目次

キャラクター作成を教える際の注意点

メタ認知とは

自分の好みを理解することの重要性

例1:役割重視か楽しさ重視か

例2:安定志向かリスク志向か

例3:戦闘のバランス調整

まとめ


キャラクター作成を教える際の注意点

この記事では、主に筆者の経験からTRPGでGMをしたり、初心者のキャラクター作成を手伝ったりする際に重要なことについて触れたいと思います。


まず「初心者に作成を教える際、気を付けたいこと」について考察してみます。


これは、筆者がPLで参加した際の話です。


筆者が過去に開催していた卓を含め、筆者の周囲ではクローズドでない(毎回メンバーが入れ替わる)形式のキャンペーン卓がよく開催されています。


こうした卓では、中レベル帯以上の作成でシステム初を含む初心者が参加することもよくあります。


その日はレベル5作成で、PL4人のうちシステム初参加者が1人でした。


今思えば、PC4人のうち自分を除く3人がコンジャラー技能を習得しているという訳の分からない卓だったのですが、初参加者がいる以上、まずはシステムの初歩的な説明から入ることになります。

※筆者はエルフのキルヒア神官です。操霊術師に対しては「蘇生、ダメ、絶対」と思っていました。


種族の選定で、初心者の方は「死に場所を求めて戦う冒険者を作りたい」ということで、ナイトメアを選択します。

※その卓ではよくある設定です


技能は、ファイター&コンジャラーを主軸とした構成になりました。続いて、戦闘特技の決定です。


⋯一概にダメと言うつもりはないのですが、GMが教えて最初に作ったのは


《全力攻撃Ⅰ》

《薙ぎ払いⅠ》

《マルチアクション》


といった構成です。経験者ならお気付きかと思いますが、全て宣言特技です。


隣で見ていて流石に口を挟んだのですが、少なくとも一つは常時特技を入れたら?という話です。ちなみに筆者の場合、このレベルの前衛なら宣言特技は1つしか入れません。


GMは「だってこの方が楽しいじゃん~」とのこと。


実際、宣言特技が多い方が楽しいと思う人は割と多いので否定はしないのですが、その初心者の方は「宣言特技が手番に1回なのは、先に説明してほしかった」と言っていました。


この事例を踏まえつつ、次にメタ認知と呼ばれる概念について触れたいと思います。


メタ認知とは

一言でいえば「自分の認知を認知すること」です。


「認知」とは考え方や感情、記憶、判断を指します。


そして、自身の「認知」を第三者の視点から認識することを「メタ認知」と呼びます。


メタ認知能力とは、自分自身の情報(能力や、価値観など)を、客観的に把握する能力と言い換えることができます。


この記事では深く掘り下げることはしませんが、汎用性の高い思考ができるようになるために必要な能力と言われています。


メタ認知が苦手だと「自分が考えていることはみんなも考えていること」と思い込んでしまいがちです。


GMをする際「自分が考えていることはみんなも考えていること」と考えてしまうのは、状況次第ですが基本的には望ましいことではありません


自分の好みを理解することの重要性

「類は友を呼ぶ」という言葉があって、友人や趣味の集まりなどは、似た者同士で集まりやすいという経験則です。


TRPGでいえば、好みが似た者同士集まりやすい可能性があるという話です。


ただ、筆者の経験からいえば、特にキャラクター作成に関しては、あまり当てはまらないというのが正直な感想です。

※もっとも、毎回エルフを作る人なんてそういないと思います


「類は友を呼ぶ」が当てはまりやすい集団に、大学のサークルやクローズドのTRPG卓などが挙げられます。


※大学のサークルでソード・ワールド2.5のキャンペーンを遊んでいるという人から「魔法使いがソーサラーだけで、戦闘中に回復する手段が一切ないので毎回やられる前にやるスタイル」という話を聞いたことがあります。全員が攻撃を好むのもまた、類は友を呼ぶの一例なのかもしれません。


当てはまりにくいのは、コンベンションやオープンで参加者を募集している卓などです。


筆者は定期的に新しく人と関わりたいので、参加するのは後者のタイプです。


「類は友を呼ぶ」の原則が当てはまらい卓ほど、初心者の参加者の望むことをくみ取り、適切なアドバイスをすることは難しくなります。

※初めてGMをするなら、気心知れた仲間内が一番楽です


似た者同士で集まっているならメタ認知はあまり重要ではないのかもしれませんが、様々な人が集まる卓は特に、GMにとって重要な課題となります。


特に、変わった嗜好を持つ人ほど、GMをするならその事実を強く認識すべきです。

※それが許されるなら筆者は毎回エルフを勧めることになります。もちろん神官をするならキルヒア一択です。皆さんもキルヒア様を信仰しませんか?


