目次

《バイオレントキャスト》詳細

sw2.0における魔法使い系技能

相性が良い技能

《魔法制御》を習得すべきか

検証:レベル3

検証:レベル7

検証:レベル11

調整のヒント


《バイオレントキャスト》詳細

この記事では、sw2.5で魔法使い系技能を習得しているキャラクターを作成する際に、採用されることが多い宣言特技《バイオレントキャスト》について、戦略上の有効性等を検証します。


《バイオレントキャストⅠ》の詳細は以下の通りです。


前提:なし

使用:魔法使い系技能

適用:1回の魔法行使

リスク:なし

概要:ダメージのみを与える魔法の魔法行使判定+2


冒険者レベル1から習得することができ、リスクのない宣言特技です。


「使用:魔法使い系技能」です。魔法使い系技能を11レベル以上習得したキャラクターが自動習得する常時特技《ルーンマスター》の「1つは『使用:魔法使い系技能』の宣言特技」に含めることができます。


ダメージのみを与える魔法にのみ有効です。この特技を習得すると、ダメージディーラーとして優秀になる可能性が高いです。


冒険者レベル13で《バイオレントキャストⅡ》への置き換えが発生します。このとき、魔法行使判定の達成値は+3です。


《魔力強化Ⅱ》と合わせると、高確率で〈剣のかけら〉が追加された格上のボスの精神抵抗を突破できるようになります。


まず、sw2.0からの環境の変化を考察します。


sw2.0における魔法使い系技能

多くの場合、sw2.5における後衛の役割は以下の2つに分類される可能性が高いです。


① ダメージディーラー

② 回復・支援


個人的な経験から言えば、最近始めた人よりもsw2.0で何度も遊んできた人の方が、②のイメージが強い人が多いです。


これは、以前から疑問に思っていたことでした。sw2.0からsw2.5の変更点等について考察している方のブログを調べたところ、次のような分析がありました。


宣言特技の仕様が変更され、ほとんどが「適用:10秒(1ラウンド)持続」→「適用:1回の●●」

《バイオレントキャスト》が追加され、ソーサラー等の魔法使い系技能が使いやすくなった

 

《インファイト》は、例外的に1ラウンド(10秒間)継続する宣言特技ですがsw2.5の宣言特技のほとんどは「適用:1回の●●(近接・遠隔攻撃、魔法行使等)」です。


この変更は、攻撃回数が増える中~高レベル帯の戦士系技能の火力低下を意味します。


たとえば《両手利き》で3回攻撃が可能なグラップラーは「適用:10秒(1ラウンド)持続」なら、その全ての攻撃が宣言特技によるダメージ上昇の恩恵を受けていたわけです。

※当時のGMの苦悩が容易に想像できます


sw2.0では、PCがレベル11に対して、魔物はレベル16(1.5倍)を目安とすると言っている人もいたようですが、sw2.5では、その必要はないと思います。


もっとも、魔物が魔法を行使しないならsw2.5でもその調整が成立する可能性はありますが、それよりも低いレベルで、魔法を行使する魔物を入れるのが現実的と思います。


グラップラー以外も《ファストアクション》等の効果で、容易に攻撃回数を増やすことができます。


sw2.0の環境では、主軸が戦士系技能のキャラクターがダメージディーラーで魔法使い系技能のキャラクターは回復・支援役に徹することになるでしょう。


しかし、sw2.5に入ると、中~高レベル帯の環境は一変します。


もっとも、sw2.0はファイターが使いやすい環境だったようですが、グラップラーの《鎧貫き》やフェンサーの《必殺攻撃》が仕様変更されたことで、ファイターとの差は小さくなったとする分析があります。

 

sw2.5でも、最も汎用性が高い戦士系技能はファイターであるというのが個人的な見解ですが、あるレベル帯においてグラップラーやフェンサーが使いやすいのは事実であると考えています。

