三国志読本。P288~
宮城谷
マキャベリの『君主論』に「君主とは何であるか」という定義がありまして、「君主とは、要するに決断する人である」としか書いていません。「決断する」というのは、実は大変なことだと思うんです。たとえば、多数決というのは実は非常にわかりにくい制度でして、それが正しいというのは思い込みです。質ではなく量の問題になっていますからね。それをどう正していくか、トップの方は質的な面で物事を捉えていってもらいたいと感じますね。
(中略)
中国の古典をやりながら、面白いヒントがあると感じたことがひとつあります。どういう話かというと、ある大国が南の大国と黄河を挟んで対決したんです。そのときに戦うべきか戦うべきでないか、軍議で諮った。戦うことを主張した武将が十一人中八人、反対者が三人だった。元帥はそれを聞いて、戦争を回避して国に帰ると言ったんです。
戦争賛成の八人のなかの一人が元帥に、「待て、多数決では八対三でわれわれが多かったじゃないか。なぜそれを無視するのか」と言う。すると元帥は、「多数決とは、良い意見が多い場合に多数決と言うのだ。戦争を回避したほうが国の利益になるという判断は非常に正しくて優れている。その意見が三票も入ったのだから、これはやめるべきだ」と言ったんです。
つまり、取るに足りない意見は決に入れない。だから八対三じゃないんだ、という。これは多数決の考え方としては非常に面白い。単なる数合わせじゃないんですね。
平岩
偉いですね。今の経営者でもそういう考え方がわりに行われていると思いますよ。
宮城谷
そうですか。
平岩
行われていないのは、住民投票ぐらいでしょう。(笑) 経営の場合には、多数決でものを決めることはほとんどあり得ない。多数決で決めたといっても、そのことが経営者のエクスキューズになるわけではない。自分でこれは違うと判断した場合には、多数決を否定して、こう決める。あるいはもういっぺん考え直せという。これが経営の日常です。
引用終了
「多数決とは良い意見が多い場合に多数決と言うのだ」
これで強行したのでは、決をとった意味って何なんだよ…。(;´Д`)
これって、
決定権が軍議に出た部下の多数決にあったのか、それとも部下の意見を参考にしただけで元帥に決定権があったのか、それだけの話なのかもしれません。
あくまで、その時代の中国の軍組織(のうちの一つの逸話)を参考にした組織論です。
今の日本の代議制民主主義にそのまま当てはめて考えるのは、かなり無理があると思います。
でもまぁ
トップが少数意見を採用してリーダーシップを発揮したい時に、
使いたい理屈ではあるかもしれません。
下手すると、みんなの党みたいに滅亡路線になりがちですけど。(;´∀`)