今回が帝王切開なら次回も帝王切開
理由は
子宮破裂を防ぐため
大昔は、一度帝王切開をしたら次も必ず帝王切開、が当たり前でした。
1980年代から2000年にかけて、帝王切開後の経腟分娩が試みられるようになり、世界的に流行しました。
2000年以降、安全に対する基準が厳しくなり、帝王切開後の経腟分娩を試みる病院や診療所はかなり減少しています。
子宮破裂
子宮破裂とは、子宮の壁(子宮筋)の一部が裂けて穴があいてしまうことです。子宮は腹膜に覆われています。完全に子宮の壁(筋層と腹膜)が破裂すると、胎児や胎盤が腹腔内に飛び出します(完全子宮破裂)。子宮筋層だけ破裂して腹膜が破れていない状態(不全子宮破裂)だと胎児は子宮の中に留まっています。
完全に子宮が破裂した場合の児死亡率はかなり高いです。
まれな病気
子宮破裂は主に分娩時(陣痛が始まってから)に起こります。
非常にマレです。発生頻度は0.02~0.1%と言われていますが、世界的に有名なアメリカのParkland病院のデータでは74,000分娩中でたったの4件、0.0054%です。
子宮破裂の原因
帝王切開で出産した後、次の妊娠の分娩中(陣痛開始後)に子宮が破裂することが最も多いのですが、主に以下の3つの原因によります。
1. 子宮の傷跡(瘢痕)が破裂するもの
帝王切開での子宮筋縫合、子宮筋腫核出手術、子宮形成手術などによってできた子宮壁の傷跡が破裂するタイプ
2. 自然子宮破裂
狭骨盤、巨大児、胎児の位置異常(横位など)から過強陣痛となり、子宮下部が伸びすぎて破裂するタイプ
3. 外傷性子宮破裂
不適切な陣痛促進剤の使用、粗暴な産科手技、事故などによるもの
4人目、5人目など多産婦に陣痛促進剤を使うと子宮破裂の危険が高くなります。
症状
先人の教えによると、以下の経過をとります。
a. 切迫症状:子宮破裂が差し迫ったときの症状は
1. 不安状態、脈拍や呼吸回数が上昇
2. 陣痛が強くなり
3. 子宮が非常に硬くなり、一部を押すと痛みがあり、子宮上部(底部)の位置が高くなる
b. 子宮破裂時
1. 陣痛の極期に突然激しい腹痛(不全破裂の場合は痛みがない)
2. 陣痛停止、患者さんは「楽になった」という
3. ショック症状:顔面蒼白、冷汗、嘔吐、血圧低下
4. 性器出血
5. 胎児心拍消失
6. 子宮は硬く、腹壁から胎児部分を簡単に触れることができる
わかりにくい不全破裂
完全子宮破裂の診断は比較的わかりやすいのですが、破裂してもすぐに症状が出ない場合があります。出産後に急に血圧が低下したり、ショックに近い状態になったりした場合、不全子宮破裂の可能性を念頭に置く必要があります。
子宮筋腫核出術後の子宮破裂
帝王切開後の次回妊娠時の子宮破裂は陣痛開始後に多いのですが、筋腫の手術後の子宮破裂は陣痛が始まる前に起こることがあるのでやっかいです。筋腫の手術をした病院と違う場所で出産する場合、万が一のことを考えて、あらかじめ筋腫の手術部位を確認しておくのが安全です。できれば以下のことを図に描いてもらって保存しておいて下さい。
・ 筋腫の場所、大きさ
・ 核出した筋腫の深さ(深かったか浅かったか)