〇予告

君たちはギャング組織ブルライト・シンディケート幹部の恋人、クリスティーヌを参考人として治安維持隊に連れてくることに成功し、奇襲によって幹部を逮捕(殺害)することができた。

今回は冒険者であるクリスティーヌと、15年前に廃村となった集落に眠る、神紀文明時代の遺跡調査に赴くことになった。まだ見ぬ世界が、君たちを待っている。


○人数

3-4人

※3人の場合、フェロー(クリスティーヌ)を参加させる


○作成レギュレーション(→「Ⅲ」72頁)

冒険者レベル4-5


○書籍

ルールブック「Ⅰ」~「Ⅲ」

モンストラスロア

※2025年12月に開催予定のオフセッションTRPG卓シナリオです


以下、シナリオ本編です(ネタバレ注意!)

〇目次

1 序章

2 夜襲

3 噴水

4 雷鳴

5 面影

6 終章


○判定一覧

●スカウト、レンジャー技能レベル+器用度ボーナス

解除判定(レンジャー:自然環境)

 

●スカウト技能レベル+敏捷度ボーナス

先制判定

 

●冒険者レベル+筋力ボーナス

腕力判定

 

●スカウト、レンジャー技能レベル+知力ボーナス

危険感知判定

探索判定(レンジャー:自然環境)

 

●セージ、ライダー技能レベル+知力ボーナス

魔物知識判定(ライダー:知名度)

 

●セージ、アルケミスト技能レベル+知力ボーナス

薬品学判定

 

●セージ、バード、アルケミスト技能レベル+知力ボーナス

見識判定

 

1 序章

 

多くの冒険者が集う街、港湾都市ハーヴェス。

 

夕暮れの街角。ギルドの喧騒をよそに、あなた達はのんびりしていた。

 

見覚えのある人影が近づいてくる。白い神官服に身を包んだ女性は、クリスティーヌ(エルフ/♀/16歳)だ。


○GM向け記載事項

フェローとしてクリスティーヌを使用するなら、以下のデータを開示します。

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=EksqXD


クリスティーヌの神官服と聖印、夜空


彼女は先日、ギャング組織の幹部の恋人として、あなた達が参考人として連れてきた人物だ。だが、その表情に、以前のような曇りはない。


クリスティーヌ「ここにいたのね?」


あなた達を見つけると、わずかに微笑む。


クリスティーヌ「新しい依頼があるけど興味ない?この前の突入任務を達成したあなた達なら、依頼に見合った実力はあると思うわ」


クリスティーヌの声には信頼と、どこか期待が混じっている。


彼女が広げた依頼書をざっと見ると、


「旧ラダック村」

「神紀文明時代の遺跡」

「聖杯」

 

といった文言が並んでいる。しかも、報酬は破格の1人5000Gだ。

 

○GM向け記載事項

・場所は、ディガッド山脈の廃村・旧ラダック村の遺跡

・旧ラダック村は片道2日かかる

・神紀文明時代の遺跡に眠る聖杯を探し出し、ギルドに納品すること

・依頼主はこの地域の領主、ユリウス(エルフ/♂/30歳)

・戦利品は持ち帰り可(聖杯を除く)

・達成期限は10日後の日没


〇PL向け記載事項

このシナリオは、2つのパートに分かれています。

経験点の獲得および能力値の成長は、セッション終了時に毎回処理します。

報酬を受け取ることができるのは、すべてのセッションが終わってからです。また、道中で立ち寄り可能な集落やギルドはなく、途中で買い物はできません。


クリスティーヌ「道中には、危険も多いけれど…」

 

クリスティーヌは、あなた達を見つめる。

 

クリスティーヌ「あなた達なら、できると思うわ。それに、行ってみたいの。村に」

クリスティーヌ「出発は、明日の朝ね」

 

翌朝。部屋の扉をノックする音がする。

 

クリスティーヌ「…入るわよ」

 

クリスティーヌが部屋に入ってくる。旅支度を終えた彼女は、凜とした表情をしている。

 

クリスティーヌ「私は旧ラダック村の村長と知り合いなの。案内してあげる」

 

彼女はそう言って、窓の外を見る。

 

クリスティーヌ「旧ラダック村は15年前、疫病で廃村になった集落よ」

クリスティーヌ「生き残った人は、ハーヴェスなどの都市に移住したわ」

 

2 夜襲

 

山道を進むと、太陽の光が強く、空気はひんやりと澄んでいる。

 

足元には、雪解け水の流れた跡に花畑が広がり、風に揺れている。高山地帯にみられる低木が、地を這うように広がっている。

 

岩陰からは、白い花が咲いている。蝶がふわりと舞い、鳥の鳴き声が遠くから聞こえる。

 

やがて日が傾き始める。クリスティーヌは立ち止まり、提案する。

 

