「当時の維新の議論からは、個別的自衛権の拡大で戦争が起こってきた歴史をあんまり理解されていないのではないかと感じました。」

 

高村さん

「そもそも個別的自衛権や集団的自衛権は、国連憲章で定められた権利で、国際法的な定義がきっちりあります。(中略)集団的自衛権と言うと国民が嫌がるから個別的自衛権の拡大でいいということだとすると、単なる感情論に過ぎない。」

 

これについてはお二人の意見、その通りかなと。

安保国会当時も、国際法との整合性が取れないとの自民党の反論は理に適ってると、私も日記に書いた記憶があります。

 

そこから、自民と維新で議論を深めて欲しかったのだが・・・維新分裂の泥仕合が発生してしまった。

 

維新案の個別的自衛権の拡張は、江田憲司氏が橋下徹氏を説得した理屈だったはず。

橋下氏が「江田さん、ようやく理解できた」というやり取り。

たしか安保国会以前のセッション22で、江田氏が自慢気に話してたはず。

 

それが一撃論破に近い形だったため、維新も安全保障の議論をさせると、その程度だったのね・・・と判明したわけです。(´・ω・`)

 

 

野党が徴兵制を煽るビラを撒いたこと

 

P34。

三浦さんによると、日本の議会政治の一つの汚点ですらある、とのこと。

 

これについては、一般論としては分かるけれども、徴兵制論者の三浦さんが吐くと「説得力の逆噴射」的な現象が発生している様に思えます。

 

一般論としては、分かるんですけど・・・。

 

 

(※ 私は三浦瑠麗さんのことは、凄く高く評価しています。念のため)

 

 

日米同盟の合理性

 

P42。

高村さん

「中国の軍事費は10年前には日本と同じぐらいでしたが、今は日本の3倍、おそらくこれからも日本よりずっと高い伸び率で増えていくでしょう。かといって、財政制約のある日本が中国に対抗して軍事費を伸ばそうとしたらギリシャになっちゃいます。

だから、一番合理的で、安上がりで、穏健な方法は、日米同盟を固めることなんです。」

 

これは、私も同意です。

安全保障の観点だけなら安保法制も賛成です。改憲も。

でも、砂川判決を根拠にした解釈改憲は未だに納得してません。

 

間接民主制

 

P49。

高村さん

「私は間接民主制のほうが国民のための政治ができると考えています。なんでも国民投票で決するようになったら制作が整合的にならない。税金はやすいほうがいいし、福祉は高いほうがいい。国民感情としてはそれは当たり前ですが、政治家は制約も同時に考えなければいならないので。」

 

シールズをはじめ、安保法制に反対者が多かったことに対しての話の流れから。

私も、間接民主制重視は正しいと思います。

 

直接民主制を導入した「日本を元気にする会」のやり方は賛同できませんでした。

個人的に、山田太郎元参議院議員を、政治家の中でいちばん高く評価していました。しかし彼の所属する元気会のことはディスっていました。それが一転、安保法制では元気会が直接民主制を手放して(手放すプロセスでは直接民主制で支持者に許可を得ていますが)、やらないはずだった党議拘束もかけて与党と修正案の交渉をして功を奏しました。この修正案・付帯決議は非常に重要で、木村草太さんは安保国会後も自民党議員との対談で実行を促しています。

 

参考、ハフィントンポストの記事。

http://www.huffingtonpost.jp/kazuya-matsumoto/nakatani-vs-kimura_b_13004868.html

 

元気会が、自分たちの打ち出した独自性・看板を放棄して勝ち取った付帯決議。

内容そのものが非常に重要だし、彼らの立ち回りが劇的であった様にも思います。

 

グダグダの安保国会終盤で(自民と民主が酷かった)、唯一救いがあった局面だと思います。

 

立憲主義

 

P50。

高村さん

「法案に対して「憲法違反である」というストレートな批判ではなくて、「立憲主義に反する」という言われ方をしていたことです。」

 

三浦さん

「法案に反対する側は、数の論理で買っていても十分に「民主的じゃない」ということを言うためのロジックとして言ってるだけだと思いますが。」

 

この後に高村氏が、違憲かどうかの判断なら砂川判決・・・と続きます。

いわば話の前振りの様な部分。

 

三浦さんが、あえて適当に流してる感が。

彼女は朝まで生テレビでシールズの子と話してるとき、憲法を守ることの重要性についてマイノリティを守ることを挙げていた様に思います。数の論理(多数決)で奪ってはいけないものがあることを認識してる。

 

まぁここで、マイノリティの意見を尊重することと権利保障をすることの区別は必要だろうし、そもそも安全保障の議論だろう・・・ということで、ここで深みに入ると議論は錯綜しそうなんですけどね。

 

なぜか妙に、この「前振りの部分」で立ち止まってしまった読者の私がいます。

 

青山繁晴さん批判

 

三浦さんが、2回ガッツリ批判しています。(*´∀`*)

 

P85と、P121。

引用は控えます。

北朝鮮の拉致被害者奪還について、青山さんの主張が単細胞すぎるという内容(彼女は、そういう表現はしていません)。三浦さんの見解に、私も全くの同意です。普通に「自分で」考える頭があれば誰でも察しがつくこと。しかし、そうでもない保守系の支持者さんたちを見かけると、ゲンナリすることがあります。

 

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ダラダラ書いてるとキリがないので、このへんにしておきましょうか。

重要部分でも幾つかは、割愛しました。新書ですからね。(時間的にも、全部書くのは無理)

 

ご興味のある人は自分で手に取ってみてくださいませ。