追悼ウィーク、1964年のヒット曲、プログレの週を飛ばしまして、今日は番組最終週「日本のアーティストによる英語の曲」から Gandhara です。
講座を書き起こしたものをまとめています。
洋楽で学ぶ英文法
12月27日放送分
Lesson 36 Gandhara
最近のヒット・ソングを中心に、人気の洋楽を1曲取り上げ、英文法の視点から歌詞を読み解いていく短期集中講座「洋楽で学ぶ英文法」。
DJ: 毎回人気の曲を1曲取り上げ、英文法の視点から歌詞を読み解いてきましたこの番組。今回が最終回です。ラストウィークは趣向を変えて、「日本のアーティストによる英語の曲」を取り上げてきました。
番組最終回の今日お届けするのは、Godiego (ゴダイゴ)です。 "Gandhara" 。
一緒に番組を進めるのは、いよいよやってきましたね、ゴダイゴ、タケカワユキヒデさん。
タケカワさん: はい、よろしくお願いします。
DJ: この歌声の持ち主です。
タケカワさん: いやぁ、きちゃいましたね。
DJ: そして文法解説をしてくださるのが、畠山雄二先生です。
先生: はい、よろしくお願いします。
DJ: やはりラストお届けするのは、これを聞かねば終われない。ゴダイゴが1978年リリースしました「ガンダーラ」。タケカワさん、声がまたフレッシュというか。
タケカワさん: 若いよね。
DJ: お若いですね。当時おいくつだったんですか?1978年。
タケカワさん: 録音したときはまだ25ですね。いやあ、今のほうが発音はいいです。
DJ: (笑)
先生: (笑)
タケカワさん: やっぱりちょっと、あれぇ?平気かな?って思うようなところが時々ありますね。いやぁ。
DJ: それでは、今日は他では聞けない貴重な自己分析なども踏まえながら、改めてこの曲のご紹介なんですが、英語の詞が先だったんですよね。
タケカワさん: そうです。
DJ: 書かれたのは、映画、演劇の分野で日米で活躍する演出家、作詞家でいらっしゃいます奈良橋陽子さん。
タケカワさん: 奈良橋さんは、もともとアメリカとかカナダで育った方なので、英語で詞を書いた。
DJ: はい。そこに、タケカワさんがメロディをつけて、で。
タケカワさん: そうです。
DJ: そのメロディの後に日本語訳がようやくついたということですね。
タケカワさん: 有名な作詞家の山上さんに書いていただいたんですけども。ゴダイゴの最初の日本語のシングルなんです。
DJ: ずっと英語でしたもんね。
タケカワさん: 英語のものしかないんです。このガンダーラも英語だったんです。英語の歌も、今聞くととっても素人っぽいけれど、でもそれよりももっと日本語の歌のほうが朴訥に歌っている感覚というのがあります。僕としてはね。たから本当に1回か2回しか歌ってないんですよ、あれ。
DJ: これは貴重ですね。
タケカワさん: 英語のほうはね、何回歌ったかわからないぐらい歌いました。
DJ: そうだったんですね。
さあ、ゴダイゴです。1976年にデビューした5人組バンド。結成当初の目標は、英語で歌い、世界に通用する音楽を作るということ。えー、この番組で、ゴダイゴというのは実は超実力派スーパーバンド、プログレバンドでもあるということも明らかになりました。
タケカワさん: あー、ありがとうございます。
DJ: ただなかなかヒット曲には恵まれなかったんですね。
タケカワさん: ねぇ。
DJ: ねぇ、って(笑)
タケカワさん: 本当にね(笑)
DJ: そんな中、大きな転機になったのがドラマ『西遊記』だったんですね。
タケカワさん: そうです。もう間違いないですね。まずエンディング曲の「ガンダーラ」が、バァーンといって、その後今度はオープニングテーマの「モンキーマジック」がバァーンといって。
DJ: そのガンダーラ。どこかにあるユートピア、ガンダーラを求めて止まない人間の性を切なく歌う歌詞ということで、テキストには英語の詞、その対訳、さらにはオリジナルの日本語の歌詞と、3ヴァージョン載っています。
