3 胎盤早期剥離 | レディースクリニックつねざわ【福井市・福井駅東】産婦人科

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胎盤早期剥離(常位胎盤早期剥離)とは
 胎盤早期剥離とは、赤ちゃんが生まれる前に胎盤の一部あるいは全部が剥がれる病気です。もし、胎盤がほとんど全部剥がれてしまったら、赤ちゃんの命を救うのはほぼ不可能です。それだけでなく、治療が遅れると母体の命も危険になります。

超珍しいというわけではないので怖い
 胎盤早期剥離は1,000人に6人くらいの割合で起こります。双胎では1,000人に12人の割合で起こります。およそ100人に1人の割合で起こる病気だと認識して下さい。

胎盤の端っこがほんのちょっと剥がれたら(軽症)
 妊娠中に胎盤がほんのちょっとでも剥がれたら、おなかが痛くなります。少し出血することもあります。
 周期的に(たとえば10分ごと)子宮が収縮して切迫早産だと診断された場合、実は胎盤早期剥離の前兆だということがあります。最初は軽い症状でも、何日かして本格的な胎盤剥離が起こる可能性があるので、1週間くらいは要注意です。

胎盤の端が少し多めに剥がれたら(中等症~重症)
 いろいろと特徴的な症状が出ます。
 不正性器出血はよくみられる症状ですが、特に特徴はありません。出血が少ない方が重症である場合があります。

 おなかや背中(子宮)が痛くなる(収縮)のですが、痛みが強くて長引くのが特徴です。切迫早産でも普通の陣痛開始時でも、最初の子宮収縮(陣痛)はあまり痛くないです。普通の陣痛(子宮収縮)の持続時間は30秒から1分程度で、収縮していない時間帯には、おなかは全く痛くありません。

 もし、数分から5分以上おなか(子宮)が硬くて痛いとか、1~2分ごとに子宮が収縮してずっと痛い感じがするとか、痛みが少し治まっても軽い痛みがずっと残っているとか、おなか(子宮)を触る(軽く押す)と痛い部分があるなどという場合は、胎盤早期剥離の可能性大です。

 急におなか(子宮)が痛くなって(かなり痛い)、その痛みがずっと続いたまま(全く治まらない)ときは、すぐに救急車を呼んで産婦人科へ直行して下さい。数時間以内なら赤ちゃんが助かる可能性があります。
原因
 ほとんどの場合、原因不明です。しかし、腹部に強い衝撃が加わった際に(交通事故、転落事故など)に胎盤剥離が起こることがあります。事故の数日以降に起こることもあるので、しばらくは要注意です。

胎盤早期剥離のリスクが高い人
 先に双胎でリスクが約2倍になることを紹介しましたが、リスクが高くなるのは以下の場合です。
・ 母親が高齢
・ 経産婦:出産回数が多いほどリスクが高くなります。
・ 多胎
・ 胎盤早期剥離の経験がある
・ 高血圧:昔から、胎盤早期剥離は妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の人に多いといわれています。胎盤早期剥離の44%で高血圧を合併していたという報告があります。
・ 羊水過多
・ 喫煙、飲酒、違法な薬物摂取(コカインなどはアメリカでしばしば問題になります)
・ 血液疾患:血液凝固に異常がある場合
・ 羊水穿刺(羊水検査)
など
 
いつ頃起こるのか
 ほとんどの例で、妊娠30週以降に起こります。20週くらいで起こることもまれにありますが(私も1度経験あります)、非常にまれです。分娩予定日頃に起こることもあり、自己判断で単なる強い陣痛だと勘違いして自宅で数時間以上過ごすと大変なことになってしまいます。

胎盤早期剥離になったら、どうなるのか
 発症時期、軽症か重症かなどによって対処法が異なり、また、結果も異なります。

重症の場合の帰結
 胎盤早期剥離の25%くらいが母児共に命に関わる重症タイプです。
・ 胎児の低酸素症による脳障害
・ 死産
・ 出血(特に子宮内での出血)による母体ショック
・ 母体の出血が止まらなければ子宮摘出が必要
・ 大出血による母体死亡
 胎盤が子宮内で剥離すると母体の出血が止まりにくくなります(DIC)。母体にとっての最善の治療法は、子宮内容(胎児と胎盤)をできる限り早く外に取り出すことです。赤ちゃんの脳障害や死亡を防ぐためにも一刻も早く赤ちゃんを外に出さなければいけません。

軽症で妊娠週数が早い場合
 胎盤早期剥離の約半数は軽症です。
 胎児の状態がよく(元気に動いていて、胎児心拍監視装置でも問題ない)、母体の血液の止血・凝固能に異常がなければ経過観察できます。ただし、非常に慎重で綿密な管理が必要です。

胎盤早期剥離は非常に怖い病気です。
赤ちゃんが助かるかどうか、あなたが助かるかどうか、それは時間との戦いです。