(前回の記事)
ビートルズが"原点に戻ろう"というコンセプトのもと、制作がはじまった"ゲット・バック・セッション"。

その音源を元にアルバム制作をビートルズから依頼されたグリン・ジョンズは、莫大なセッション音源から1969年5月28日にようやくアルバム「Get Back」が完成させたものの、ビートルズからリリースの許可が下りず却下されてしまいました。
映画の編集が進行する中、1969年4月11日にシングル「Get Back/Don't Let Me Down」、1969年5月30日には「The Ballad Of John And Yoko/Old Brown Shoe」、1969年9月26日にアルバム「Abbey Road」、そして、1969年10月31日にビートルズ史上初となるアルバムからのシングル・カット作品となった「Something/Come Together」とリリースが続きましたが、年の明けた1970年1月にビートルズは再びグリン・ジョンズにアルバムの編集を依頼。映画と内容がリンクするようにという指示のもとグリン・ジョンズは再びアルバム「Get Back」のセカンド・ヴァージョン編集を行っています。
この時、すでに"ゲット・バック・セッション"から1年が過ぎていました。。
【セッション中ドブロをつま弾くポール。】

アルバム「Get Back」は当初、1969年6月にリリースが予定されたものの、8月に延期の告知がなされた後、1969年9月26日にアルバム「アビィ・ロード」が先にリリース。
次に映画とアルバムを1969年11月にリリースとの告知がなされたものの、結局年明けにずれ込み。。まさに泥沼の状態でした。

更に混乱に輪をかけたのが、1969年5月28日にグリン・ジョンズが完成させたアルバム「Get Back」の未発表曲を含むアセテート盤が、なぜか北アメリカのラジオ局に配布されオンエア。これを元にアルバム「Get Back」のブートレッグがリリースされてしまいました。
こうした中、完成が急がれたアルバム「Get back」(セカンド・ミックス)は、映画の内容と合わせるようにファースト・ミックスから映画に出てこないポールの「Teddy Boy」が外されます。(ポールが自身のソロ・アルバム収録のため、外すように指示したとの話もあり。)
【The Beatles - Get Back(Glyn Johns 1st Mix)】
Side A:
01. One After 909
02. Rocker
03. Save The Last Dance For Me
04. Don't Let Me Down
05. Dig A Pony
06. I've Got A Feeling
07. Get Back
Side B:
01. For You Blue
02. Teddy Boy
03. Two Of Us
04. Maggie Mae
05. Dig It
06. Let It Be
07. The Long And Winding Road
08. Get Back(Reprise)
そして、グリン・ジョンズは、映画のシーンに追加され、急遽、ポール、ジョージ、リンゴの3人によって1970年1月3日にレコーディングされたジョージの「I Me Mine」と、1969年12月12日にリリースされた世界野生動物基金チャリティ・アルバム「No One's Gonna Change The World」に収録されたジョンの「Across The Universe」の別ヴァージョンを含む「Get Back」のセカンド・ミックス版を作りあげています。(ジョンは不在だったもののビートルズとしてポール、ジョージ、リンゴがレコーディングしたのは、1月4日が最後。)
【No One's Gonna Change The World】

【1曲目に収録された「Across The Universe」】

【The Beatles - Get Back(Glyn Johns 2nd Mix)】
Side A:
01. One After 909
(1969年1月30日録音)
02. Rocker
(1969年1月22日録音)
03. Save The Last Dance For Me
(1969年1月22日録音)
04. Don't Let Me Down
(1969年1月22日録音)
05. Dig A Pony
(1969年1月22日録音)
06. I've Got A Feeling
(1969年1月22日録音)
【The Beatles/I've Got A Feeling】
07. Get Back
シングル・リリース・ヴァージョン。
08. Let It Be
(1969年1月31日の録音に1969年4月30日のジョージのリード・ギターをオーバー・ダブ)
A面に収録された7曲は、1969年5月28日にグリン・ジョンズが完成させた
「Get Back」のファースト・ミックスと同じ音源。
但し、ファースト・ミックスではB面の6曲目に収録されていた「Let It Be」がA面の7曲目に追加されています。
Side B:
01. For You Blue
(1969年1月25日録音)
「Get Back」のファースト・ミックス音源とジョージがボーカルを取り直したもののミックス・ヴァージョン。
02. Two Of Us
(1969年1月24日録音)
【The Beatles/Two Of Us】
03. Maggie Mae
(1969年1月24日録音)
04. Dig It
(1969年1月24日録音)
05. The Long And Winding Road
(1969年1月31日録音)
02~05は1969年5月28日にグリン・ジョンズが完成させた「Get Back」
のファースト・ミックスと同じ音源。
06. I Me Mine(1970年1月3日録音)
2nd mixの追加音源。
「アンソロジー3」に収録されたヴァージョンでミックス違い。
【The Beatles/I Me Mine】
07. Across The Universe
2nd mixの追加音源
1969年12月12日にリリースされた世界野生動物基金チャリティ・アルバム「No One's Gonna Change The World」に収録されたヴァージョンをもとにリミックスされたヴァージョン。
【The Beatles/Across the Universe】
08. Get Back(Reprise)
1月28日録音
ファースト・ミックスと同じ音源。
【The Beatles/Get Back (Reprise)】
こうして再びグリン・ジョンズの手により完成したアルバム「Get Back」のセカンド・ミックス。。。恐らくグリン・ジョンズも、時間的な余裕も、精神的にも大幅な変更は出来なかったのかもしれません。。
そして、グリン・ジョンズはビートルズに対し、金銭的な要求よりもアルバムに"プロデューサー"としての自身の名前のクレジットを希望します。
しかしながら、再びビートルズからはアルバムに対し、メンバーの意見が一致せず、再びアルバムはお蔵入りとなるとともに、更にグリン・ジョンズのアルバムに"プロデューサー"としてのクレジット希望に対し、ジョン・レノンが「ビートルズの名前を売名行為に利用しようとした。」と激怒。
グリン・ジョンズは1963年に21歳の若さでローリング・ストーンズと仕事をして以来、ザ・フー、キンクス、トラフィック等のブリティッシュ・ロックの超一流アーティストと仕事をしてきていたものの、ジョン・レノンにはそれも通じませんでした。。。。

