キング・クリムゾン「キャット・フード/グルーン」(1970)。。。激怒のメンバー・チェンの中、リ | マジカル・ミステリー・ミュージック・ツアー

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1960年代から1980年代の洋楽・邦楽の雑記帳です。

1969年10月にリリースされたキング・クリムゾンのデビューアルバムクリムゾン・キングの宮殿/In The Court Of The Crimson King」

1969年2月からキング・クリムゾンとしてライヴをスタートしたグループは、アルバム・リリース前より大規模ロック・コンサート等に出演。
特に1969年7月5日にロンドンのハイドパークで行われたローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズの追悼コンサートでは、デビュー前にも関わず大きな衝撃と反響を呼び、ロバート・フリップ、イアン・マクドナルド、マイケル・ジャイルズ、グレッグ・レイク、ピート・シンフィールドというツワモノが織りなす衝撃的な音楽は、新しい時代のロックとして70年代前半のプログレッシヴ・ロックのブームの一端を担ってゆくこととなりました。

【1969年のキング・クリムゾン】
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アルバムのヒットとともに1970年10月29日のウォーミング・アップ・ライヴからスタートした21回に亘る初のアメリカ・ツアーも熱狂的に迎え入れた一方で、メンバーの思いが様々に交差、グレッグ・レイクはライヴの熱狂的な反響から「更なる攻撃的な音楽を」との思いをもち、アメリカ・ツアーで一緒だったザ・ナイスのキース・エマーソンと意気投合し、キング・クリムゾンの脱退を決意、イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズは、刺激的なツアーで精神的な理由からバンドの脱退を決意しています。

こうして、アメリカ・ツアー後に分裂したキング・クリムゾンでしたが、「クリムゾン・キングの宮殿」に続くレコーディングを迫られ、まずはボーカリスト探しを開始、クリムゾンのレコード・レーベルであったEGはすでにデビューしていたエルトン・ジョンをクリムゾンのボーカリストとして迎える契約をしてしまいます。

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しかしながら、これを断固として拒否したロバート・フリップにより、この計画は頓挫、エルトン・ジョンは一度もクリムゾンで歌うことなく、250ポンドを手にしています。

結果として新たなシンガーは見つからず、グレッグ・レイクを説得、セカンド・アルバム「ポセイドンのめざめ」でメインボーカルをとることになりました。(グレッグ・レイクはベースは弾かずボーカルのみで参加。*アルバムでは1曲のみゴードン・ハスケルがボーカル)

そしてロバート・フリップは、グレッグ・レイクとマイケル・ジャイルズとイアン・マクドナルドという重要なリズム・セクションの後釜は探さず、キング・クリムゾンの前身であるジャイルズ、ジャイルズ&フリップ時代から一緒に活躍していたジャイルズ兄弟(マイケル・ジャイルズ(Ds)、ピーター・ジャイルズ(B))に連絡。ふたりにレコーディングに参加するよう依頼をしています。

ジャイルズ、ジャイルズ&フリップ時代
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こうして何とかレコーディングを迎えることで出来たクリムゾンは、最初に、全米ツアー中にイアン・マクドナルドとピート・シンフィールドが大部分を書き上げ、フリップがコーラス部分とコード変更を加え、シングルとなった「キャット・フード / Cat Food」をレコーディング。
メンバーの他、前年知り合ったピアニスト、キース・ティペットをゲストに迎えています。

更にシングルのB面にはロバート・フリップが書き上げた「グルーン / Groon」というインストゥルメンタルが用意され、ロバート・フリップ、マイケル・ジャイルズ、ピーター・ジャイルズという"ジャイルズ、ジャイルズ&フリップ"のメンバーのみでレコーディングされた唯一のキング・クリムゾン公式ナンバーとなりました。

こうして1970年3月13日、シングル「キャット・フード/グルーン」がリリースされています。

【シングル「キャット・フード/グルーン」】
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【King Crimson - Cat Food 】

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【King Crimson - Groon】


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シングル・リリース直後の1970年3月15日には、キース・ティペットを含む、このレコーディング・メンバーでイギリスの人気音楽番組「Top Of The Pops」に出演しています。

Top Of The Pops出演メンバー
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【King Crimson - Top Of The Pops - Cat Food】

シングル「キャット・フード」は「Top Of The Pops」出演にも関わらず残念ながらヒットすることはありませんでした。

レコーディングに参加したピーター・ジャイルズは、キース・ティペットのアバンギャルドなピアノが商業的に成功する要素をなくしていると感じ、「ピアノがなかったらなんとかなっていたかもしれない。」と語っています。

こののちキング・クリムゾンに参加し、ビル・ブラッフォードとともにキング・クリムゾンの黄金期を支えたジョン・ウェットンは、「キャット・フード」と「ケイデンスとカスケイド」がお気に入りで、1973年のキング・クリムゾンのツアーでは、重量級の「キャット・フード」を聞かせてくれています。

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【King Crimson - Cat Food (1973) 】

また、2002年にイアン・マクドナルドが中心となり結成され、マイケル・ジャイルズ、ピーター・ジャイルズが参加したバンド"21stセンチュリー・スキッツォイド・バンド / 21st Century Schizoid Band"で、初めてイアン・マクドナルドが参加した形で「キャット・フード」はリメイクされ、ライヴでも演奏されています。

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【21st Century Schizoid Band - Cat Food】

なお、現在、期間限定で、キング・クリムゾンのオフィシャルWebサイト「DGM Live 」(http://www.dgmlive.com/)ではフリーDL音源(http://www.dgmlive.com/archive.htm?artist=3&show=1954)として、1970年2月にジャイルズ、ジャイルズ&フリップの3人でレコーディングされた「キャット・フード」のテイク4がアップされていますので、興味がある方はお早めにDLください♪

混乱の時期にレコーディングされた「キャット・フード」。
イアン・マクドナルドがオリジナル・レコーディングに参加していれば、また違ったアレンジになっていたかも知れません。。