※高レベルのグラップラーは非常に強力です。また、フェンサーはレベル5、レベル11が使いやすい作成レベルと考えています。


「対象:1体」の攻撃なら、魔法使い系技能よりも戦士系技能の方が、高火力になる可能性が高いです。


一方で、中~高レベル帯の魔法使い系技能のダメージディーラーは「対象:1エリア」の攻撃が中心です。


ダメージを合計して考えると、魔法使い系技能の方が圧倒的に有利です。


中~高レベル帯は、1体を攻撃するならグラップラーや人間のフェンサーが有利ですが、範囲火力は魔法一択です。


したがって、同じダメージディーラーでも役割対象の違いから、棲み分けが可能と考えられます。


ダメージを与える魔法は多くが「抵抗:半減」です。これは、近接・遠隔攻撃にない強みです。


さらに《バイオレントキャスト》の追加によって抵抗を突破しやすくなった訳です。


次に、《バイオレントキャスト》と相性が良い技能について考察します。


相性が良い技能

基本的な考え方として、パーティにおける後衛の魔法使いの役割は、以下の2つである可能性が高いという話をしました。


① ダメージディーラー

② 回復・支援


「ダメージのみを与える魔法に効果がある」以上は、当然ながら①のタイプで採用されることになります。


戦士系技能と組み合わせる可能性が高いマギテックを除き、ルールブックに収録されている魔法使い系技能なら、次の順に適性が高いと考えられます。


ダメージディーラー向け↑


・ソーサラー

・フェアリーテイマー

・コンジャラー

・プリースト


回復・支援向け↓


モンストラスロア収録のドルイド技能は、プリーストより高く、フェアリーテイマーより低いです。

※コンジャラーとの比較はレベル帯によります


特に、ソーサラーフェアリーテイマー上手く活用できる可能性が高いです。


ただし、レベル10以下なら、手番中に宣言できる特技の数は一つまでです。それは、他の宣言特技と競合の可能性があることを意味します。


魔法使い系技能においては、習得において優先順位の高い宣言特技があります。《魔法制御》です。


《バイオレントキャスト》《魔法制御》および関連する選択習得の特技について考察します。


《魔法制御》を習得すべきか

《魔法制御》を習得するメリットについて、大まかに解説します。


コンジャラーのような例外を除くとダメージを与える魔法は「対象:1体」のものから習得します。


複数を対象に取るなら《魔法拡大/数》を習得し、宣言しなければなりません。


威力10の【エネルギー・ボルト】の消費MPは5です。つまり、2体なら10、3体なら15です。


MPは有限です。短期決戦を狙えるならともかく、MP切れは死活問題となります。


ソーサラーがレベル6で習得する威力20の【ファイアボール】は「対象:1エリア」で5体までの対象を同時に攻撃できます。


【エネルギーボルト】よりも高い威力にも関わらず、《魔法拡大/数》を宣言して【エネルギー・ボルト】を複数に行使するよりも少ない消費MPで済みます。


ただし、先攻1Rを除くと、そのままでは乱戦エリアの味方を巻き込んでしまいます。


そこで、任意の対象を除くことができる《魔法制御》が活躍します。


《魔法制御》にもデメリットは存在します。


まず、前提が重いです。


《魔法制御》を習得するなら《ターゲッティング》と《魔法収束》を習得しなければなりません。


最速でも、習得できるのはレベル5です。この時、習得する特技が固定化されます。


多くの魔法使い系技能は《ターゲッティング》が実質必修で、実際はプラス2枠といったところです。


そして、機会費用として《バイオレントキャスト》等の他の宣言特技を宣言できなくなります。


レベル10以下なら《バイオレントキャストⅠ》《魔法制御》を両方習得すると、宣言する特技は毎ラウンドどちらか一つしか選べません。


そのため《魔法制御》を習得するルートは《武器習熟A/スタッフ》や《魔力強化》のような常時特技を習得してお茶を濁すことも多いです。


中~高レベル帯のダメージディーラーの魔法使いは、基本的に範囲火力が主な役割です。


卓環境によると思いますが、個人的な経験から言えば《魔法制御》を、最速のレベル5で習得することが多いです。その方が使いやすいためです。

※PL3人以上の公式シナリオでソーサラーやフェアリーテイマーを選ぶなら、高確率で上記の選択をします


次に、レベル帯ごとの抵抗突破率を計算していきたいと思います。


次の章では、筆者が通過したシナリオの魔物を例に、エルフの妖精使いのキャラクターの能力値を参照して《バイオレントキャスト》を宣言したケースと、宣言しなかったケースのそれぞれにおいて、魔物の抵抗を突破する確率を検証したいと思います。