早速、歌詞を見ていきましょう。
まずは冒頭のこちらです。
A long time ago when men were all babes
遠い昔 人がみな赤ん坊だったころ
いきなり遠い昔から始まりますね。
タケカワさん: いきなり昔から始まるんですよね。
これは三蔵法師のお経を取りに行くっていうことを書いてる歌ですから、もちろん A long time ago で、その後の when men were all babes っていう、この言い方が、わぁ、面白いなぁ、とその時に思いましたけれど、なんかやっぱり雰囲気が聖書っぽかったりなんかするんですってね。
DJ: babe、ちょっと古風ですよね。
タケカワさん: まだ今みたいに文明がとか、機械が発展してなかったころ。みたいな、そういう雰囲気をまず出すために、men were all babes っていう言い方をしているっていう、ですね。
DJ: なんだか古い古典を紐解いていくかのような歌の世界、ここから始まりますね。
タケカワさん: はい。きっとそういうことだったんだと思いますね。
DJ: 畠山先生、今の時代ですと、ジェンダーの視点からすると、特定の性で語るというのはなるべく避ける傾向にありますよね。
先生: そうですね。例えば、salesman というのは、今は salesperson ですよね。あと、chairman というのも、議長ですけれども、chairperson とかね。
タケカワさん: それをこうやって使えた時代だっていうのもありますし、またはそういう使い方をすることで古い時代を表しているっていう二重の意味があるんじゃないかなと思いますね。
DJ: 続いては、10行目、11行目です。
In Gandhara, Gandhara
They say it was in India
ガンダーラに ガンダーラに
インドにあると人は言う
もうかっこいい。
タケカワさん: 日本語のパターンのときにも、これは They say it was in India、そのまま残ったので。
DJ: そうですね。
タケカワさん: まあ、本当に「インドにあると人は言う」ですよね。これもだから物語のように書いてらっしゃるのと、それからやっぱり一番かっこいいのは、Gandhara の前の in なんですよ。「ワン、ツー、イン、ガンダーラ」っていう。普通は、4拍目っていうんですけどね、「いち、にっ、さん、はい、ジャン」っていくのが普通なんですけど、これは3拍目で出るんですよ。この in があるかないかで、かっこいいかかっこわるいかが決まるっていうぐらい大事な in だったんですけども。
意味的に考えてみると、これは次の行につながってるわけじゃないんですよね?つながってると、They say it was in India in Gandhara みたいになっちゃうので、そうではなくて、ユートピアが in Gandhara にあるっていうことの in なんですけれども。
で、それと、その次にある They say it was in India の it は Gandhara を指すんですね。
DJ: インドにガンダーラはあって、そのガンダーラの中にユートピアがある。
タケカワさん: そうですよね。
DJ: 入れ子構造のようになってるわけですね。
変わっては、17行目、18行目のこちらです。
A beautiful land still waits for the few
Who make it to the very end
美しい国がずっと待っている
最後までたどり着ける数少ない人たちを
かっこいいじゃないですか。
タケカワさん: 特にこの very end がかっこいいですよね。
DJ: 普通に to the end ではなくて、間に very が入るというのは、先生、これはどういう意味なんでしょうか?