クリスティーヌ「この辺りで野営しない?」

 

○GM向け記載事項

PCは交代で見張りをします。見張りの順番は、相談して決めて下さい。

野営は、最大で18時から翌6時まで行うことができます。

不眠による不利益を防ぐには、連続して3時間の睡眠が必要です。

ただし、種族特性[繁茂する生命]を持つキャラクター(メリア)は、不眠によるペナルティ修正を受けません。

PLが3人の場合、クリスティーヌも見張りに参加します。

なお、クリスティーヌは少なくとも連続して3時間の睡眠が必要です。以下は、シフト例です。

18-21時:PC1、PC2、PC3

21-00時:PC1、PC2、クリスティーヌ

00-03時:PC3、クリスティーヌ

03-06時:PC2、PC3、クリスティーヌ

いずれかの時間帯に、戦闘が発生します。戦闘が発生するタイミングは、ランダムに決定します。

戦闘が発生する場合、見張りのキャラクターは危険感知判定(目標値14)を行います。

なお、クリスティーヌの判定の基準値は7です。

辺りは暗く、種族特性[暗視]を持たないキャラクターは対策しなければ判定に-4のペナルティ修正を受けます。

判定に成功すれば、通常通り戦闘を開始します。

判定に失敗すれば、寝ているキャラクターは戦闘準備から先制判定までの処理に参加できません。

戦闘が発生した時間帯に寝ていたキャラクターは、睡眠による利益を得ることができません。

以下は、夜襲の描写例です。

 

野営地に、焚き火が揺れている。見張り役のあなたは、静かな夜の森を見つめていた。

 

…その時だった。遠くから、羽ばたく音が聞こえてくる。

 

当初、それは鳥だと思った。だが、その音は徐々に大きくなっていく。

 

※クリスティーヌが見張りの場合

クリスティーヌ「みんな、起きて!」

 

あなたは声を上げる。仲間たちが飛び起きる。

 

月明かりの下で、あなた達は敵の姿を捉える。

 

3体の翼を持つ人型の蛮族と、羽根飾りを身に着けたゴブリン。

 

ゴブリンの羽根飾りが月の光を反射して、極彩色に光っている。

 

クリスティーヌ「敵襲よ!」

 

クリスティーヌが聖印を握りしめている。

 

蛮族たちが一斉に襲いかかる。夜の森に、戦いの火蓋が切って落とされる。

 

ゴブリンシャーマン(→「ML」72頁)

知名度13、弱点値16

※ダルクレム信仰

 

フーグルアサルター(→「ML」73頁)×3

知名度12、弱点値15

 

では、戦闘準備をどうぞ。

魔物知識判定(13/16、12/15)をどうぞ。

先制判定(目標値14)をどうぞ。

 

襲ってきた蛮族を倒し、再び眠りにつく。

 

3 噴水

 

東の地平線が赤く染まり始めた頃、テントの外から声が聞こえる。

 

クリスティーヌ「…もう起きているかしら?」

 

返事をすると、クリスティーヌが顔を覗かせる。

 

クリスティーヌ「…これ、昨晩の蛮族が持っていたみたいなんだけど」

 

地図には、×印と、メモ書き(汎用蛮族語)がある。

 

○GM向け記載事項

汎用蛮族語の読文が可能なキャラクターは「宝の泉」と書かれていることが分かります。

 

地図に示された場所は、旧ラダック村への道中で立ち寄ることができることが分かった。

 

クリスティーヌ「せっかくだから、行ってみない?」

 

地図に記された場所へとやってきた。そこには、2本の巨木と、その間に吊り橋がある。

 

渡った先に、崖が見える。また、崖の側面に扉がある。

 

扉に近付けば、鉄製の扉であることが分かる。

 

○GM向け記載事項

扉に対して探索判定(目標値8、非自然環境)を行えば、危険はなく、魔法の鍵(目標値12)で施錠されていることが分かります。

解除判定で解錠を試みる場合は〈アンロックキー〉が必要です。真語魔法【アンロック】や魔動機術【ノッカー・ボム】も、解錠(破壊)を試みることができます。

あるいは、体当たりで押し通ることができるかもしれません。この場合は、腕力判定(目標値16)を行います。体当たりすれば、突破の成否に関わらず「2d+10」点の物理ダメージを受けます。

以下は、解錠または破壊に成功した場合の描写です。

 

扉の先には、噴水が見える。湧き出す水は澄んでいて、水底には宝石が見えている。

 

クリスティーヌ「…とても美しい宝石ね。でも、水の中にあるわ」

 

○GM向け記載事項

薬品学判定(目標値14)に成功すれば、泉の水の効果が分かります。

効果:1日に1度まで、水に手を浸して宝物を取り出せばHPとMPを「2d」点回復する。

宝石の売却価格は2500Gです。

 