検証:レベル3

エルフの妖精使いのキャラクターは以下の構成です。

 

フェアリーテイマー3

スカウト2

セージ1

 

《ターゲッティング》

《バイオレントキャストⅠ》

 

作成時の知力の2dの出目を9、知力の能力値の成長回数を1回とすると、知力は24です。

※ポイント割り振りで作成(→ET54頁)するなら、無理なく作成できる範囲です

 

このとき、知力ボーナスは4、魔力は7となります。

 

続いて、魔物の編成です。

 

○ボス

・ボルグハイランダー〈剣のかけら:4個〉

 

○取り巻き

・フーグルマンサー

 

精神抵抗力はボルグハイランダー、フーグルマンサーともに5(12)ですが、前者は〈剣のかけら〉で強化されているため、6(13)となります。

 

魔物側の精神抵抗力判定の達成値を固定値で処理するなら、抵抗を突破するのに必要な出目は

 

○ボルグハイランダー

宣言なし:出目7以上(約58.3%)

宣言あり:出目5以上(約83.3%)

 

※魔物側のダイスを振る場合、それぞれ約55.5%、約75.2%

 

○フーグルマンサー

宣言なし:出目6以上(約72.2%)

宣言あり:出目4以上(約91.7%)

 

です。大幅に向上していることが分かると思います。

 

《バイオレントキャストⅠ》は近接・遠隔攻撃に例えるなら命中力を+2するようなものです。

 

これは、練技【キャッツアイ】の倍の効果で、非常に強力です。

 

デメリットは《魔法拡大/数》など他の宣言特技と同時に宣言できない点が挙げられます。

 

次に、レベル7の作成の魔物の例から検証します。

 

検証:レベル7

エルフの妖精使いのキャラクターは以下の構成です。


フェアリーテイマー7

スカウト7

セージ1


《ターゲッティング》

《魔法収束》

《魔法制御》

《バイオレントキャストⅠ》


作成時の知力の2dの出目を9として、知力の能力値の成長回数を4回とすると、知力は27です。

※ポイント割り振りで作成(→ET54頁)するなら、無理なく作成できる範囲です

 

このとき、知力ボーナスは4、魔力は11となります。

※名誉点を消費して〈華美なる宝石飾り〉を専用化すれば〈知性の指輪〉と合わせて魔力12となります


続いて、魔物の編成です。


○ボス

・ボーンナイト〈剣のかけら:9個〉


○取り巻き

・ダークトロール


精神抵抗力はボーンナイト11(18)、ダークトロール10(17)ですが、前者は〈剣のかけら〉で強化されているため、13(20)となります。


魔物側の精神抵抗力判定の達成値を固定値で処理するなら、抵抗を突破するのに必要な出目は


○ボーンナイト

宣言なし:出目10以上(約16.7%)

宣言あり:出目8以上(約41.7%)


※魔物側のダイスを振る場合、それぞれ約24.7%、約44.4%


○ダークトロール

宣言なし:出目7以上(約58.3%)

宣言あり:出目5以上(約83.3%)