Xのポストで見かけた例として、冗談で言っているのでしょうが「自分はフェンサーが好きなのでとりあえずフェンサーを勧めます!」と言う人がいました。


自陣メンバーのフェンサーを思い出すと、かなり苦い記憶があるのはありますが、フェンサーほど好き嫌いが分かれる技能はないと考えています。

※理由は後ほど


続いて、具体的にどのような点で人の好みは分かれるのか、について考察します。


例1:役割重視か楽しさ重視か

「どのような構成のキャラクターを作りたいか?」という話になった時、すぐに出てくる人と出てこない人がいます。


初めてソード・ワールド2.5の卓に参加した時、筆者は後者でした。その日考えていたのは「役割を果たせるキャラクターを作りたい」ということでした。


TRPGで古参と思われる方がXでポストしていたのですが、「近年はストーリー重視、エモ重視のシナリオが増えている」という話があります。


そのような要素を求めるのは、最近TRPGを始めた人に多い傾向があるとのことです。


基本的に、ストーリーを重視する人はビルドの楽しさよりも作成したキャラクターが十全に役割を果たせることを期待する傾向があります。


筆者の経験から言えるのは、これはビルドの楽しさを求める層とは真逆の考え方である、ということです。

※筆者の経験に基づく経験則ですが、コンベンション卓は役割重視のPLが多く、身内卓は楽しさ重視のPLが相対的に多い印象です


役割重視か楽しさ重視かは、プレイヤーの好みが明確に分かれる点です。

※筆者の参加する卓は比較的後者が多く、3人パーティで自分以外の2人がレンジャーで泣く泣く1人でスカウトとセージを担当するような状況がたまに発生します。先制判定に失敗して文句を言う人は絶対に許しません


経験上「役割を果たせるキャラクターを作りたい」とは(露骨すぎて)言い出しづらい人が多いので、技能を一通り勧めてみてピンと来るものがない人は、役割重視のプレイヤーである可能性が高いです。


※筆者が初めて参加した卓はPL経験もほぼなしのGMだったので、当然ながらビルドに関する知識は当日は得られませんでした

※最近、筆者は初めてゴブリンスレイヤーTRPGの卓に参加したのですが、GMに色々と尋ねたところ役割重視であることは伝わっていたようで、結論ビルドのような構成に落ち着きました。ビルド自体に楽しさは求めていませんでしたが、十分に役割を果たせて原作の世界観を楽しめたので満足です。


例2:安定志向かリスク志向か

「役割重視か楽しさ重視か」と関連する部分はあるのですが、人によって安定志向リスク志向に分かれるように感じます。


経験上、役割重視のプレイヤーは安定志向が強い傾向があります。

※筆者もこちらのタイプです


逆に、楽しさ重視のプレイヤーは、リスクを許容する傾向があります。


具体的な技能でいえば、ファイターを好むプレイヤーは役割重視で安定志向、フェンサーを好むプレイヤーは楽しさ重視でリスク志向な傾向があります。


その人は経験者ですが、自分が使ったことのない技能については全く知らないような人に、キャンペーン卓でフェンサーを勧めたことがあります。


その時を思い出して言えるのは、フェンサーを勧めるべきではない人に勧めてしまったということです。


多くの人は、利得よりも損失に敏感であると言われています。


ソード・ワールドに当てはめると、ダイス目の上振れよりも下振れに敏感な人が多いということです。


経験から言えば、男性よりも女性の方が、この傾向は強くなります。


一方で、TRPGはダイスを振るゲームであるため、賭け事が好きな層の参加も存在するようです。そのような人は、下振れに敏感ではないかもしれません。


フェンサーは、上振れがあると同時に下振れも大きい技能です。基本的に、下振れに敏感な人にフェンサーを勧めるのはリスクが高いです。


経験からいえば、そのプレイヤーの雰囲気でいえば、現実的な雰囲気のある人や、女性は役割重視で、安定志向である傾向が強いです。


例3:戦闘のバランス調整

経験上、上記の2つの要素とはあまり相関がないのが、戦闘のバランス調整に関する好みです。


ただ、経験者が多い卓でも、初心者(特に、システムが初めての人)がいる卓では、厳しいバランス調整にすべきではないと考えています。


※前衛がフェンサーで出目が悪く、パーティの継戦能力が低いにも関わらず長期戦を強いられる場合などどうしようもないケースはありますが、気絶者が出る前提のバランス調整は基本的に避けるべきです


一度聞いたことがある話では、初参加したsw2.5の卓でロストして以来、しばらくソード・ワールドの卓には参加してこなかったというものです。


厳しいバランス調整を好むのは、PL側ではなくGMの場合もあります。


GMがある程度やりたいことを優先するのはもっともな話かもしれませんが、システム初参加でロストは客観的に言って望ましい話ではありません。


またソード・ワールドを遊びたい」と思ってもらうためにも、初参加者がいる卓では厳しすぎるバランス調整は避けるべきです。


初心者がいない卓であれば、バランス調整はPLの好みによるところです。


経験上、ビルドの楽しさを優先する人ほど、固定値のステータスを軽視する傾向があります。


具体的にいえば、フェンサーの《回避行動Ⅱ》や前衛の《頑強》《超頑強》といった耐久力上昇のための戦闘特技を取らない人が多いです。


一方、役割重視の人は、前衛なら耐久力をある程度は重視するため、レベル7以上の卓においては前衛のPLの好みが分かれると、バランス調整が難しくなることがよくあります。


その場合、役割重視のPCは戦闘がぬるく、楽しさ重視のPCは気絶(寸前)という展開になることがありますが、PC間で戦力差が大きいのは、GMとしては対処のしようがありません。楽しさ重視の人に対しては自己責任でよろしくと一言伝えます。


以上、人によって好みが分かれやすいと思われる3つの要素を挙げましたが、あくまでも例です。


他にも、思い当たる人は多いと思います。


まとめ

・プレイヤーによって求める要素は異なる

・プレイヤーの好みを把握するには、まずGMが自身の好みを把握することが大事

・「また遊びたい」と思ってもらえる卓づくりには、メタ認知と共感力が不可欠


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