旧ラダック村を目指して、旅を再開する。

 

4 雷鳴

 

クリスティーヌ「このまま進めば、夕方には村に着きそうね」

 

木々の中を進んでいくと、前方の開けた場所で異様な気配を感じた。

 

クリスティーヌ「待って」

 

クリスティーヌが手を上げて制止する。

 

クリスティーヌ「何かがいる…」

 

木々の間から、動物のような影が動くのが見える。

 

最初に姿を現したのは、体長50cmほどの小型のリスだった。

 

…その背後から、全身が淡く光る、さらに大きな影が迫っている。

 

クリスティーヌ「あれは…!」

 

鋭い嘴、強靭な脚、そして獰猛な目つき。合図のように、甲高い鳴き声を上げる。

 

身に雷をまとった巨大な鳥が上空から急降下する。

 

クリスティーヌ「来るよ!」

 

リスと巨大な鳥が、一斉に襲いかかってくる。

 

サンダーバード(→「ML」169頁)

知名度10、弱点値16

※コア部位に〈剣のかけら〉を5個追加する


ラタトゥスク(→「ML」169頁)

知名度12、弱点値15


では、戦闘準備をどうぞ。

魔物知識判定(10/16、12/15)をどうぞ。

先制判定(目標値14)をどうぞ。


襲ってきた幻獣を倒すと、旅を再開する。


5 面影


丘を越えると、廃村が見えてくる。


赤い瓦の屋根が夕日に照らされている。だが、人の気配はない。風が吹き抜けるだけだ。


出発から2日目の夕方、旧ラダック村に到着した。クリスティーヌが静かに言う。


クリスティーヌ「ここがラダック村よ。本当に、誰もいないみたいね」


村に入り、誰もいない道を進む。クリスティーヌが足を止めて振り返る。


クリスティーヌ「そうね。今日はここに泊まりましょう」


彼女は懐から鍵を取り出すと、扉を解錠する。錆びているのか、少し時間がかかっている。


クリスティーヌ「かつての村長から、鍵を預かってきたの」

 

クリスティーヌが鍵を押し込むと、扉が開いた。

 

中に入ると、村を捨てる時に慌てて出て行ったのか、少し散らかっている。

 

彼女と一緒に部屋を片付けることになるだろう。

 

○GM向け記載事項

探索判定(目標値12、非自然環境)を行います。

成功:三日月を象った聖印を見つける。

聖印に対して、見識判定(目標値8)に成功すれば、シーンの聖印であると分かります。

 

部屋を片付け終えると、クリスティーヌは家の中にあった写真を持ってくる。赤ん坊と、その両親のように見える。

 

写真には、エルフの男性と、頭を覆う神官服を身にまとった女性の姿が写っている。

 

写真を見つめながら、彼女は続ける。

 

クリスティーヌ「大切なものを見つけたわ。私が預かっておくね。この写真は…」

 

○PL向け記載事項

ここでクイズです。ここまで、クリスティーヌはあることを話していません。では、次に続く台詞は何でしょう?


6 終章

 

○GM向け記載事項

正答は「写っているのはクリスティーヌとその両親だから」という内容です。クリスティーヌの話の続きを言い当てると、返答が変わります。

成功:クリスティーヌ「…えっ、すごい!どうして分かったの?!」

失敗:クリスティーヌ「…そうじゃなくて。この写真に写っているのは私なの」

さらに、成功すると、次の台詞が追加されます。

成功:クリスティーヌ「みんな、私のことをよく分かっているのね」

このとき、マナチャージクリスタル(5点)(→「ET」108頁)を1個獲得します。

サプリメント「エピックトレジャリー」を導入していない場合は、2500G相当のアイテムで代用して下さい。

 

○PL向け記載事項

旧ラダック村が疫病に襲われたのは、クリスティーヌが1歳の時でした。父は行方不明で、村長が村を捨てる決断をした時、母は病に冒されていました。

母はクリスティーヌを村長に託すと、この子をハーヴェスのシーンの神殿の孤児院に預けてほしいと託します。村長は遺言通り、クリスティーヌを神殿に預けました。母の望み通り、クリスティーヌは母と同じシーン神官となり、弱者にも慈悲深い女性となりました。

鍵を持っていたのは彼女の生家だからです。聖印は母の遺品です。


クリスティーヌ「もっと早く来るべきだったと思っていたけど、道中の危険を考えたら気軽に来れる場所じゃなかった。来れたのは、みんなのお陰ね。ありがとう」


○報酬

1400経験点

1成長

〈剣のかけら〉5個


○記載事項

本シナリオは、シナリオ「失われた故郷・前編」の改訂版です。

第3回「失われた故郷・前編」(ソード・ワールド2.5TRPGキャンペーン卓) | TRPG(ソード・ワールド2.5中心)シナリオまとめ


○次回