この後、1970年1月27日に実施されたジョン・レノンのシングル「インスタント・カーマ」のレコーディングにジョージが参加。

この曲でジョンとジョージが大ファンであったフィル・スペクターをプロデューサーとして迎え、ジョン、ジョージともに初めてのフィル・スペクターと仕事となりましたが、ふたりともその仕事ぶりに共感し、未発表となっていたアルバム「Get Back」の後処理。。プロデューサーとしての仕事を依頼します。
【All Things must Pass レコーディング時のフィル・スペクターとジョージ】

残念ながらグリン・ジョンズは1年以上に渡り"ゲット・バック・セッション"に携わったものの、結局は、プロデューサーとしてのクレジットの願いが叶わないどころか、プロジェクトから強制退場となってしまいました。。。
1970年3月23日からスタートしたフィル・スペクターの仕事の裏で、ポールはフィル・スペクターがプロデュースしているのを知らずに自身のアルバム「McCartney」のレコーディングを同じアビィ・ロード・スタジオで行っていたと言われています。
フィルは1970年4月2日に全ての作業を終了。
様々なスタッフとのトラブルも伝えられていますが、素早い仕事ぶりです。
しかし、当初の「原点に戻る」というオーバーダブ等を一切排除するというコンセプトとは正反対の内容となり、1970年5月8日、アルバム「Let It Be」はリリースされています。

ポール・マッカートニーは、アルバムリリース後に完成したアルバムを聞いたと主張し、「Let It Be」と「The Long And Winding Road」にストリングスとコーラスが付けくわえられていたことに動揺していたと伝えられており、これがもとで、ポールは解散にあたりジョン、ジョージ、リンゴを訴えることとなります。(ジョンとフィルは事前にポールに許可をとったとも言っています。)
またグリン・ジョンズ、ジョージ・マーティンもフィル・スペクターの仕事に対し批判的なコメントを残したと言われています。
映画「Let It Be」は1970年5月13日、ニューヨークでワールド・プレミアが行われた後(メンバーは誰も出席せず)、5月18日にはイギリスのピカデリー・サーカスのロンドン・パビリオンにてマスコミとビートルズと親しい友人を対象としたプレミア公開がなされていますが、これに出席したジョージ・ハリスンは映画の感想を聞かれ「屋上のコンサートとかいいシーンはあるけど、大部分は気が重くなるばかりで観ていられない。あの頃の僕らは最悪の状態だったんだ。それがフィルムに収められてこの先ずっと観られるなんて嫌に決まっている!」とコメントしています。

ジョージのコメントがこの"Get Back~Let It BE"と移り変わり1年以上にも亘ったプロジェクトのすべてを物語っているような気がします。。
そして「Let It Be」リリースから33年後の2003年11月に、ビートルズが"真"の「Let It BE」を。。と「Let It Be...Naked」をオフィシャル・リリースしています。

実際には細かな編集がなされていますが、ポールの意向に近づいた仕上がりとなっており、リリースには、リンゴ、ヨーコも同意し、ジョージも生前に同意をしていたと言われています。
現在も、数多くのブートレッグがリリースされるなど、いまだにビートルズ・マニアの心を鷲掴みにしている"ゲット・バック・セッション"。。。

オフィシャルでの音源リリースと映画「Let It Be」の再編集版が期待されるプロジェクトです。。。





