先生: 普通 very というと very good とか very fast とか、 very の後ろには形容詞とか副詞が普通きますよね。でもここでは end という名詞がきてて、このやっぱ変わった使われ方がかっこよさを演出してると思うんですね。
DJ: まさに最後の最後にっていうことですね。
先生: そうですね。さらにこの18行目なんですけども、もともとこの make it to the end という形がベースになってます。で、この表現なんですけども、2つ意味がありまして、1つが「最後までやり抜く」、もう一つが「最終地点に到着する」と。
ガンダーラにたどり着くまでに、三蔵法師とか猪八戒とか、みんな山あり谷あり、もういろいろ苦労を重ねて行くわけですよね。そこがまさに、この「最後までやり抜く」の意味を表していると思うんですね。
あともう1つは、「最終地点に到着する」と。ユートピアであるガンダーラにたどり着くんですよね。その意味を反映してると思うんですよね。そういった意味では、これはダブルミーニングになってて、まさにこのガンダーラのメッセージがこの最後に凝縮されてると私は思うんですよね。
タケカワさん: なるほど。そういうことだったんですね。って僕が言っちゃまずいかな。
DJ: 今さらですか、タケカワさん?(笑)
「文法コーナー:洋楽から学ぶ英文法の世界」
今日のテーマは「All と each, every」です。
DJ: どれも日本語にすると「みな」とか「すべて」のように訳されますが、どのようなニュアンスの違いがあるんでしょうか。
先生: はい。今日の歌詞からこちらをお聞きください。
A long time ago when men were all babes
DJ: 最後に all babes と出てきましたね。
先生: all babes は、赤ん坊の集合そのものを問題にしていて、個々の赤ん坊は問題にしていません。 all はある意味「森を見て木を見ず」なものと考えていいでしょう。
DJ: なるほど。集合。ひとかたまり、ということでしょうかね。
では続いて、 each のニュアンスを確認しましょう。
Each man desires to reach Gandhara
DJ: each man が出てきましたね。
先生: each man は、1人ひとりに意識が向いてる書き方になっています。その意味では、「木を見て森を見ず」が each のスタンスになりますね。
DJ: では、今度は every について確認しましょう。
Always beyond every bend
DJ: every bend、ここで every が出てきます。
先生: every bend は、いろんなまがりみちを集合として見ながらも、個々のまがりみちに意識が向いてる感じですね。「森をちら見しながら木を見る」というのが every のスタンスです。
DJ: なるほど。 all と each、そして every それぞれニュアンスが違うんですね。
またガンダーラ、さらに2017年、深く味わえそうです。
以上、畠山先生の文法コーナーでした。
ということで、番組最終回の今日は、ゴダイゴ「ガンダーラ」の歌詞を見てきました。やっぱり深かったですね。
タケカワさん: いやぁ、深かったですねぇ。
DJ: たぶん…
タケカワさん: 私も知らないようこともいろいろ…
DJ: (笑)
タケカワさん: たくさん出てきましたね。
DJ: さて、3ヶ月にわたり洋楽の歌詞を一緒に見てきましたが、タケカワさん、いかがでしたか?
タケカワさん: いやぁ、ほんと楽しかったですねぇ。もう今まで聞いたこともない曲もたくさん聞かせていただいて。
DJ: 笑わせてもらいました。ありがとうございました。
タケカワさん: あれぇ?(笑)
DJ: そして、畠山雄二先生。
先生: はい。洋楽の歌詞、わかるとやっぱり洋楽さらに楽しめますよね。英文法わかると、さらにこの英語を楽しめると思うんですよね。だからやっぱりこれからも英文法をしっかり勉強してもらいたいな、と。
タケカワさん: 僕、英文法、もう本当に一番苦手なんですけど、ごめんなさい。
DJ: 洋楽って、絶好のテキストというか、最高のパートナーですよね。これからも学び続けていきましょう。
タケカワさん: はい。
DJ: to the very end!
タケカワさん: あぁ、うまい!
DJ: ゴダイゴ「ガンダーラ」を聴きながらお別れとなります。
Saying good bye with this song,
this is our Godiego, with "Gandhara".
3ヶ月間どうもありがとうございました!
タケカワさん: どうもありがとうございました。
先生: どうもありがとうございました。
ゴダイゴ - ガンダーラ英語版
ゴダイゴ - 銀河鉄道999英語版