です。大幅に向上しますが、対ボスは全般的に厳しいです。


個人的に、レベル7の作成は《武器習熟A/スタッフ》を習得し〈マナスタッフ〉を装備することも多いです。


その最大の理由は《バイオレントキャストⅠ》《魔法制御》が同時に宣言できないためです。


レベル7の枠を《武器習熟A/スタッフ》に変更すると、魔力12となります。

※〈華美なる宝石飾り〉を専用化すると魔力13


このとき、抵抗の突破に必要な出目は、ボスが9、取り巻きが6となります。

※〈華美なる宝石飾り〉を専用化すると、それぞれ出目8と出目5


〈剣のかけら〉による強化は、ボス1体にのみ施されることが多いです。


《魔法制御》アタッカーによる攻撃は、取り巻きには通りやすい一方で、〈剣のかけら〉で強化されているボスには通りづらいです。


※なお、上記はボス(レベル9)だけでなく取り巻き(レベル8)もPCのレベルよりも上となっています。感想を調べると「殺意が高い」と言われているシナリオの例です。


中レベル帯においては、範囲火力による殲滅を後衛のダメージディーラーで、対ボスを近接・遠隔攻撃で、と分けて考えるといいと思います。


次に、レベル11作成における魔物の例を検証します。


検証:レベル11

エルフの妖精使いのキャラクターは以下の構成です。


フェアリーテイマー11

ドルイド10

セージ3


《ターゲッティング》

《魔法収束》

《魔法制御》

《魔力強化Ⅱ》

《魔法拡大/数》

《バイオレントキャストⅠ》


作成時の知力の2dの出目を9と仮定して、知力の能力値の成長回数を9回とすると、知力は32です。

※ポイント割り振りで作成(→ET54頁)するなら、無理なく作成できる範囲です


このとき、知力ボーナスは5、魔力は18となります。

※名誉点を消費して〈華美なる宝石飾り〉を専用化すれば〈叡智の腕輪〉と合わせて知力ボーナス6、魔力19となります


続いて、魔物の編成です。


○ボス

・オニクスバジリスク〈剣のかけら:14個〉


○取り巻き

・オーガバーサーカー


精神抵抗力はオニクスバジリスクが17(24)、オーガバーサーカーが13(20)で、前者は〈剣のかけら〉で強化されているため20(27)となります。


魔物側の精神抵抗力判定の達成値を固定値で処理するなら、抵抗を突破するのに必要な出目は


○オニクスバジリスク

宣言なし:出目10以上(約16.7%)

宣言あり:出目8以上(約41.7%)

 

※魔物側をダイスを振る場合、それぞれ約24.7%、約44.4%

 

○オーガバーサーカー

出目3以上(約97.2%)

 

です。大幅に向上していますが、対ボスはやや厳しいです。

 

《武器習熟A/スタッフ》を習得して〈マナスタッフ〉を装備し、名誉点を支払って〈華美なる宝石飾り〉を専用化すれば、ここから魔力+2となるため、対ボスで出目6なら抵抗を突破できるようになります。


※攻撃性能だけを重視するなら《魔法拡大/数》の習得は重要ではなく《武器習熟A/スタッフ》や《鷹の目》が有力候補です。


オニクスバジリスクは部位数4ですが攻撃障害がなく、討伐はグラップラーなど単体火力の高い戦士系技能が活躍するはずです。


〈剣のかけら〉が入っていない魔物に対する殲滅力は非常に高く、この事例では、PCと同レベルの取り巻き(オーガバーサーカー)に対して、固定値(20)なら魔法行使判定に抵抗されることはありません。


《魔法制御》アタッカーによる攻撃は、取り巻きには通りやすい一方で、〈剣のかけら〉で強化されているボスには通りづらいですが、レベル11以上で《ルーンマスター》を習得すると《バイオレントキャストⅠ》《魔法制御》を同時に宣言できるため、対ボス性能も向上します。


作成例のエルフは、ドルイド技能を10レベル習得しています。【ウィングフライヤーⅡ】など補助動作で味方を支援できる手段が豊富です。ダメージディーラー支援役を同時にこなすことができます。

※なお、セージ3レベルなので非戦闘時の貢献度は今ひとつです


最後に、GM向けの調整のヒントについて記します。


調整のヒント

〈剣のかけら〉に関して、近接・遠隔攻撃および魔法行使の別にみた強化点としては、以下のような特徴を持ちます。


命中・回避力は上昇しないため、近接・遠隔攻撃のダメージディーラーにとっては、HPが上昇する程度

生命・精神抵抗力が上昇する(最大4)ため、魔法を通すなら死活問題


ボス戦では〈剣のかけら〉による強化をボス1体のみに施すことが推奨(→Ⅰ397頁)されています。


ボス戦において近接・遠隔攻撃が通りやすい魔物と、魔法行使が通りやすい魔物を出すことは、戦略の多様化の点において望ましいことです。


中~高レベル帯において、魔法使い系技能のダメージディーラーは、範囲火力が主要な役割となります。


一方で〈剣のかけら〉の入ったボスに対しては、攻撃障害の有無にもよりますが、近接・遠隔攻撃が有利な状況も多いです。


※近接攻撃だけでなく、遠隔攻撃への攻撃障害を持つ魔物が増える超高レベル帯では、対ボス戦も後衛の魔法使いが有利なことが多い印象です


これは、GMをする際に調整のヒントになるでしょう


次回